25日付けの北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は1面で、「きのう、キム・ジョンウン総書記の立ち会いのもと、新型のICBM『火星17型』の発射実験に成功した」と発表しました。北朝鮮が「火星17型」の発射を発表したのは、これが初めてです。
このあと4年余りの間、ICBM級の発射はありませんでしたが、北朝鮮はことしの2月末から3月にかけて、今回の「火星17型」を含めて4回にわたって発射しました。 1回目は2月27日、首都ピョンヤン郊外のスナン付近から弾道ミサイル1発を発射し、北朝鮮は翌日(28日)「偵察衛星の開発のための重要な実験を行った」と発表しました。 2回目はその6日後の3月5日。同じスナン付近から弾道ミサイル1発を発射し「再び偵察衛星の開発のための重要な実験を行った」と発表し、防衛省はいずれも、ICBM級だったと分析しています。 続いて3回目は3月16日でした。同じスナン付近から弾道ミサイルと推定される飛しょう体を発射しましたが、直後に空中爆発して失敗したとみられていて、韓国軍は、ICBMに関連した発射だった可能性があるとの見方を示していました。 そして今回で4回目の発射です。北朝鮮は短期間で4回ものICBM級の弾道ミサイルを発射したことになります。
これまで北朝鮮の最大のミサイルは、2017年11月29日に日本海に向けて発射したICBM級の「火星15型」でした。
また、2017年7月に発射されたICBM級だとする「火星14型」は、移動式発射台が片側8輪です。
史上初の米朝首脳会談の後、北朝鮮は非核化の措置を進める見返りに経済制裁を緩和すること、そして、米韓合同軍事演習の中止など「敵視政策」を撤回することを求めてきました。 しかし、バイデン政権は対話の再開を呼びかけつつもこうした北朝鮮の要求には応じず、1月12日には核・ミサイル開発などに関わったとされる北朝鮮の機関の関係者らに対する新たな制裁を発表しました。 こうした姿勢に北朝鮮は反発を強め、ことし1月19日の朝鮮労働党の政治局会議では、ICBMの発射実験や核実験の中止について、見直しを検討することを示唆していました。 北朝鮮は、アメリカとの史上初の首脳会談を前にした2018年4月にICBMの発射実験と核実験の中止を表明していましたが、今回のICBM級の本格的な発射は2017年11月の「火星15型」以来となります。北朝鮮が示唆したとおり、ICBMの発射実験の中止を見直したことが明確になった形です。
今回の「火星17型」の発射について、キム総書記は「強力な核戦争抑止力を質・量ともに持続的に強化する。アメリカ帝国主義との長期的な対決に徹底して準備していく」と述べ、アメリカを強くけん制しています。
そのうえで「核兵器を持ち、軍事力を強化してこそ、国外からの侵略から自国を守ることができるとの思いを強くしたことは間違いない」と述べ、ウクライナ情勢が北朝鮮の軍事力強化の姿勢を一層、後押ししていると指摘しました。
従来のミサイルより高度が低く、変則的な軌道で飛行し、迎撃するのが難しいと指摘されています。
放物線を描く弾道ミサイルとは異なり、低空かつ飛行中に経路を変えることができる、命中精度が極めて高いミサイルです。 1月25日の発射では内陸部から相当な距離を飛行したとされていて、北朝鮮は「2時間32分17秒飛行し、1800キロ先の目標の島に命中した」と発表しました。
極超音速ミサイルとは音速の5倍にあたるマッハ5以上、東京ー大阪間をおよそ5分で移動する速さで飛行できるミサイルです。 長時間、低い軌道でコースを変えながら飛ぶため、探知や迎撃が困難になり、アメリカや中国、ロシアなどが開発にしのぎを削っています。
しかし1月5日のミサイルはマッハ5以上と韓国メディアは伝えたほか、1月11日のミサイルについては最高速度マッハ10前後、飛行距離も700キロ以上だったとして、韓国軍は「技術的に進展している」としています。
液体燃料を用いるとみられ、北朝鮮が「アメリカ太平洋軍の司令部があるハワイと、アラスカを射程に収めている」と主張する中距離弾道ミサイルです。 防衛省は射程が最大で5000キロに達すると分析しています。
さらに北朝鮮が反発する米韓合同軍事演習も近く行われる見通しです。 3月11日付けの「労働新聞」は、キム総書記が北西部トンチャンリにある「ソヘ衛星発射場」を視察し、偵察衛星などを「大型運搬ロケット」で打ち上げられるよう、施設の改修や拡張を指示したと伝えました。
これらのことから、北朝鮮が「偵察衛星の打ち上げ」と称してICBM級のさらなる発射などを強行する可能性も指摘されていて、関係国の警戒が一段と強まっています。
4年もなかったICBM級の本格的発射 短期間に相次ぐ
新型ICBM「火星17型」の発射にはどんな意味があるの?
なぜアメリカに圧力をかけるの?
北朝鮮のねらいは?
ウクライナ情勢の影響も?
どんなミサイルを開発しているの?
今後もミサイル発射は続くの?
相次いでミサイルを発射する北朝鮮の思惑とは。
「世界最大級の移動式ICBM」と言われる「火星17型」とは。
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ことしに入ってどれだけ発射?