日本新闻: 江戸時代の奉行は慎重だった？当時の貴重な「裁判記録」発見

“大岡おおおか裁さばき”などで知しられる江戸えど時代じだいの奉行ぶぎょうらが実際じっさいにはどのような裁判さいばんをしていたのか、当時とうじを知しる手てがかりとなる記録きろくが見みつかりました。江戸えど時代じだいの裁判さいばん記録きろくは関東かんとう大震災だいしんさいで焼失しょうしつしたものも多おおく、専門せんもん家かは「江戸えど時代じだいの役人やくにんが慎重しんちょうに刑罰けいばつを判断はんだんしていたことがうかがえる貴重きちょうな資料しりょうだ」としています。

新あらたに見みつかったのは「御ご仕置しおき廉かど書しょ（おしおきかどがき）」という18冊さつの冊子さっしで、幕末ばくまつまでのおよそ150年ねんにわたって江戸えど幕府ばくふの奉行ぶぎょう所しょで言い渡いいわたされた判決はんけつが年代ねんだいや刑罰けいばつごとに記録きろくされています。

雇い主やといぬしを殺ころした罪つみに問とわれ、死刑しけいの中なかでも最もっとも重おもい「はりつけ」とされた男おとこの判決はんけつには、最終さいしゅう的てきな結論けつろんを出だした老中ろうじゅうの名前なまえが書かかれていて、奉行ぶぎょう所しょだけで判断はんだんせずに幕府ばくふの中枢ちゅうすうの役人やくにんにも伺うかがいを立たてていたことが確認かくにんできます。

また、ところどころ付箋ふせんのようなものが貼はられ、過去かこの判決はんけつを参考さんこうに刑けいを考かんがえていた様子ようすがうかがえるほか、無罪むざいとなったケースを集あつめた「無む搆（かまえなし）」という冊子さっしもあり、事情じじょうによっては刑罰けいばつを科かさない判断はんだんをしていたこともわかります。

記録きろくは最高さいこう裁判所さいばんしょの倉庫そうこで見みつかりましたが、どこからどのように引き継ひきつがれたのかなどは不明ふめいで、最高裁さいこうさいでは来らい年度ねんどをメドに国立こくりつ公文こうぶん書しょ館かんに移管いかんするということです。

江戸えど時代じだいの法制ほうせい史しが専門せんもんの早稲田わせだ大学だいがく法学部ほうがくぶの和仁わにかや教授きょうじゅは「江戸えど時代じだいの裁判さいばん記録きろくは関東かんとう大震災だいしんさいで焼失しょうしつしたものも多おおく、まとまって見みつかるのは大変たいへん珍めずらしい。江戸えど時代じだいの役人やくにんが慎重しんちょうに刑罰けいばつを判断はんだんしていたことがうかがえる貴重きちょうな資料しりょうだ」としています。

裁判さいばん記録きろく保管ほかんの仕組しくみ

今回こんかい、新あらたに見みつかった江戸えど時代じだいの裁判さいばん記録きろく。

なぜ、これまで気きづかれなかったのでしょうか。

裁判所さいばんしょの記録きろくや資料しりょうは、最高さいこう裁判所さいばんしょの規定きていなどにより▼裁判さいばん記録きろくや判決はんけつなどの「裁判さいばん文書ぶんしょ」と、▼最高裁さいこうさいの規定きていや通達つうたつなどの「司法しほう行政ぎょうせい文書ぶんしょ」に分わけて管理かんりされていて、平成へいせい21年ねんに制定せいていされた公文こうぶん書しょ管理かんり法ほうや最高さいこう裁判所さいばんしょ長官ちょうかんと総理そうり大臣だいじんの申し合もうしあわせに基もとづき、重要じゅうような資料しりょうは国立こくりつ公文こうぶん書しょ館かんに移管いかんされることになっています。

しかし、どちらにも該当がいとうしない資料しりょうは管理かんりのルールがありません。

最高裁さいこうさいによりますと、過去かこにも各地かくちの裁判所さいばんしょで庁舎ちょうしゃの改修かいしゅうや掃除そうじなどの際さいに作成さくせいや保管ほかんの経緯けいいがわからない明治めいじ時代じだいや昭和しょうわ初期しょきなどの資料しりょうが見みつかったことがあるということです。

このため最高裁さいこうさいは昨年度さくねんどからこうした資料しりょうの調査ちょうさに乗り出のりだし、歴史れきし的てきに価値かちがあるものについては、順次じゅんじ、国立こくりつ公文こうぶん書しょ館かんに移管いかんすることにしました。

昨年度さくねんど、調査ちょうさの対象たいしょうとなった仙台せんだいと名古屋なごやの高等こうとう裁判所さいばんしょ管内かんないでは、あわせて300あまりの資料しりょうが新あらたに見みつかったということです。

公文こうぶん書しょの管理かんりに詳くわしい三宅みやけ弘ひろし弁護士べんごしによりますと、裁判所さいばんしょは戦後せんごに行政ぎょうせい機関きかんの一部いちぶから独立どくりつした存在そんざいとなったため、戦前せんぜんの資料しりょうは法的ほうてきな管理かんりの対象たいしょうから抜け落ぬけおちている可能かのう性せいがあるということです。