59歳の男性は「とてもわくわくしています。この列車は、渋滞が深刻なハワイの助けになります。買い物に行く際などにぜひ使いたい」などと話していました。
また、51歳の女性は「高架鉄道の上から見ると、いつも車で運転している道も違って見えます。残りの路線が完成したら、ぜひ通勤にも列車を利用したい」と話していました。
さらに、別の42歳の女性は「この鉄道が運行を開始したのはとても画期的です。空港や街の中心部まで路線が完成するのを心待ちにしています」と話していました。
計画されているのは、島の南部およそ30キロ、19駅の区間で、ホノルル郊外の住宅街や地元の大学がある地域から、日本との直行便も発着する国際空港を経由し、ホノルル中心部までが結ばれる予定です。 このうち、今回6月30日に開通したのは、市郊外のイースト・カポレイ駅からアロハスタジアム駅までの17キロ余り、9駅の区間となっています。 2025年までに国際空港を含む、さらに4つの駅で運行が始まり、ダウンタウンなど、中心部を通る残りの6つの駅の区間も含め、2031年までに全線開通する見込みです。 ハワイで高架式の本格的な旅客鉄道事業は初めてとなります。 この鉄道事業は2000年代になって、具体的な計画の検討が開始され、2011年に起工式を実施、2014年に着工しましたが、その後も工事の遅れが重なり、今回、ようやく一部区間の運行が開始されることになりました。 乗車には、バスの乗車に使われている「HOLOカード」と呼ばれるICカードが必要で、料金は大人が1回の乗車で3ドル、1日券は7ドル50セントなどとなっています。 平日は、午前5時から午後7時まで、土日祝日は午前8時から午後7時まで、10分に1度の間隔で運行が予定されています。 日本の大手電機メーカー、日立製作所が製造した車両の運行には、アメリカで初めてとなる運転士などのいない完全自動運転システムを取り入れています。 鉄道の運行を担うオペレーションズセンターでは、10分おきに走る列車の間隔や車両、それに線路の状態などに問題が生じていないか、24時間体制で監視しています。 ホノルルは、アメリカの中でも特に渋滞が深刻だとされていて、日立によりますと、列車1編成で運ぶことができるのは最大800人で、これはホノルルの市営バス10台分の利用者にあたり、車の利用も減れば渋滞の緩和にも貢献できるとされています。 渋滞が緩和されれば、二酸化炭素など温室効果ガスの排出量の削減にもつながると期待されています。
このうち、ホノルル郊外に住むビッキー・ケネディさん(78)は、目が不自由でこの23年間、盲導犬とともに生活しています。 これまで、買い物などに行く際、夫や友人などに毎回送迎を頼まなければ、どこにも行くことができず、相手が忙しい時には依頼するのを後ろめたく感じてしまうことが多くありました。 今回、自宅の近くに鉄道の最寄りの駅が完成したことで、盲導犬の力を借りれば、自分自身で買い物などに自由に行くことができると期待しています。 ケネディさんは「建設に時間がかかったので、私が生きているうちに完成するのか半信半疑でしたが運行が始まるとあってうれしい。盲導犬と一緒に電車に乗って行きたい場所へ行けることで、自分は自立していると感じることができる」などと話していました。
そして、 ▽最初の運行開始を今回の2023年 ▽空港までを含む次の区間の拡張を2025年 ▽全線開通を2031年までにと、 段階を踏むようにしたと説明しています。 そのうえで、鉄道開通のメリットについて、ブランジャルディ市長は「経済にとってとてもよい影響があると考えている。鉄道の周辺には、新たなコミュニティーが生まれ、これまでなかったものをつくりだしていく。未来の世代にとって、変革的なものになるだろう」などと述べ、その効果に大きな期待を寄せました。 今後の利用者の見通しについて、「専門家の見立てでは、運行開始から1年後には1日当たり平均で8000人から1万人が利用するだろうと予測されている。今後、この路線が全面的に開通すれば、1日当たり8万5000人まで利用者が増えるとみられる」と説明しました。
そのうえで、「アメリカは会社にとって、とても重要な市場の1つだ。ホノルルで、この鉄道を利用した人たちに、自分たちの地元にも、こうした鉄道がほしいと思ってもらいたい」などと述べ、アメリカのほかの地域にも鉄道事業を拡大していきたいという考えを示しました。
背景にあるとされるのが、たび重なる事業計画の変更による工事の大幅な遅れや、記録的なインフレを背景とした資材価格や人件費の高騰などです。 ロンドンや東京、ニューヨークなど、1990年代以降に実施された世界の大都市の鉄道事業と比較しても、1人当たりのコストが最も高くなるという試算も出ています。 ケント副社長は「道路、橋、学校、警察などに費やすことができるお金が減ってしまいます。多くの税金が、この鉄道に費やされることになります」などと述べました。 さらに、この鉄道事業は、2031年までの全線の開通を目指していますが、資金不足の影響で、日本人観光客にも人気の大型商業施設、アラモアナショッピングセンターを含むホノルル中心部の2つの駅までの路線は完成する見通しが立っていません。 これについて、ホノルル高速鉄道輸送機構のロリ・カヒキナCEOは「電車に乗ることで、市民はこれまでの車移動では気がつかなかった飲食店などを知ることにもつながるので、駅の周辺のビジネスにはプラスの効果がある」としたうえで、「アラモアナショッピングセンターは、バスなどの交通の主要なターミナルとしても使われている場所で、鉄道の開通は不可欠だ」と述べ、中心部の2つの駅までの路線の完成にも意欲を示しました。
ハワイ初の高架鉄道「スカイライン」とは
沿線住民 “完成するのか半信半疑も運行始まりうれしい”
ホノルル市長「未来の世代にとって変革的なものに」
日立製作所「アメリカは重要な市場の1つ」
専門家 “世界の大都市で 最も高額な鉄道計画に”