Japanese News: 18歳から成人 “犯罪者のターゲットに” 消費トラブルに注意を

来月らいげつから成人せいじん年齢ねんれいが18歳さいに引き下ひきさげられ、さまざまな契約けいやくが親おやの同意どういなく結むすべるようになりますが、今年度こんねんど、全国ぜんこくの消費しょうひ生活せいかつセンターなどに寄よせられた、もうけ話ばなしなどを持もちかけるマルチ商法しょうほうに関にかんする相談そうだんの半数はんすう以上いじょうが10代だい・20代だいの若者わかものからで、専門せんもん家かは「コロナ禍かでアルバイトも減へる中なか、“新しん成人せいじん”が消費しょうひトラブルに巻き込まきこまれるリスクは高たかまっている」として注意ちゅういを呼よびかけています。

国民こくみん生活せいかつセンターによりますと、具体ぐたい的てきな商品しょうひんではなく、もうけ話ばなしなどを持もちかける「モノなしマルチ商法しょうほう」に関にかんする相談そうだんは、今年度こんねんど、先月せんげつまでに4000件けん近ちかくに上のぼっていて、このうち半数はんすうを超こえる2200件けん余あまりが10代だい・20代だいの若者わかものからでした。

また「元金がんきんが数すう倍ばいになる」などと投資とうしを募つのる商品しょうひんに関にかんする相談そうだんも4000件けんほど寄よせられていますが、10代だい・20代だいからが600件けん余あまりに上のぼっています。

いずれも、5年ねん前まえに比くらべると若者わかものからの相談そうだんが増ふえていて、友人ゆうじんやSNSで知り合しりあった人ひとに勧すすめられ契約けいやくを結むすんでしまうケースも多おおいということです。

来月らいげつに迫せまった成人せいじん年齢ねんれいの引き下ひきさげで、18歳さいから親おやの同意どういがなくてもクレジットカードなどの契約けいやくが結むすべるようになる一方いっぽう、本人ほんにんや保護ほご者しゃなどが後あとで契約けいやくを取り消とりけせる「未成年みせいねん者しゃ取消とりけし権けん」は使つかえなくなります。

専門せんもん家かは「コロナ禍かでアルバイトも減へり、もうけ話ばなしに魅力みりょくを感かんじる“新しん成人せいじん”が消費しょうひトラブルに巻き込まきこまれるリスクは高たかまっている」として、安易あんいに契約けいやくを結むすばないよう注意ちゅういを呼よびかけています。

19歳さいの時ときに高額こうがくな契約けいやくを結むすんだ男性だんせいは

19歳さいの時ときに高額こうがくな契約けいやくを結むすんでしまい、その後そのご「未成年みせいねん者しゃ取消とりけし権けん」を使つかって解約かいやくした経験けいけんがある大学生だいがくせいがNHKの取材しゅざいに応おうじました。

この男性だんせいは、19歳さいだったおととし、ツイッターで知り合しりあった別べつの大学生だいがくせいから起業きぎょうスクールへの入会にゅうかいを勧すすめられました。

新型しんがたコロナの感染かんせん拡大かくだいに伴ともなう緊急きんきゅう事態じたい宣言せんげんの影響えいきょうで居酒屋いざかやのアルバイトがなくなり経済けいざい的てきに苦くるしかったことや、具体ぐたい的てきなビジネスの手法しゅほうが学まなべると聞きいたことから、男性だんせいは誘さそいに乗のりおよそ40万まん円えんを月つき2万まん円えん余あまりの月賦げっぷ払はらいで支払しはらう契約けいやくを結むすび入会にゅうかいしました。

しかし、講義こうぎが始はじまってみると、その内容ないようは契約けいやく前まえの説明せつめいとは大おおきく異ことなっていたということです。

男性だんせいは講義こうぎの内容ないようをノートに記録きろくしていましたが、「スクールの主宰しゅさい者しゃを信しんじれば夢ゆめがかなう」とか「疑うたがう心こころは排除はいじょしろ」といった説明せつめいが多おおく、主宰しゅさい者しゃの尊敬そんけいできるところを10個こ書かかせるなど大半たいはんが精神せいしん論ろんだったということです。

