臓器ぞうき提供ていきょう 家族かぞくの葛藤かっとう 移植いしょく待まつ娘むすめはドナーになった

娘むすめの優希ゆうき（ゆうき）ちゃんは当時とうじ4歳さい。体からだを動うごかすのが大好だいすきで、妹いもうとの面倒めんどうをよく見みる優やさしい子こだったという優希ゆうきちゃんに突然とつぜん、異変いへんが起おきました。

だるそうにしておう吐おうとを繰り返くりかえし、かぜのような症状しょうじょうも。そして顔かおがむくんでいきました。

「むくみがひどくて、顔かおが本当ほんとうにパンパンになった。ちょっとただごとじゃないなと感かんじました」

告つげられた病名びょうめいは「拡張かくちょう型がた心筋しんきん症しょう」。血液けつえきを送り出おくりだす心臓しんぞうの力ちからが低下ていかする難病なんびょうで、すぐに入院にゅういんし、心臓しんぞうの負担ふたんを減へらす薬くすりの治療ちりょうを始はじめました。

「病名びょうめいを聞きいても全まったく知しらない病気びょうきだったので、ピンとこなかった。大変たいへんな病気びょうきなんだなというくらいな感かんじでした」

希まれ佳けいさん

「それしか生いきる道みちはない。どうやったら助たすかるかを考かんがえたときに、他人たにん様さまの臓器ぞうきを頂いただかないと命いのちをつなげられないということになるならば、その方法ほうほうしかないのかと」

「初はじめてのカメラ撮影さつえい。きょうはいろいろシビアで長ながい1日にちでした。だからこそ初はつカメラで撮とりました」

大輔だいすけさん

「結構けっこう当時とうじは、本当ほんとう毎日まいにちくらい泣ないてたんですけれど、自分じぶんが泣ないてても娘むすめの写真しゃしんを撮とるしかないなと思おもいました。瞬間しゅんかんをもう切り取きりとっていくしかないと思おもいました」

「補助ほじょ人工じんこう心臓しんぞうの挿入そうにゅう部ぶの出血しゅっけつを止とめる手術しゅじゅつ、胸むねを開ひらくのはこれで3回かい目め。自分じぶんの子こながら本当ほんとうに頑張がんばっている」。

「途中とちゅう、目めを覚さましてくれた。『治なおったら焼き肉やきにくいくよ』と声こえをかけると『うん』とうなづいてくれた」

家族かぞくは懸命けんめいに生いきようとしていると感かんじていました。

大輔だいすけさん

「暗闇くらやみの中なか、綱渡つなわたりで何なにか光ひかりが差さすかわからない状態じょうたいを目指めざして、渡わたるような感かんじがありました。僕ぼくらは臓器ぞうきが喉のどから手てが出でるぐらいにほしかったんですよね」

「12月つき27日にち。（海外かいがいの）受け入うけいれ先さきより正式せいしきに受け入うけいれることが決きまる。まずは一いち歩ほ前進ぜんしんした。もう1か月かげつも（優希ゆうきちゃんの）声こえを聞きいてないから声こえが聞ききたい」

「先生せんせいからは脳幹のうかんの圧迫あっぱくもあり脳のう自体じたいはもうほとんど機能きのうしていない。ここからは良よくする治療ちりょうはできないというお話おはなしだった。とめどなく涙なみだがあふれた。たくさんの思い出おもいでが、楽たのしかった思い出おもいでが後押あとおしするように泣ないた。こんなに泣ないたことはないくらい泣ないた」

懸命けんめいに生いきようとした娘むすめを救すくいたいと願ねがってきた自分じぶんたちに何なにができるのか。娘むすめのことを考かんがえ続つづけてきた大輔だいすけさんと希まれ佳けいさんは重おもい決断けつだんを下くだします。

優希ゆうきちゃんの臓器ぞうきを移植いしょくを待まつ人ひとたちに提供ていきょうすることを決きめたのです。

「少すこし落ち着おちついてから先生せんせいに優希ゆうきの臓器ぞうきを優希ゆうきのように臓器ぞうきを待まっている子こどもたちのために使つかってもらえないかとお願おねがいした」

希まれ佳けいさん

「臓器ぞうきがほしいということばかり最初さいしょは思おもっていたんですが、命いのちについてしっかりと考かんがえた時間じかんがあったから、うちの子こがそうなったときにすぐに提供ていきょうしないとという考かんがえがすっと浮うかびました」

治療ちりょう中ちゅうはだっこができませんでしたが、抱だきしめました。

「家族かぞくはあたたかい。家族かぞくはこの世このよで一番いちばん尊とうといもの。人ひとは当たり前あたりまえの毎日まいにちにいつも分わかったふりをして過すごしてしまう。優希ゆうきは沢山たくさんのことをお父おとうさんに教おしえてくれた」

白木しらきさんの元もとには、臓器ぞうき提供ていきょうを受うけた家族かぞくから元気げんきに過すごしているという知しらせが届とどけられています。

大輔だいすけさん

「子こどもの死しは悲かなしくて乗り越のりこえがたいものですけど、臓器ぞうき提供ていきょうを選択せんたくすることは、その周まわりの家族かぞくの方ほうにも光ひかりを灯ともすことだなと気きづかせてくれた」

希まれ佳けいさん

「亡なくなる側がわも（臓器ぞうきを）いただく側がわも、もう平等びょうどうというか同おなじ人ひとでお互おたがい様さまなんだよってことを教おしえてくれたのかなと。命いのちの大切たいせつさ、相手あいてへの思おもいやりの心こころ、自分じぶんも相手あいても同おなじ命いのちの重おもさだという、人ひととして一番いちばん大切たいせつなことを教おしえてくれたと思おもいます」

（社会しゃかい番組ばんぐみ部ぶ・北條ほうじょう泰成やすなり、科学かがく文化ぶんか部ぶ・山下やました由起子ゆきこ、水野みずの雄太ゆうた）