日本新闻: 【現地は今】食料も水も底を…マリウポリで何が

「携帯けいたいがつながる場所ばしょが少すくなく、行いくのは危険きけんと隣り合となりあわせ」

ウクライナ南東なんとう部ぶマリウポリに住すむ人ひとが家族かぞくに伝つたえた街まちの状況じょうきょうです。

マリウポリでは、ウクライナ側がわによりますと、2000人にんを超こえる市民しみんが死亡しぼうしました。

通信つうしん網もうも被害ひがいを受うけ、情報じょうほうが限かぎられる「最大さいだいの激戦げきせん地ち」の現状げんじょうについて、住民じゅうみんやその家族かぞくの証言しょうげんから読み解よみときます。

ロシア軍ぐんはなぜマリウポリに？

アメリカのシンクタンクの分析ぶんせきなどでは、ウクライナに侵攻しんこうしたロシア軍ぐんは都市としをじわじわと包囲ほういするような動うごきをしています。

首都しゅとキエフ、第だい2の都市としハリコフと並ならび、激はげしい攻防こうぼうが繰り返くりかえされているのが、マリウポリです。

黒海こっかい北部ほくぶにある内海うちうみ・アゾフ海かいに面めんした人口じんこう40万まん人にん余あまりの都市としは、東部とうぶの親しんロシア派はの支配しはい地域ちいきと、ロシアが一方いっぽう的てきに併合へいごうしたクリミアを結むすぶ要衝ようしょうです。

激戦げきせんが続つづく理由りゆうについて、ウクライナのクレバ外相がいしょうは

「ロシア軍ぐんはクリミア半島くりみあはんとうと直接ちょくせつつながる陸路りくろを確保かくほするため、多大ただいな犠牲ぎせいを払はらってでもマリウポリを占領せんりょうしようとしている。しかし、そうなればウクライナはアゾフ海うみから遮断しゃだんされるため、激はげしく抵抗ていこうしている」と説明せつめいしています。

「無む差別さべつ攻撃こうげき」市民しみんの犠牲ぎせいは？

ゼレンスキー大統領だいとうりょうは8日にちに「過去かこ数すう十じゅう年間ねんかんで初はじめて、おそらくナチス・ドイツの侵攻しんこう以来いらい初はじめて、マリウポリで1人にんの子こどもが脱水だっすい症状しょうじょうで亡なくなった。パートナーの国々くにぐによ、どうか聞きいてほしい。2022年ねんに子こどもが脱水だっすい症状しょうじょうで亡なくなったのだ」と訴うったえ、ロシア軍ぐんによって都市としが封鎖ふうさされ、食料しょくりょうや水みずの配送はいそうが意図いと的てきに妨害ぼうがいされていると非難ひなんしました。

その後そのごも、ロシア軍ぐんの進撃しんげきは続つづきます。

「ロシア軍ぐんの無む差別さべつ攻撃こうげきで美うつくしい街まちはほぼ破壊はかいされ、地元じもと当局とうきょくによると1582人にんの住民じゅうみんが殺害さつがいされた。第だい2次じ世界せかい大戦たいせん以来いらい初はじめて人々ひとびとが集団しゅうだん墓地ぼちに埋葬まいそうされている」

ーウクライナのキスリツァ国連こくれん大使たいしが11日にち、国連こくれん安全あんぜん保障ほしょう理事りじ会かいの緊急きんきゅう会合かいごうで述のべた現地げんちの状況じょうきょうです。

13日にちにはウクライナ議会ぎかいが、ロシア軍ぐんによる攻撃こうげきでこれまでに2187人にんの市民しみんが死亡しぼうしたと明あきらかにし「人道的じんどうてきな大だい惨事さんじが起おきている。およそ100発はつの爆弾ばくだんが投下とうかされ、病院びょういんなどのインフラが破壊はかいされた」と訴うったえました。

さらに14日にちにはEU＝ヨーロッパ連合れんごうのボレル上級じょうきゅう代表だいひょうが、これまでに2400人にん以上いじょうの市民しみんが犠牲ぎせいになったと述のべました。

