課徴金の納付命令を受けたのは、「三井住友海上火災保険」、「損害保険ジャパン」、「あいおいニッセイ同和損害保険」、「東京海上日動火災保険」で、31日午前、4社の社長などは公正取引委員会の大胡審査局長から直接、申し渡しを受けました。
公正取引委員会によりますと、4社は▽発電事業者の「JERA」や▽石油元売りの「コスモエネルギーホールディングス」がそれぞれ発注した、災害の被害などに備える「共同保険」の契約をめぐり、価格を事前に調整するなど、参加企業の組み合わせはそれぞれ違うものの、あわせて9件の企業や自治体などとの契約でカルテルや談合を繰り返していたということです。
このうち1件の談合では、損害保険代理店の「共立」も大手間の情報交換に協力していたと認定しました。
背景には、地震や事故の発生が相次いで保険料の支払いが増え、保険料を引き上げる必要などがあったということで、実際の調整は各社の担当者がオンライン会議や無料通信アプリなどでやり取りをしていたほか、都内のカラオケ店で行われていた事例も確認されました。
公正取引委員会は、31日、大手4社に対し、あわせて20億円余りの課徴金の納付を命じるとともに、代理店も含めた5社に対し、再発防止を求める排除措置命令を出しました。
公正取引委員会は、事前に幹事会社や保険料率などを決定することは独占禁止法上、問題となるなど「共同保険」の留意点を示し、懸念がある場合は事前に相談してほしいと呼びかけています。
損保各社の再発防止策は
企業向けの保険をめぐり損害保険会社どうしで保険料の価格を調整していた問題では、去年12月、金融庁が大手損保4社に対し保険業法に基づく業務改善命令を出しました。
この命令で金融庁は、大手損保4社が保険の販売先である顧客企業と関係を保とうと、株式を保有したり、商品やサービスの販売で協力したりするいわば“もたれ合い”の慣習を続けていて、本来ならば保険会社どうしが入札などで価格を競うべき場面で競争意欲を損なわせた可能性があると指摘しました。
こうした指摘を受けて大手損保4社はことし2月、“もたれ合い”の温床にもなった顧客企業の株式を持つ「政策保有株」をゼロにする計画を一斉に発表しました。
東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の3社が2029年度末(まつ)までに、損害保険ジャパンは、2030年度末(まつ)までにゼロにするとしています。
また、業界団体の日本損害保険協会も明確な期限を定めて政策保有株をなくし、新たな保有も認めないとするガイドラインを策定しました。
一方、金融庁の調査では、保険料の価格調整について、違法または不適切かどうかを認識していなかったり、問題ないと認識していたりした事例は全体のおよそ3分の2にのぼっていました。
大手損保4社は独占禁止法などについて理解を深める研修を行うなどの再発防止策を示していますが、損保業界では今回の問題以外にも代理店が持つ顧客情報を漏えいしていた問題が発覚していて、法令順守の意識をいかに高められるかが課題となっています。