日本新聞: “多死社会” 年間死亡者過去最多の156万人火葬待ち12日間も

去年きょねん1年間ねんかんに国内こくないで死亡しぼうした日本人にっぽんじんは156万まん人にん余あまりと、統計とうけいを取とり始はじめて以降いこう、過去かこ最多さいたとなりました。今後こんごも増ふえ続つづけ、2040年ねんには約やく167万まん人にんに達たっする見込みこみです。こうした中なか、人口じんこうの多おおい都市とし部ぶでは亡なくなった家族かぞくをすぐに火葬かそうすることができず、12日間にちかん待まったという人ひとも出でています。

「多た死し社会しゃかい」に対応たいおうしようとする自治体じちたいやメーカーの動うごきを取材しゅざいしました。

去年きょねん1年間ねんかんに国内こくないで死亡しぼうした日本人にっぽんじんは156万まん人にん余あまりと、前まえの年としより9％近ちかく増ふえ、統計とうけいを取とり始はじめて以降いこう最もっとも多おおくなりました。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうの人口じんこう動態どうたい統計とうけいによりますと、去年きょねん1年間ねんかんに国内こくないで死亡しぼうした日本人にっぽんじんの数かずは、概数がいすうで156万まん8961人にんで、前まえの年としより12万まん9105人にん、率りつにして8.9％増ふえ、1899年ねんに統計とうけいを取とり始はじめて以降いこう、最もっとも多おおくなりました。

死亡しぼうする人ひとの数かずは平成へいせい元年がんねんと比くらべるとおよそ2倍ばい、この20年ねんでも1.5倍ばいに増ふえています。

死因しいんごとにみますと、

▼最もっとも多おおいのは「がん」で38万まん5787人にんと全体ぜんたいの24％を占しめていて、次ついで

▼「心こころ疾患しっかん」が23万まん2879人にん（14％）、

▼「老衰ろうすい」が17万まん9524人にん（11％）などとなっていて、

▼「新型しんがたコロナ」で死亡しぼうした人ひとは4万まん7635人にんでした。

火葬かそう待まち長期ちょうき化か費用ひようかさむケースも

亡なくなる人ひとの数かずが増加ぞうかする中なかで家族かぞくなどを火葬かそうするまでの期間きかんがこれまでより長ながくなり、必要ひつような費用ひようがかさむケースも出でています。

神奈川かながわ県けん茅ヶ崎ちがさき市しに住すむ40代だいの女性じょせいは、ことし2月つき、94歳さいの祖母そぼを亡なくしました。

女性じょせいは、高齢こうれいの両親りょうしんの代かわりに孫まごにあたる自分じぶんが葬儀そうぎ会社かいしゃと必要ひつような手配てはいを行おこなうことにして、葬儀そうぎは行おこなわず火葬かそう場じょうでお別わかれをする「直じか葬そう」のプランを選えらびました。

しかし、火葬かそうの予約よやくをしようとすると、混雑こんざつしているため一いち番ばん早はやくても祖母そぼが亡なくなってから11日にち後ごになると言いわれたということです。

また、遺体いたいの保管ほかんにかかる料金りょうきんとして1日にちあたりあわせて1万まん3千せん円えん、12日間にちかんで15万まん円えん以上いじょうが追加ついかでかかることになりました。

もう少もうすこし待まつ日ひにちが少すくない、ほかの自治体じちたいの火葬かそう場じょうも考かんがえましたが、移動いどう料金りょうきんなどで費用ひようの総額そうがくは変かわらず、そのまま11日にち後ごに火葬かそうして祖母そぼを見送みおくったということです。

女性じょせいは「年金ねんきん生活せいかつの両親りょうしんにとって追加ついかの費用ひようは大おおきな負担ふたんになりました。待まつ日数にっすうが長ながいことも、費用ひようがかさむことも初はじめての経験けいけんで、本当ほんとうに驚おどろいてしまいました」と話はなしていました。

遺体いたいを安置あんちする冷蔵庫れいぞうこ受注じゅちゅう件数けんすう4年ねん前まえの5倍ばいに

こうした中なか、新あらたな需要じゅようの増加ぞうかに応こたえようとする動うごきも出でています。

川崎かわさき市しにある冷蔵れいぞう設備せつびメーカーは、これまで主おもにコンビニエンスストア向むけの冷蔵庫れいぞうこを手てがけていましたが、遺体いたいを安置あんちするために使用しようする冷蔵庫れいぞうこの去年きょねんの受注じゅちゅう件数けんすうは4年ねん前まえの2019年ねんに比くらべて5倍ばいに増ふえ、ことしはさらに増ふえているということです。

▼首都しゅと圏けんなどの葬儀そうぎ会社かいしゃからの受注じゅちゅうが増ふえたほか、

▼新型しんがたコロナの感染かんせん拡大かくだいを背景はいけいに葬儀そうぎを行おこなわない「直じか葬そう」が増ふえたことや

▼火葬かそう場じょうが混雑こんざつし遺体いたいの安置あんち期間きかんが長引ながびくケースがあることから火葬かそう場じょうからの注文ちゅうもんも伸のびているということです。