また、スクールに新あらたな会員かいいんを勧誘かんゆうするよう求もとめられ、成功せいこうした場合ばあい、1人にんにつき数すう十じゅう％のマージンを得えられると言いわれたということです。

男性だんせいは「そもそも自分じぶんでコンテンツを売うってそれをビジネスにする方法ほうほうを学まなべるという話はなしだったのに、なぜ、スクールの紹介しょうかいをさせられるんだろうと、次第しだいに怪あやしむようになった」と言いいます。

いわゆるマルチ商法しょうほうではないかと疑うたがうようになった男性だんせいは「未成年みせいねん者しゃ取消とりけし権けん」を使つかって解約かいやくし、支払しはらった分ぶんを全額ぜんがく取り戻とりもどしました。

男性だんせいは「当初とうしょ、業者ぎょうしゃは『契約けいやくは取り消とりけせない』と主張しゅちょうしていましたが、『消費しょうひ者しゃセンターに相談そうだんする』と伝つたえると、態度たいどが変かわり返金へんきんに応おうじました。無意味むいみな“情報じょうほう商しょう材ざい”に毎月まいつき2万まん円えん余あまりを払はらい続つづけるのは精神せいしん的てきに苦くるしかった。もし返金へんきんされなかったら後悔こうかいだけが残のこって新あたらしい挑戦ちょうせんができなくなったと思おもう」と話はなしていました。

「大人おとなより若者わかもののほうがだましやすい」

成人せいじん年齢ねんれいの引き下ひきさげを、詐欺さぎ事件じけんに関かかわったことのある人物じんぶつはどう見みているのか。

NHKの取材しゅざいに応おうじた、かつて詐欺さぎ事件じけんで摘発てきはつされ、悪徳あくとく商法しょうほうに関かかわったこともある元もと暴力団ぼうりょくだん員いんは「ひと言ひとことで言いえば、大人おとなより若者わかもののほうがだましやすい。若者わかものは勢いきおいがあるだけで、『それはそうじゃないよ、こうだよ』と、順序じゅんじょ立たてて説明せつめいしていくと落おちやすい」と明あかしました。

そのうえで「人間にんげんは欲望よくぼうが膨ふくらんでくると心こころに隙ひまが生うまれる。若わかさにあふれた一方いっぽう、金きんもなく知識ちしきもない若者わかものほど、欲望よくぼうが飽和ほうわ状態じょうたいになりやすいので、犯罪はんざい者しゃはそこを突ついてくる。20歳さいと18歳さいでは、社会しゃかいでの経験けいけん値ちも金銭きんせん的てきな環境かんきょうも全まったく異ことなる。さまざまな犯罪はんざい者しゃがその世代せだいに目めをつけてくると思おもう」と話はなしました。

対応たいおうに追おわれる学校がっこう現場げんば

成人せいじん年齢ねんれいが引き下ひきさげられ親おやの承諾しょうだくを得えずに結むすべる契約けいやくが増ふえるのを前まえに、学校がっこう現場げんばも対応たいおうに追おわれています。

学習がくしゅう指導しどう要領ようりょうの改訂かいていで、来年度らいねんど、高校こうこうの家庭かてい科かで、株式かぶしき投資とうしや投資とうし信託しんたくなど基本きほん的てきな金融きんゆう商品しょうひんの特徴とくちょうを教おしえる授業じゅぎょうが始はじまります。

東京とうきょうの都立とりつ桜さくら修おさむ館かん中等ちゅうとう教育きょういく学校がっこうではこの「金融きんゆう教育きょういく」の本格ほんかく化かを前まえに、家庭かてい科かの授業じゅぎょうの中なかで資産しさん形成けいせいの必要ひつよう性せいなどを教おしえています。

先月せんげつの授業じゅぎょうでは、来月らいげつ以降いこう、18歳さいになる高校生こうこうせいを前まえに、日本にっぽんでは賃金ちんぎんが伸び悩のびなやんでいることや「老後ろうごにおよそ2000万まん円えんが必要ひつようになる」とした金融きんゆう庁ちょうの審議しんぎ会かいの報告ほうこく書しょが注目ちゅうもくを集あつめたことが紹介しょうかいされ、生徒せいと一いち人にん一いち人にんが人生じんせい設計せっけいのシートを作つくって、資産しさん形成けいせいのための計画けいかくを考かんがえていました。

