能登のと半島はんとう地震じしん 仮設かせつ住宅じゅうたくに順次じゅんじ入居にゅうきょ 孤独こどくや不安ふあんの訴うったえどうすれば

被災ひさい地ちでは一部いちぶで仮設かせつ住宅じゅうたくへの入居にゅうきょが始はじまっていますが、異ことなる環境かんきょうでの暮くらしなどから喪失そうしつ感かんや孤独こどくを感かんじる人ひとも出でてきています。専門せんもん家かは心こころのケアが大おおきな課題かだいになるとして、積極せっきょく的てきな支援しえんが必要ひつようだと指摘してきしています。

被災ひさい地ちでは、現在げんざい、仮設かせつ住宅じゅうたくの建設けんせつが急ピッチきゅうぴっちで進すすめられています。

石川いしかわ県けんによりますと、今月こんげつ19日にち時点じてんで輪島わじま市しや珠洲すず市し、穴水あなみず町まちなどあわせて8つの市しと町まちでおよそ4500戸こが着工ちゃっこうしていて、今月こんげつ中ちゅうには5000戸こになる見込みこみです。このうち完成かんせいしている695戸こでは順次じゅんじ入居にゅうきょが始はじまっています。

70代だい男性だんせい 知り合しりあいが少すくない仮設かせつ住宅じゅうたくで会話かいわの機会きかい減へり…

穴水あなみず町まちの西川にしかわ松夫まつおさん（76）は地震じしんで自宅じたくが半壊はんかいし、2月末げつまつから仮設かせつ住宅じゅうたくで1人にん暮くらしを始はじめています。西川にしかわさんは高齢こうれいのためおよそ40年ねん暮くらした自宅じたくの解体かいたいを決きめ、仮設かせつ住宅じゅうたくと行き来いききしながら片かたづけを進すすめていますが、喪失そうしつ感かんはいまも大おおきく「最初さいしょのうちは涙なみだが出でたし、いまも泣なきそうになる。思い出おもいでばかりで愛着あいちゃくがある」と話はなしていました。

一方いっぽう、仮設かせつ住宅じゅうたくを少すこしでも暮くらしやすくしようと収納しゅうのうスペースを手作てづくりしたり、自宅じたくから持もってきた思い出おもいでの品しなを飾かざったりして工夫くふうしています。

中なかには、息子むすこと大相撲おおずもうを見みに行いったときに買かった地元じもと出身しゅっしんの幕内まくうち力士りきし・遠藤えんどうの人形にんぎょうなどもあり、西川にしかわさんは「眺ながめていると癒やされるので気きが休やすまればと思おもって持もってきました」と話はなしていました。

ただ、仮設かせつ住宅じゅうたくには知り合しりあいが少すくなく、自宅じたくにいたころと比くらべると会話かいわの機会きかいが減へり、さみしさや孤独こどくを感かんじることがあるといいます。仮設かせつ住宅じゅうたくには談話だんわ室しつがあり、ボランティアがお茶菓子ちゃがしなどをふるまっていますが、訪おとずれる人ひとはまだ少すくなく、西川にしかわさんはここを拠点きょてんに住民じゅうみんどうしの新あらたなつながりができることを期待きたいしています。

西川にしかわさんは「町内ちょうない会かいのような集あつまりもなく、残念ざんねんでさみしいです。何なにかきっかけがあれば、みんなが集あつまって和なごやかになると思おもう。すぐには難むずかしいと思おもうが、これから進すすんでいってほしい」と話はなしていました。

地震じしんで屋根やねの下敷したじきに 恐怖きょうふで今いまも眠ねむれず

石川いしかわ県けん珠洲すず市しの正院しょういん小学校しょうがっこうにある仮設かせつ住宅じゅうたくでは、2人にんの保健ほけん師しが入居にゅうきょ者しゃに持病じびょうの有無うむなどの健康けんこう状態じょうたいについて尋たずねたほか、生活せいかつで困こまっていることがないか確認かくにんしていました。