冷蔵れいぞう設備せつびメーカー「たつみ工業こうぎょう」の岩根いわね弘幸ひろゆき代表だいひょう取締役とりしまりやくは「冷蔵れいぞう設備せつびはご遺体いたいの保管ほかんにも適てきしていて、冷蔵庫れいぞうこメーカーとして培つちかった技術ぎじゅつで貢献こうけんできればと思おもっています」と話はなしていました。

横浜よこはま市し火葬かそう場じょうは「友引ともびき」も受け入うけいれ新しん施設しせつの建設けんせつも計画けいかく

主おもに大だい都市とし部ぶで、亡なくなった人ひとの火葬かそうまでの時間じかんが長期ちょうき化かするケースも出でる中なかで、新あらたな火葬かそう場じょうの建設けんせつや改修かいしゅうなどで受け入うけいれられる件数けんすうを増ふやそうとする自治体じちたいもあります。

政令市せいれいしの中なかで最もっとも人口じんこうが多おおい横浜よこはま市しでは昨年度さくねんど、4か所かしょある市営しえいの施設しせつで3万まん4千せん件けんの火葬かそうが行おこなわれましたが、市しによりますと、すぐに予約よやくをとるのは難むずかしく、平均へいきんすると5日にちから6日にち程度ていど待まつということです。

このため、これまで「縁起えんぎがよくない」として行おこなわれていなかった「友引ともびき」の日ひにも受け入うけいれる火葬かそう場じょうの数かずを増ふやす対応たいおうを進すすめているということです。

しかし、今後こんごも市内しないで最期さいごを迎むかえる人ひとの数かずはさらに増ふえていく見込みこみであることから、現在げんざい、3年ねん後ごの運用うんよう開始かいしを目指めざして新あらたな施設しせつを建設けんせつする計画けいかくを進すすめています。

横浜よこはま市しの山口やまぐち真しん斎場さいじょう整備せいび担当たんとう課長かちょうは「増ふえ続つづける需要じゅように対応たいおうして、安定あんていした火葬かそうを提供ていきょうしなければならないので既存きそんの施設しせつでの努力どりょくと、新あたらしい施設しせつの着実ちゃくじつな整備せいびを進すすめていきたい」と話はなしていました。

火葬かそうの専門せんもん家か「火葬かそう場じょう建設けんせつに抵抗ていこう感かんもイメージ変かえる工夫くふうを」

火葬かそうをめぐる問題もんだいに詳くわしい、一般いっぱん社団しゃだん法人ほうじん・火葬かそう研けんの武田たけだ至いたる代表だいひょう理事りじは「人口じんこうが集中しゅうちゅうする都市とし部ぶでは死亡しぼうする人ひとも増ふえているため火葬かそう能力のうりょくが追おいついておらず、新あらたに建設けんせつするにも、用地ようちや住民じゅうみんの合意ごういを得える難むずかしさから進すすまない自治体じちたいもある。お別わかれや収おさむ骨ぼねを短時間たんじかんで終おわらせるなど時間じかんの制限せいげんを行おこなうことで何なんとか対応たいおうしているという状況じょうきょうだ」と指摘してきしています。

その上うえで、「地方ちほうでは死亡しぼう者しゃの数かずは減少げんしょうに転てんじているところもあるが、都市とし部ぶではまだこれから増加ぞうかする見込みこみで、近ちかくに火葬かそう場じょうができるとなると抵抗ていこうを感かんじる人ひとも多おおいと思おもうが、例たとえば、景観けいかんのよい所ところにある施設しせつを増ふやして施設しせつのイメージを変かえていくなど、できる工夫くふうをしていく必要ひつようもあるのではないか」と話はなしていました。

死亡しぼう者しゃは今後こんごも増加ぞうか元気げんきなうちにするべきことは

国立こくりつ社会しゃかい保障ほしょう・人口じんこう問題もんだい研究所けんきゅうじょがまとめた将来しょうらい推計すいけい人口じんこうによりますと、1年間ねんかんに死亡しぼうする人ひとの数かずは今後こんごも増ふえ続つづけ、2040年ねんにはおよそ167万まん人にんとピークを迎むかえたあとは減少げんしょうに転てんじるものの、2070年ねんまで年間ねんかん150万まん人にん以上いじょうで推移すいいする見込みこみです。

人生じんせいの終おわりへ向むけた準備じゅんびを行おこなう「終おわり活かつ」に詳くわしいシニア生活せいかつ文化ぶんか研究所けんきゅうじょの小谷おたにみどり代表だいひょう理事りじは葬儀そうぎや火葬かそうのあり方ありかたについて、「今後こんごはさらに高齢こうれい化かが進すすみ、亡なくなる人ひとを家族かぞくの力ちからだけで支ささえることができないという問題もんだいや、増ふえていく死者ししゃを誰だれが弔とむらうのかという問題もんだいが出でてくる。人生じんせいをどう締しめくくり、亡なくなったあとに誰だれに知しらせて欲ほしいのか家族かぞくで話し合はなしあったり、家族かぞく以外いがいでも近ちかくの人ひとや友人ゆうじんなど自分じぶんの意思いしを託たくせるつながりを元気げんきなうちに持もっておくことが大事だいじだと思おもう」と話はなしていました。