沖縄おきなわ戦せんから78年ねん「慰霊いれいの日ひ」平和へいわへの祈いのり

6月つき23日にちは、旧きゅう日本にっぽん軍ぐんの組織そしき的てきな戦闘せんとうが終おわったとされる日ひで、沖縄おきなわ県けんが「慰霊いれいの日ひ」と定さだめています。

最後さいごの激戦げきせん地ちとなった糸満いとまん市し摩文仁まぶにの平和へいわ祈念きねん公園こうえんでは、早朝そうちょうから遺族いぞくなどが訪おとずれ、戦没せんぼつ者しゃの名前なまえが刻きざまれた「平和へいわの礎いしずえ」の前まえで花はなを手向たむけたり、手てを合あわせたりしていました。

平和へいわ祈念きねん公園こうえんでは、正午しょうご前まえから沖縄おきなわ県けん主催しゅさいの戦没せんぼつ者しゃ追悼ついとう式しきが、岸田きしだ総理そうり大臣だいじんや沖縄おきなわ県けんの玉城たまき知事ちじのほか、4年ねんぶりに一般いっぱんの人ひとも参列さんれつして開ひらかれ、正午しょうごに全員ぜんいんで1分間ふんかんの黙もくとうをささげました。

また、政府せいふが去年きょねん12月つきに決定けっていした「反撃はんげき能力のうりょく」の保有ほゆうを明記めいきした「国家こっか安全あんぜん保障ほしょう戦略せんりゃく」など3つの文書ぶんしょをめぐり、「沖縄おきなわにおける防衛ぼうえい力りょく強化きょうかに関連かんれんする記述きじゅつが多数たすうみられるなど、苛烈かれつな地上ちじょう戦せんの記憶きおくと相あいまって、県民けんみんの間まに大おおきな不安ふあんを生しょうじさせていて、対話たいわによる平和へいわ外交がいこうが求もとめられている」と訴うったえました。

そのうえで、去年きょねん復帰ふっき50年ねんの節目ふしめを迎むかえた沖縄おきなわの経済けいざいは、これまで成長せいちょうしてきた一方いっぽう、コロナ禍かからの観光かんこう業ぎょうの復興ふっこうや、物価ぶっか高騰こうとうへの対応たいおうなど新あらたな課題かだいにも直面ちょくめんしているとして、魅力みりょくを最大限さいだいげんに生いかし、「強つよい沖縄おきなわ経済けいざい」の実現じつげんに向むけて国家こっか戦略せんりゃくとして振興しんこうに取り組とりくむ考かんがえを強調きょうちょうしました。

また、沖縄おきなわにアメリカ軍ぐん基地きちが集中しゅうちゅうしていることを重おもく受け止うけとめるとしたうえで、「目めに見みえる成果せいかを一ひとつ一ひとつ着実ちゃくじつに積み上つみあげ、基地きち負担ふたんの軽減けいげんに全力ぜんりょくで取り組とりくんでいく」と述のべました。

そして、「わが国わがくにを取り巻とりまく安全あんぜん保障ほしょう環境かんきょうは戦後せんご最もっとも厳きびしく複雑ふくざつな状況じょうきょうにあるが、世界せかいの誰だれもが平和へいわで心こころ豊ゆたかに暮くらせる世の中よのなかを実現じつげんするため、不断ふだんの努力どりょくを重かさねていくことを改あらためて、み霊れいに誓ちかう」と述のべました。

このほか、式しきでは高校こうこう3年生ねんせいの平安へいあん名めい秋あきさんが、ことしの「平和へいわの詩し」に選えらばれた「今いま、平和へいわは問といかける」を朗読ろうどくしました。

一方いっぽう、沖縄おきなわの基地きち負担ふたん軽減けいげんについては、「取り組とりくみを実際じっさいに動うごかし、結果けっかを出だすという積み重つみかさねがなければ、理解りかいしてもらえない。今いま、基地きち負担ふたんに向むけて考かんがえているさまざまなことに結果けっかを一ひとつ一ひとつ出だしていくことが何なによりも求もとめられていると感かんじており、そういった努力どりょくを続つづけていきたい」と述のべました。

慰霊いれい祭さいの通常つうじょうどおりの開催かいさいは4年ねんぶりとなり、会場かいじょうのひめゆりの塔とうの前まえには、同窓どうそう生せいや遺族いぞく、一般いっぱんの参列さんれつ者しゃおよそ170人にんが集あつまりましたが、元もと学徒がくとはひめゆり平和へいわ祈念きねん資料しりょう館かんの前ぜん館長かんちょうの島袋しまぶくろ淑子としこさん（95）と仲里なかざと正子まさこさん（96）の2人にんだけでした。

慰霊いれい祭さいでは、同窓どうそう会かいの会長かいちょうが祈いのりのことばを述のべた後のち、卒業そつぎょう式しきで歌うたうはずだった「別わかれの歌うた」を歌うたい、当時とうじの生徒せいとたちは時折ときおり、涙なみだを浮うかべていました。