「砲撃ほうげきで地下ちかに閉じ込とじこめられ、2人にんの子こどもが死しにました。誰だれも彼かれらを救すくうことができませんでした」

そう話はなす女性じょせいのような被害ひがい者しゃが、日に日ひにひに増ふえているのです。

ライフラインや食料しょくりょうは？生活せいかつできる？

通信つうしんがつながりにくく、人々ひとびとの暮くらしについての情報じょうほうは極きわめて限かぎられています。

現地げんちで支援しえん活動かつどうを続つづけているICRC＝赤十字せきじゅうじ国際こくさい委員いいん会かいは12日にち、マリウポリにいるスタッフからの報告ほうこくとして、

▽電気でんきやガス、水道すいどうが寸断すんだんされ、食料しょくりょうや飲料いんりょう水すいが底そこをつき始はじめていること、

▽スタッフは食料しょくりょうなどを持ち寄もちよって事務所じむしょで避難ひなん生活せいかつを続つづけていることを、

ツイッターに投稿とうこうしました。

スタッフは「人々ひとびとは寒さむさで病気びょうきになっています。本当ほんとうに寒さむいです。発電はつでん機き用ようの燃料ねんりょうが残のこっているため、1日にちに3、4時間じかんは電気でんきを使つかうことができますが、水みずがなくなったら川かわの水みずを沸わかして使つかうつもりです。ただ、ほかの人ひとたちと比くらべれば、比較的ひかくてき恵めぐまれていると思おもいます」と話はなし、多おおくの人ひとがさらに過酷かこくな状況じょうきょうで避難ひなんを続つづけていると説明せつめいしました。

ロシア軍ぐんの侵攻しんこうが始はじまった2月つき24日にちにマリウポリを離はなれた女性じょせいは、後ごから避難ひなんする予定よていだった60代だいの両親りょうしんと、まだ会あえていません。

「人道じんどう回廊かいろう」と呼よばれる避難ひなんルートの安全あんぜんが確保かくほされていないため、自宅じたくから離はなれられなくなったというのです。

通信つうしん状態じょうたいが悪わるく、携帯けいたいがつながる場所ばしょは限かぎられていますが、ロシア軍ぐんの砲撃ほうげきなどに巻き込まきこまれるおそれがあります。

女性じょせいは両親りょうしんからの連絡れんらくを待まつしかありません。

これまでに、電気でんきや水道すいどうなど生活せいかつインフラが被害ひがいを受うけて使つかえない状態じょうたいだと聞きかされ「両親りょうしんは、店みせが閉しまっているため食料しょくりょうがほとんど尽つき、雨あめや雪ゆきを飲のみ水すいにしています。救援きゅうえん物資ぶっしはロシア軍ぐんに遮さえぎられて届とどかず、冷え込ひえこみも厳きびしくなっています」と窮状きゅうじょうを訴うったえていました。

マリウポリ出身しゅっしんのダリア・シャスツンさん（22）は、ボランティアでアフリカに滞在たいざいしていたときにロシアの軍事ぐんじ侵攻しんこうが始はじまったため、故郷こきょうに戻もどることができなくなりました。

現在げんざいはバルト3国こくのラトビアで避難ひなん生活せいかつを送おくっています。

マリウポリに残のこる両親りょうしんからは、電気でんきや水道すいどう、ガスが次々つぎつぎと止とまるなか、備蓄びちくしたわずかな食料しょくりょうや井戸いどの水みずなどを頼たよって生活せいかつしていると聞きいています。

シャスツンさんは「避難ひなんルートは合意ごういされているはずですが、守まもられていません。ロシア軍ぐんは『撃うたない』と言いっていますが、実際じっさいには撃うってくるのです」とロシアを非難ひなんしました。

そして「母親ははおやには『きっと会あえるから』と言いわれますが、すぐに会あえるかどうかわかりません。故郷こきょうに帰かえりたいです」と話はなしていました。

医療いりょうの現場げんばは？

マリウポリの地元じもと当局とうきょくは、9日にちに産科さんかなどが入はいる病院びょういんがロシア軍ぐんの攻撃こうげきを受うけ、女の子おんなのこ1人にんを含ふくむ3人にんが死亡しぼう、医師いしなど17人にんがけがをしたと発表はっぴょうしました。