生徒せいとの1人にんは「投資とうしに興味きょうみは無なかったですが、『老後ろうご2000万まん円えん問題もんだい』があると聞きいて、資産しさん運用うんようを考かんがえていくことは必要ひつようだと思おもいました。ただ、金融きんゆうの知識ちしきがたくさんある訳わけではないので、もう少もうすこし先さきの将来しょうらいの話はなしというイメージもあります」と話はなしていました。

また、別べつの生徒せいとは「将来しょうらいに備そなえて投資とうしをしたいと思おもっていますが、大学生だいがくせいになったら悪質あくしつ商法しょうほうの勧誘かんゆうが増ふえる危険きけん性せいがあると聞きいて驚おどろいています。友達ともだちから『だまされやすい』とよく言いわれるので、人一倍ひといちばい、気きをつけないといけない」と話はなしていました。

学校がっこう現場げんばでの「金融きんゆう教育きょういく」の取り組とりくみ。

しかし、教員きょういんの間まからは、教おしえる側がわの知識ちしき不足ふそくや授業じゅぎょう時間じかんが限かぎられていることを懸念けねんする声こえも出でています。

この学校がっこうでは家庭かてい科かだけでなく公民こうみんなどの授業じゅぎょうも活用かつようしようとしていますが、充あてられる時間じかんは年間ねんかん2時間じかん程度ていどにとどまる見通みとおしであるうえ、手口てぐちが次々つぎつぎに変化へんかする悪質あくしつ商法しょうほうに対応たいおうするのは容易よういではありません。

家庭かてい科かの原はら直子なおこ主任しゅにん教諭きょうゆは「投資とうしについて授業じゅぎょうですべてを伝つたえるのは無理むりです。悪質あくしつ商法しょうほうに関にかんして言いえば、『18歳さいの成人せいじんをねらうこういう手口てぐちがあるよ』と伝つたえられるし、消費しょうひ者しゃセンターなどの教材きょうざいも使つかいますが、金融きんゆう商品しょうひんや手口てぐちは日々ひび変化へんかしていくので、最新さいしんの情報じょうほうに追おいつくのは難むずかしい。大学生だいがくせいになって投資とうしの勧誘かんゆうを受うけた際さいに、『あのとき授業じゅぎょうで聞きいた』と思い出おもいだしてもらえるような授業じゅぎょうを進すすめていきたい」と話はなしていました。

コロナ禍かで孤立こりつ化かする若者わかものが巻き込まきこまれるリスク高たかい

若者わかものの行動こうどうや情報じょうほうリテラシーに詳くわしい成蹊大学せいけいだいがくの高橋たかはし暁子あきこ客員きゃくいん教授きょうじゅは知識ちしき不足ふそくだけでなく、コロナ禍かでアルバイトが減へり、孤立こりつ化かも進すすむ中なか、若者わかものがトラブルに巻き込まきこまれるリスクは高たかいとみています。

高橋たかはし客員きゃくいん教授きょうじゅは「20歳さいになった学生がくせいでさえ悪徳あくとく商法しょうほうや投資とうし詐欺さぎに引っ掛ひっかかっているのが現状げんじょうで、金融きんゆう的てきな経験けいけんや社会しゃかい経験けいけん、知識ちしきが全まったくないなかでいきなり成人せいじんとして扱あつかわれてしまう以上いじょう、新しん成人せいじんが金融きんゆう被害ひがいに遭あうリスクは高たかいと思おもう」と指摘してきしています。

そのうえで「大学生だいがくせいはコロナ禍かで学校がっこうに来こられず、サークル活動かつどうもほぼない孤独こどくな環境かんきょうにある。もうけ話ばなしはSNSで誘さそわれるケースが多おおいが、若者わかものはSNSを通つうじたつながりを非常ひじょうに重要じゅうようだと考かんがえていてターゲットになりやすい。『数すう％以上いじょうの金利きんりを約束やくそくする』などとうたっている商品しょうひんはリスクも大おおきく詐欺さぎだったりすることが多おおく、そのような基本きほんから教おしえていかないといけない。若者わかものに情報じょうほうを与あたえるとともに、大人おとなが若者わかものから相談そうだんしてもらえるような環境かんきょうづくりが必要ひつようだ」と話はなしています。