日本新聞: 香港行政長官選挙中国政府支持の李家超氏当選統制の強化懸念

香港ほんこんで、政府せいふトップの行政ぎょうせい長官ちょうかんの選挙せんきょが行おこなわれ、唯一ゆいいつの立候補りっこうほ者しゃで中国ちゅうごく政府せいふの支持しじを受うけた警察けいさつ出身しゅっしんの李り家か超ちょう氏しが圧倒的あっとうてき多数たすうの信任しんにんを得えて当選とうせんしました。李り氏しは一連いちれんの抗議こうぎ活動かつどうを厳きびしく抑え込おさえこんできただけに、さらに統制とうせいが強つよまるのではないかと懸念けねんされています。

5年ねんに1度ど行おこなわれる香港ほんこんの行政ぎょうせい長官ちょうかん選挙せんきょには、警察けいさつ出身しゅっしんで政府せいふナンバー2の政務せいむ官かんを務つとめ、中国ちゅうごく政府せいふの支持しじを受うけた李り家か超ちょう氏しが、ただ1人にん立候補りっこうほしました。

行政ぎょうせい長官ちょうかん選挙せんきょは、一般いっぱんの市民しみんではなく、議会ぎかいの議員ぎいんや金融きんゆう、商業しょうぎょうなどの業界ぎょうかいから選えらばれた現在げんざい1461人にんいる選挙せんきょ委員いいんによって行おこなわれますが、今回こんかいは、立候補りっこうほが李り氏しのみだったため、李り氏しを支持しじするかどうかを問とう信任しんにん投票とうひょうの形式けいしきで行おこなわれました。

その結果けっか、李り氏しが1416票ひょうという圧倒的あっとうてき多数たすうの信任しんにんを得えて、当選とうせんしました。

選挙せんきょ委員いいんは去年きょねん、「愛国あいこく者しゃによる統治とうち」を掲かかげる中国ちゅうごく政府せいふの主導しゅどうで選挙せんきょ制度せいどが変更へんこうされたあと、中間ちゅうかん派は1人にんを除のぞいて、すべて親中しんちゅう派はが占しめており、李り氏しの当選とうせんは投票とうひょう前まえから確実かくじつ視しされていました。

李り氏しは、香港ほんこんで起おきた政府せいふに対にたいする一連いちれんの抗議こうぎ活動かつどうを厳きびしく抑え込おさえこみ、民主みんしゅ派はの活動かつどう家かや民主みんしゅ派は寄よりのメディアへの締しめつけを主導しゅどうしてきただけに、就任しゅうにん後ご、さらに統制とうせいが強つよまるのではないかと懸念けねんされています。

李り氏しは、香港ほんこんが中国ちゅうごくに返還へんかんされて25年ねんの節目ふしめにあたることし7月つき1日にちに就任しゅうにんする予定よていです。

李り氏し香港ほんこん独自どくじの国家こっか安全あんぜん条例じょうれいの制定せいていに取り組とりくむ考かんがえ

香港ほんこんの新あたらしい行政ぎょうせい長官ちょうかんに選えらばれた李り家か超ちょう氏しは当選とうせん後ごの記者きしゃ会見かいけんで「内外ないがいからの脅威きょういや破壊はかい行為こういに抵抗ていこうし、社会しゃかいの安定あんていと国家こっかの主権しゅけんや発展はってんを守まもるために取り組とりくみたい」と述のべ、社会しゃかいの安定あんていを最さい優先ゆうせんさせる姿勢しせいを強調きょうちょうしました。

そのうえで、香港ほんこん独自どくじの国家こっか安全あんぜん条例じょうれいの制定せいていに取り組とりくむとしています。

さらに「中央ちゅうおうの政府せいふと香港ほんこんはともに香港ほんこんの長期ちょうきの発展はってんと繁栄はんえいを望のぞんでおり、私わたしは香港ほんこん市民しみんにとって最大さいだいの利益りえきとなるよう頑張がんばりたい」と述のべ、中国ちゅうごく政府せいふの意向いこうに沿そった政権せいけん運営うんえいを進すすめる考かんがえを強調きょうちょうしました。

李り家か超ちょう氏しとは

香港ほんこんの新あたらしい行政ぎょうせい長官ちょうかんに就任しゅうにんする李り家か超ちょう氏しは64歳さい。

高校こうこう卒業そつぎょう後ご、警察けいさつに入はいり、2012年ねんには、香港ほんこん政府せいふで治安ちあん部門ぶもんを担当たんとうする保安ほあん局きょくの副ふく局長きょくちょうに就任しゅうにん。

その後そのご、治安ちあん部門ぶもんトップの保安ほあん局長きょくちょうに昇進しょうしんしたあと、19年ねんには、容疑ようぎ者しゃの身柄みがらを中国ちゅうごく本土ほんどにも引き渡ひきわたせるようにする条例じょうれいの改正かいせいを進すすめようとしました。

市民しみんの反対はんたいで改正かいせい案あんは撤回てっかいに追い込おいこまれたものの、これをきっかけにした大だい規模きぼな抗議こうぎ活動かつどうでは、警察けいさつとの間まで激はげしい衝突しょうとつも相次あいつぎました。