訪問ほうもんを受うけた65歳さいの男性だんせいは、地震じしんで自宅じたくの屋根やねの下敷したじきになりろっ骨ろっこつを折おるなどのけがをしたため、およそ100キロ離はなれた避難ひなん先さきの金沢かなざわ市しの病院びょういんでリハビリをしていましたが、珠洲すず市しに戻もどってきてからは通院つういんできていないと話はなしていました。

さらに、建物たてものの下敷したじきになったことでいまも大おおきなストレスを感かんじていて、恐怖きょうふのあまり眠ねむれなくなることがあると訴うったえていました。

保健ほけん師したちは丁寧ていねいに聞きき取とりをしながら珠洲すず市内しないの医療いりょう機関きかんに通院つういんすることを勧すすめたり、精神せいしん的てきにつらくなった時ときなどに相談そうだんができる窓口まどぐちを伝つたえたりしていました。

このほか、聞き取ききとりでは近所きんじょに知り合しりあいがいるかわからず孤独こどく感かんから不安ふあんを訴うったえる声こえも出でていて、保健ほけん師したちは入居にゅうきょ者しゃどうしで交流こうりゅうできるよう集会しゅうかい所しょで行おこなわれるイベントを紹介しょうかいしていました。

訪問ほうもんを受うけた男性だんせいは「いろいろな情報じょうほうを教おしえてもらいました。相談そうだんすることで気晴きばらしにもなるので助たすかります」と話はなしていました。

保健ほけん師しの佐々木ささき康やすし介かいさんは「入居にゅうきょ後ごに1人にんで家いえの中なかに閉とじこもってしまう可能かのう性せいもあるので、定期ていき的てきに訪問ほうもんして生活せいかつを確認かくにんしています。聞きいた要望ようぼうや問題もんだいを行政ぎょうせいに伝つたえていきます」と話はなしていました。

災害さいがい時じの心こころのケアに詳くわしい専門せんもん家か「受け身うけみではない支援しえんが重要じゅうよう」

仮設かせつ住宅じゅうたくでの支援しえんについて、災害さいがい時じの心こころのケアに詳くわしい福島ふくしま県立けんりつ医科いか大学だいがくの前田まえだ正治しょうじ主任しゅにん教授きょうじゅは、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの経験けいけんを踏ふまえて受け身うけみではない支援しえんが重要じゅうようだと指摘してきしています。

前田まえだ主任しゅにん教授きょうじゅは仮設かせつ住宅じゅうたくへの入居にゅうきょは生活せいかつの再建さいけんに向むけて大おおきな前進ぜんしんだと評価ひょうかする一方いっぽう、ある程度あるていど、生活せいかつが落ち着おちつくことで「元もとの生活せいかつに戻もどれるだろうか」といった将来しょうらいへの不安ふあんや喪失そうしつ感かんが増ます可能かのう性せいがあるとしています。

さらに、震災しんさいから3か月かげつ近ちかくがたち、疲つかれが顕著けんちょに出でるなど心身しんしんへの影響えいきょうも大おおきくなるとして「時間じかんがたつことで関心かんしんが薄うすれていくこともあり、悩なやんでいる人ひとが声こえを上あげにくくなる」と指摘してきしています。

そのうえで、「石川いしかわ県けんでは心こころの悩なやみの電話でんわ相談そうだんが始はじまっているが、『困こまったら言いってきてください』という受け身うけみではなく、訪問ほうもんしていくような積極せっきょく的てきな支援しえんが必要ひつようだ」と話はなしていました。

また、保健ほけん師しなどの支援しえん者しゃ自身じしんが被災ひさいしていることも多おおく、通常つうじょうの業務ぎょうむと並行へいこうして支援しえんを続つづけるのは負担ふたんが大おおきいとして、小ちいさな組織そしきでもいいので専従せんじゅうで行おこなえる体制たいせいが望のぞましいとしています。

前田まえだ主任しゅにん教授きょうじゅは「福島ふくしま県けんにも多おおくの人ひとが県けん外がいから支援しえんに来きて、1年ねん2年ねんとじっくりとケアをしてくれた。今回こんかいも少すくなくとも5年ねんぐらいの単位たんいでのケアを前提ぜんていにした組織そしきや受け皿うけざらは必要ひつようだ」と話はなしていました。