和歌山県によりますと、この大雨の影響で18の市や町の住宅2800棟余りが水に浸かるなどしたほか、農業にも大きな被害が出ました。
▽亀の川 ▽日方川 ▽加茂川 ▽小原川 ▽由良川 ▽広川 ▽貴志川 ▽真国川 ▽四邑川 ▽不動谷川
紀美野町西野地区の高台から、2日午後3時45分ごろに撮影された「真国川」の映像では、川からあふれた濁流で道路や田んぼは見えなくなり、手前の家屋がある場所まで水に浸かっています。
実は、ハザードマップでは、浸水リスクを示す色はついていませんでした。
ただ、記録が残る範囲で今回のような規模の氾濫は確認されておらず、洪水で重大な被害が起きるおそれのある「洪水予報河川」や「水位周知河川」には指定されていないため、県による浸水想定は実施されていませんでした。 国や県によると、和歌山県内のおよそ450の川のうち、浸水の範囲などの想定が行われている河川はわずか24。
「今回は線状降水帯がかかった場所と氾濫した場所がほぼ一致していて、記録的な雨が降れば、これまで氾濫が起きていなかった場所でも災害が起きることを示したと言える。真国川では氾濫した水が川に沿って流れる『流下型氾濫』が起きていたのではないか。流下型氾濫は、谷底を流れるために浸水範囲は狭いものの、水位が急激に上がって流速も増す特徴がある。こうした川は多くの山間地にあるので、ハザードマップでリスクが示されていなくても、同じような災害が各地で起こると考えて、よりいっそう、早めの避難を心がけてほしい」
その経緯も次第にわかってきました。 和歌山県紀の川市に住む酒井壽夫(72)さんは、2日午後0時半ごろ、高台にある自宅から、友人の前田美孝さん(79)と一緒に川沿いの前田さんの住宅に向かいました。足の不自由な前田さんの80歳の妻を避難させるためです。 住宅にたどりついた2人は、周囲で浸水が始まる中、妻をより高い場所がある隣の小屋に移しました。
午後1時すぎ、酒井さんはロープをつたって小屋から高さ80センチほどまで冠水した道路を渡り、桜の木に向かっていたところ、流されたとみられています。
紀の川市によりますと、酒井さんは現在、消防団には所属していませんでしたが、地域の人たちによりますと、近くに住む高齢者の手伝いをしてくれることが多く、周囲から頼られる存在だったということです。 行方がわからなくなった酒井さんは、5日後の今月7日に遺体で見つかりました。
和歌山県紀美野町で行方がわからなくなっている女性は、冠水した道路を車で走り抜けようとしたあと、車を止めて車外に出て流されたとみられています。 紀美野町や近所の人などによりますと、女性の乗った車はほかの複数の車に続いて冠水していた真国川沿いの県道を下流に向かって走っていたということです。
ところが、女性が近くの草木のようなものにつかまり救助を待っているうちに水位は一気にあがり、午後1時半ごろ流されたとみられています。
牛山教授によると、周囲の人の避難を手助けするなど、防災行動をとっていて死亡するケースが実は多く、牛山教授が1999年から2022年にかけて調査した1521人のうち、およそ1割にあたる141人に上っているということです。
「災害時の助け合いは大事なことです。ただ、危険性があることも認識して、その場所にどんなリスクがあるのか、今はどんな状況なのかを情報収集し、早めに危険を察知して行動することが重要です。建物の中にいた人が結果的に助かっていることから、冠水した場所には立ち入らないようにして、建物の中の少しでも高い安全な所に避難することが大切です」
川の氾濫などで水に流れがあるときは、車でも簡単に流されることを理解して欲しいと呼びかけています。
「車で冠水した道路に入ると動かなくなってしまうことがあり、仮に車から脱出できたとしても冠水している道路では簡単に流されてしまう。車であれば水がたまっていても通れるのではないかと思いがちだが、浸水の深さは地表面の少しの高低差で大きく変わるため、どれほど浸水しているかはわからないこともある。徒歩でも車でも浸水しているところがあったら一切立ち入らず、少しでも高いところにとどまることが大切だ」
ハザードマップに載ってない?
リスク示されぬ川 全国に多数
死亡の男性 避難を手助けしていた
行方不明の女性 車で移動していた
教訓は
専門家は「線状降水帯によって、これまで災害がなかった川でも大きな被害が出ている。浸水想定がなくても早めの避難を心がけて欲しい」と指摘しています。
(和歌山放送局:小谷麻菜美 隈部敢)
10の河川で氾濫か