2020年ねんに反はん政府せいふ的てきな動うごきを取り締とりしまる香港ほんこん国家こっか安全あんぜん維持いじ法ほうが施行しこうされたあとは、民主みんしゅ派はの活動かつどう家かや政治せいじ家かのほか、中国ちゅうごくに批判ひはん的てきな論調ろんちょうで知しられた「リンゴ日報にっぽう」に対にたいする取締とりしまりを主導しゅどうし、去年きょねん、警察けいさつ出身しゅっしんとして初はじめて政府せいふナンバー2の政務せいむ官かんに抜ばってきされました。

李り氏しは「香港ほんこんの自治じちを侵害しんがいした」などとして、アメリカ政府せいふが指定していした制裁せいさいの対象たいしょうとなっています。

先月せんげつ29日にちには、公約こうやくを発表はっぴょうし、住宅じゅうたく不足ふそくの解消かいしょうや金融きんゆう都市としとしての競争きょうそう力りょく強化きょうかなどと合あわせて、政府せいふの統治とうち能力のうりょくを強化きょうかする方針ほうしんを打ち出うちだしています。

この中なかには、市民しみんの強つよい反対はんたいで実現じつげんに至いたらなかった「反乱はんらんをあおる行為こうい」や「国家こっか機密きみつを盗ぬすみ取とる行為こうい」を取り締とりしまる香港ほんこん独自どくじの国家こっか安全あんぜん条例じょうれいの制定せいていも盛もりこまれています。

治安ちあん以外いがいの分野ぶんやでの経験けいけんが乏とぼしいという指摘してきもありますが、中国ちゅうごくの習近平ちから指導しどう部ぶとしては、李り氏しを支持しじすることで、厳きびしい統制とうせいによる香港ほんこんの安定あんていを最さい優先ゆうせんにした形かたちです。

立候補りっこうほは李り家か超ちょう氏し1人にんだけで当選とうせんが確実かくじつ視し市民しみんの関心かんしんは低調ていちょう

行政ぎょうせい長官ちょうかん選挙せんきょが行おこなわれた香港ほんこんでは8日にち午前ごぜん、民主みんしゅ派は団体だんたいのメンバー3人にんが投票とうひょう会場かいじょうの周辺しゅうへんで1時間じかん近ちかくにわたり抗議こうぎ活動かつどうを行おこない、普通ふつう選挙せんきょの導入どうにゅうを求もとめて声こえを上あげていました。

ただ、立候補りっこうほしたのが李り家か超ちょう氏し1人にんだけで当選とうせんが確実かくじつ視しされていたこともあって、市民しみんの関心かんしんは低調ていちょうです。

30代だいの男性だんせいは、「選挙せんきょがあるのは知しっているが私わたしには投票とうひょうの権利けんりはないので、関係かんけいないです」と話はなしていました。

別べつの20代だいの男性だんせいは、「1人にんしか立候補りっこうほしていないし、結局けっきょく、彼かれに決きまっている。選挙せんきょは意味いみがない、単たんなる手続てつづきだ」と話はなしていました。

また20代だいの女性じょせいは、「以前いぜんの社会しゃかい運動うんどうの時ときのように警察けいさつが力ちからを使つかうことが起おきなければいいと心配しんぱいしていますが、止とめられないでしょう。何なにの期待きたいもありません」と諦あきらめた様子ようすで話はなしていました。

香港ほんこんメディアによりますと、警察けいさつは8日にち、数すう千せん人にんの態勢たいせいで警戒けいかいに当あたり、投票とうひょう会場かいじょうの周辺しゅうへんや幹線かんせん道路どうろでは警察官けいさつかんの姿すがたが目立めだちました。

中国ちゅうごく・国務こくむ院いん香港ほんこんマカオ事務じむ弁べん公おおやけ室しつ選挙せんきょ制度せいどの変更へんこうを正当せいとう化か

中国ちゅうごく政府せいふで香港ほんこん問題もんだいを担当たんとうする国務こくむ院いん香港ほんこんマカオ事務じむ弁べん公おおやけ室しつは、李り家か超ちょう氏しの当選とうせんを受うけてコメントを発表はっぴょうし、「李り氏しが高たかい得票とくひょうで当選とうせんしたことに祝意しゅくいを示しめす」としたうえで、「香港ほんこんの新あたらしい選挙せんきょ制度せいどのさらなる成功せいこう例れいであり、『一いち国こく二に制度せいど』の原則げんそくや香港ほんこんの実情じつじょうにあったよい制度せいどだと証明しょうめいされた」として、習近平ちから指導しどう部ぶ主導しゅどうで行おこなわれた選挙せんきょ制度せいどの変更へんこうを正当せいとう化かしています。

そのうえで、「新あたらしい行政ぎょうせい長官ちょうかんは、香港ほんこん政府せいふと各界かくかいの人ひとたちを率ひきい、香港ほんこんのよい統治とうちという新あらたな局面きょくめんを切り開きりひらいていくに違ちがいない」として、李り氏しに期待きたいを示しめしています。