平和へいわ祈念きねん資料しりょう館かんの普天間ふてんま朝ちょう佳けい館長かんちょうは、「コロナ禍かでずっと寂さびしい思おもいをしていたが、たくさんの皆みなさんで亡なくなった方ほうを追悼ついとうできてよかった。体験たいけん者しゃほどの力強ちからづよさはないが、私わたしたちにできる方法ほうほうで沖縄おきなわ戦せんのことを伝つたえていきたい。体験たいけん者しゃの皆みなさんは、戦争せんそうを知しらないから戦争せんそうをすると話はなしていたので、本当ほんとうの戦争せんそうを少すこしでも知しることができる場所ばしょの1つでもある資料しりょう館かんで戦争せんそうの実相じっそうを知しってほしい」と話はなしていました。

「白梅はくばい学徒がくと隊たい」は、沖縄おきなわ戦せん当時とうじ、県立けんりつ第だい二に高等こうとう女おんな学校がっこうに通かよう女子じょし生徒せいとたちを看護かんご要員よういんとして動員どういんしてつくった学徒がくと隊たいです。

この中なかで、白梅はくばい学徒がくと隊たいの戦争せんそう体験たいけんを語り継かたりつぐ活動かつどうを行おこなっている「若わか梅うめ会かい」の新垣にいがきゆきさんが、「先輩せんぱい方かたが安心あんしんできる未来みらいになるよう、絶対ぜったいに繰り返くりかえしてはいけない歴史れきしを後世こうせいにつないでいきたいです」と平和へいわのメッセージを読み上よみあげました。

このあと参加さんか者しゃたちは線香せんこうをあげ、静しずかに手てを合あわせていました。

姉あねが学徒がくと隊たいとして動員どういんされ犠牲ぎせいになったという埼玉さいたま県けんの安次やすじ嶺みね博子ひろこさん（90）は、「姉あねはとても頑張がんばり屋やさんでした。姉あねの顔かおを見みると、きのうのように思い出おもいだします。元気げんきだったら楽たのしい話はなしができたでしょう。大切たいせつな人ひとが亡なくなる戦争せんそうは絶対ぜったいやってはいけないです」と話はなしていました。

高齢こうれいで体調たいちょうが万全ばんぜんでないこともあって、慰霊いれい祭さいには出席しゅっせきしませんでしたが、元もと学徒がくとや同窓どうそう生せいも白梅はくばい之の塔とうを訪おとずれ、祭壇さいだんに向むかって手てを合あわせたり、祭壇さいだんに置おかれた学友がくゆう一いち人にん一いち人にんの写真しゃしんを眺ながめて語かたりかけたりしていました。

学徒がくと隊たいとして動員どういんされた元もと学徒がくとの武村たけむら豊ゆたかさん（94）は、「きくさんという大切たいせつな人ひとが亡なくなってしまいました。私わたしたちみたいに、お国くにのためじゃなくて、自分じぶんの家族かぞくとか身近みぢかな人ひとを大切たいせつにしてほしい。戦争せんそうはもう嫌いやです。子こどもたちにも戦争せんそうは嫌いやだと言いえる子こになってほしい」と話はなしていました。

疎開そかいして生き延いきのびた同窓どうそう生せいの岸本きしもと瑞江みずえさん（94）は、「私わたしは疎開そかいをして生き延いきのびました。友達ともだちと再開さいかいした時ときには『あなたは生いきていたんだね』っていうのが最初さいしょのあいさつでした。戦争せんそうだけはしてはいけないですよ」と話はなしていました。

沖縄おきなわ市しに住すむ96歳さいの太田おおた康子やすこさんは沖縄おきなわ戦せんの時とき、18歳さいでした。

ふるさとの本部もとぶ町まちには、旧きゅう日本にっぽん軍ぐんが拠点きょてんを構かまえていたため自宅じたくの周辺しゅうへん一帯いったいが戦場せんじょうとなり、家族かぞくとともに山々やまやまを逃げ回にげまわったといいます。

太田おおたさんは、命いのちからがら生き延いきのびましたが、兄あにたちが戦場せんじょうに駆り出かりだされたり敗残はいざん兵へいと間違まちがわれて、銃撃じゅうげきされたりして親族しんぞく6人にんを戦争せんそうで亡なくしました。

糸満いとまん市しの平和へいわ祈念きねん公園こうえんにある平和へいわの礎いしずえには、その名前なまえが刻きざまれています。

亡なくなった兄あにについて太田おおたさんは、「口くちかずは少すくなかったですが、体からだが丈夫じょうぶで優やさしくとてもよくしてもらいました。兵隊へいたいとして伊江いえ島とうに行いって亡なくなりましたが、どこでどのように亡なくなったかいまも分わからず、遺骨いこつもかえってきていません」と話はなしていました。

例年れいねん、慰霊いれいの日ひやその前後ぜんごには現地げんちを訪おとずれていましたが、高齢こうれいになり遠出とおでができなくなったため、この数すう年ねんは自宅じたくで犠牲ぎせい者しゃへの祈いのりをささげています。

太田おおたさんは23日にち、沖縄おきなわ市しの自宅じたくで式典しきてんのテレビ中継ちゅうけいを見みつめ、正午しょうごに黙もくとうをささげました。

そして、若わかい世代せだいに向むけて、「今いま、国くにどうしがしていることは、私わたしたち個人こじん個人こじんではどうにもならないが、若わかい人ひとたちどうしが仲なかよくして、二度にどと戦争せんそうを起おこさないようにしてもらいたい」と話はなしていました。