政治資金パーティーは、参加者などから受け取る対価から経費を差し引いた残りを政治資金とするための催しで、政治資金規正法は、1回のパーティーで同じ人や団体から20万円を超える支払いを受けた場合は、名前や金額などを収支報告書に記載しなければならないと定めています。
NHKが、総務省が公表した去年分の政治資金収支報告書を調べたところ、当時の国会議員225人が関係する239の政治団体が、あわせて751回の政治資金パーティーを開催していました。
パーティー収入はあわせて59億370万円余りで、このうち95%にあたる55億8200万円余りが20万円以下の匿名の購入者からの収入とされ、どのような企業や団体などから支援を受けているのかわからない状態になっていました。
75%にあたる560のパーティーは、すべての購入者が匿名でした。
一方、名前などの公開基準が「5万円を超える」場合となっている寄付の匿名率は全体の4%で、パーティー収入の匿名率は寄付の20倍余りにのぼっていました。
政治資金パーティーをめぐっては、購入者の匿名性の高さが課題だと指摘され、自民党の派閥の問題を受けた政治資金規正法の改正によって、購入者の名前などが公開される基準額が2027年に「20万円を超える」から「5万円を超える」に引き下げられることになりました。
政治資金の問題に詳しい日本大学の岩井奉信名誉教授は、「パーティー券の購入者の公開基準は20万円超と非常に甘く、名前を出したくない企業などがこぞってパーティー券を購入するという構造があった。公開基準引き下げによって不正なお金の流れが抑止できればいいが、政治資金パーティーが開催しづらくなったことで、ネットイベントやグッズ販売、クラウドファンディングといった規制がないほかの事業収入に資金集めが移行するのではないかという懸念がある」と指摘しています。
5万円超で公開となったら どうなる?
ことし6月に政治資金規正法が改正され、パーティー券の購入者を公開する基準額が「20万円を超える」から「5万円を超える」に引き下げられることになりましたが、適用されるのは2027年1月からで、29日公表された最新の収支報告書からはその影響をうかがい知ることはできません。
そこでNHKは、複数の自民党議員の政治団体に、去年分の収支報告書に新しい基準を当てはめたらどうなるか、取材しました。
このうち、ある現職国会議員の政治団体は、去年、政治資金パーティーを複数回開き、あわせて2千数百万円の収入を得ました。パーティー券の購入者は、のべおよそ1000。
現在の基準で名前や金額、住所などが公開される「20万円を超える」購入者は、全体の1%未満でした。
「5万円を超える」購入者は100余りで、新しい基準額で名前などが公開されるのは全体の10%余りとなるということです。
この政治団体の会計責任者を務めている秘書は、「私たちの団体の場合、5万円を超えるパーティー券購入者の多くは、5万円を超えて献金してくれていて、すでにそちらで基準額を超えて実名や企業名が公開されているので、パーティー券の方で名前が載るのはだめという話にはならないと思うが、団体の収入のおよそ半分を政治資金パーティーで賄っているので、匿名性を気にして買い控えが起きて減収になれば相当厳しい」と話していました。
秘書「収入減間違いなく 死活問題に」
派閥の政治資金パーティーに関わってきた自民党の現職国会議員の秘書がNHKの取材に応じ、名前が出ないならパーティー券を購入するという支持者が大半なので、名前を出してでも同じ額を購入する人はあまりいないだろうとしたうえで、「法改正で資金の流れの透明性は増すが、収支報告書に記載される購入者の数も名前もそれほど変わらないだろう」と話しました。
そのうえで、「上限額が4分の1になったから売り上げも単純に4分の1になるということはないが、収入が減るのは間違いなく、事務所によっては死活問題になる。私設秘書の人件費に充てている事務所が大半なので、3人雇っていたところを1人減らすといったことを考えなければいけなくなる」と語りました。