AP通信つうしんによりますと、病院びょういんから救出きゅうしゅつされた妊婦にんぷのうち1人にんが、その後そのご死亡しぼうしたということです。

＜治療ちりょうにあたった医師いし＞

「当時とうじ、女性じょせい3人にんが病院びょういんに運び込はこびこまれ、このうち1人にんは骨盤こつばんが押おしつぶされるなどしてショック状態じょうたいにあり、危険きけんな状態じょうたいだった。帝王ていおう切開せっかいの手術しゅじゅつを行おこなったが子こどもはすでに息いきがなく、救命きゅうめい措置そちを行おこなったが、母子ぼしともに亡なくなった」

人々ひとびとの命いのちを救すくうための医療いりょう機関きかんさえも標的ひょうてきになり、かろうじて機能きのうしている状況じょうきょうです。

停電ていでんで暗くらい中なか、けが人けがにんの治療ちりょうを続つづけざるを得えず、男性だんせい医師いしは「電気でんきのない環境かんきょうで働はたらき続つづけています。もう1週間しゅうかん以上いじょう休やすみがありません」と、ぎりぎりの状態じょうたいにある医療いりょう現場げんばの状況じょうきょうを説明せつめいしました。

国際こくさいNGO「国境こっきょうなき医師いし団だん」も、現地げんちにいるスタッフの話はなしを伝つたえています。

「今夜こんやの砲撃ほうげきは、さらに激はげしく、さらに近ちかくまで来きた」

「電気でんき、水みず、暖房だんぼうもなく、携帯けいたい電話でんわもつながらない」

「きのうは雪ゆきや雨水あまみずを集あつめた」

「薬局やっきょくにも、もはや薬くすりはない」

悲痛ひつうなことばが並ならびます。

避難ひなんルートは機能きのうしないのか？

国際こくさい社会しゃかいからの非難ひなんが高たかまる中なか、ロシアは市民しみんを逃にがすための避難ひなんルートを設置せっちし、各地かくちで避難ひなんが続つづいています。

しかしウクライナ側がわは11日にち、マリウポリについては市民しみんが外そとに逃にげることも、支援しえん物資ぶっしを中なかに届とどけることもできないとロシア側がわを非難ひなんしました。

戦車せんしゃなどによる攻撃こうげきを受うけているというのです。

さらにベレシチュク副ふく首相しゅしょうは、12日にちに住民じゅうみんを乗のせるためにマリウポリに向むかった車両しゃりょうがロシア軍ぐんに5時間じかんにわたって留め置とめおかれて到着とうちゃくできず、1人にんも避難ひなんさせられなかったと明あきらかにしました。

地元じもとの議会ぎかいは、14日にちになってやっと、退避たいひする人ひとが乗のった車くるま少すくなくとも160台だいが避難ひなんルートを通とおって初はじめて退避たいひできたと明あきらかにしました。ただ、このまま避難ひなんルートが機能きのうするのかは予断よだんを許ゆるしません。

一方いっぽうで議会ぎかいは、マリウポリに救援きゅうえん物資ぶっしを送おくろうとする車列しゃれつについてはロシア側がわが妨害ぼうがいしていると非難ひなんしています。

現地げんちで支援しえんにあたる赤十字せきじゅうじ国際こくさい委員いいん会かいのフローリアン・セレックス広報こうほう官かんは「状況じょうきょうは本当ほんとうに絶望ぜつぼう的てきで、食料しょくりょう、水みず、電気でんきや暖房だんぼう設備せつびもほとんどない状況じょうきょうだと聞きいている。みな生き残いきのこるため必死ひっしになっているようだ」と述のべました。

そして避難ひなんルートについて「紛争ふんそうの当事者とうじしゃは市民しみんが安全あんぜんに避難ひなんできるよう具体ぐたい的てきかつ効率こうりつ的てきな合意ごういを行おこなう必要ひつようがある。それがいま最もっとも重要じゅうようだ」と述のべ、一刻いっこくも早はやい避難ひなんの実現じつげんを訴うったえています。