日本新闻: 地下鉄サリン事件から30年被害者や遺族教訓語り継ぐよう訴え

14人にんが死亡しぼうし、6300人にんが被害ひがいに遭あった、オウム真理教おうむしんりきょうによる「地下鉄ちかてつサリン事件じけん」から、20日にちで30年ねんです。事件じけんを知しらない世代せだいが増ふえるなか、被害ひがい者しゃや遺族いぞくからは、未み曽そ有ゆうのテロを防ふせげなかった事件じけんの教訓きょうくんを伝つたえ、語り継かたりつぐよう訴うったえる声こえが上あがっています。

30年ねん前まえの3月つき20日にち、当時とうじのオウム真理教おうむしんりきょうの信者しんじゃが都内とないを走はしる地下鉄ちかてつの3つの路線ろせんで猛毒もうどくのサリンをまき、14人にんが死亡しぼうし、およそ6300人にんが被害ひがいに遭あいました。

元もと代表だいひょうの麻原あさはら彰晃しょうこう、本名ほんみょう・松本まつもと智さとし津つ夫おっと元もと死刑しけい囚しゅうら13人にんは、一連いちれんの事件じけんで死刑しけい判決はんけつを受うけ、7年ねん前まえに執行しっこうされました。

一方いっぽう、3つの後継こうけい団体だんたいは今いまも活動かつどうを続つづけ、「無む差別さべつ大量たいりょう殺人さつじん行為こういに及およぶ危険きけん性せいがある」として団体だんたい規制きせい法ほうに基もとづき観察かんさつ処分しょぶんの対象たいしょうとされ、公安こうあん調査ちょうさ庁ちょうが現在げんざいも立ち入たちいり検査けんさなどで警戒けいかいしています。

事件じけんを知しらない世代せだいが増ふえるなか、被害ひがい者しゃや遺族いぞくの団体だんたいは国くにに対にたいし、未み曽そ有ゆうのテロを防ふせげなかった事件じけんの教訓きょうくんを伝つたえ続つづけることや、後継こうけい団体だんたいの監視かんしを求もとめています。

20日にちは東京とうきょう・千代田ちよだ区くの霞ケ関かすみがせき駅えきに献花けんか台だいが設置せっちされ、発生はっせい時刻じこくとほぼ同おなじ午前ごぜん8時じごろに関係かんけい者しゃが黙もくとうをささげます。

未み曽そ有ゆうのテロ地下鉄ちかてつサリン事件じけんとは

地下鉄ちかてつサリン事件じけんは、麻原あさはら彰晃しょうこう、本名ほんみょう・松本まつもと智さとし津つ夫おっと元もと死刑しけい囚しゅうが開ひらいたオウム真理教おうむしんりきょうによって起おこされました。

オウム真理教おうむしんりきょうは1989年ねんに宗教しゅうきょう法人ほうじんと認みとめられ、神秘しんぴ体験たいけんなどを通をつうじて若わかい信者しんじゃを急速きゅうそくに増ふやす一方いっぽう、お布施おふせや出家しゅっけなどをめぐって信者しんじゃの家族かぞくとトラブルが相次あいつぐようになりました。

1990年ねんに衆議院しゅうぎいん選挙せんきょで落選らくせんしてからは、ハルマゲドン、最終さいしゅう戦争せんそうが近ちかづいていると強調きょうちょうして信者しんじゃの危機きき感かんをあおり、サティアンと呼よばれる施設しせつで急速きゅうそくに武装ぶそう化かを進すすめました。

1994年ねんには最初さいしょの無む差別さべつ殺人さつじんとなる松本まつもとサリン事件じけんを起おこし、警察けいさつの強制きょうせい捜査そうさが迫せまる中なか、1995年ねん3月つき20日にちの午前ごぜん8時じごろ、都心としんを走はしる千代田ちよだ線せん、丸ノ内線まるのうちせん、日比谷ひびや線せんの3つの路線ろせんで猛毒もうどくのサリンをまきました。

通勤つうきん客きゃくなどで混こみ合あう時間じかん帯たいで、地下鉄ちかてつの駅えき周辺しゅうへんは異変いへんを感かんじて逃げ出にげだし、助たすけを求もとめる乗客じょうきゃくであふれました。

サリン中毒ちゅうどくの影響えいきょうで亡なくなった人ひとも含ふくめて14人にんが死亡しぼうし、負傷ふしょう者しゃはおよそ6300人にんにのぼる未み曽そ有ゆうのテロ事件じけんとなりました。

化学かがく兵器へいきのサリンは中毒ちゅうどくによってさまざまな症状しょうじょうを引き起ひきおこすため、被害ひがいに遭あった人ひとたちの中なかには、事件じけんから30年ねんがたつ今いまも体からだや心こころの不調ふちょうを訴うったえる人ひとが少すくなくありません。

被害ひがいに遭あった浅川あさがわ幸子さちこさんの遺族いぞく「同様どうようの事件じけんは起おこりうる」

浅川あさがわ幸子さちこさんは31歳さいの時とき、職場しょくばの研修けんしゅうに向むかうため、たまたま乗り合のりあわせた地下鉄ちかてつ丸ノ内線まるのうちせんの車内しゃないで地下鉄ちかてつサリン事件じけんに巻き込まきこまれ、脳のうの障害しょうがいで全身ぜんしんにまひが残のこり、長ながい会話かいわなども難むずかしくなりました。

25年ねんにわたる寝ねたきりの生活せいかつの末すえ、5年ねん前まえ、サリン中毒ちゅうどくによる低てい酸素さんそ脳症のうしょうのため56歳さいで亡なくなりました。

長年ながねん介護かいごしてきた兄あにの浅川あさがわ一雄かずおさん（65）によりますと、幸子さちこさんは、浅川あさがわさんの子こどもにランドセルを買かってあげるなど、家族かぞく思おもいな妹いもうとだったといいます。

幸子さちこさんが事件じけんの前まえに書かき綴つづった日記にっきを今いまも大切たいせつに保管ほかんしていますが、中身なかみを見みたことはありません。

浅川あさがわさんは「日記にっきには楽たのしかったことだけでなく、悩なやみなども書かかれている気きがして、開ひらくことはできません。でも、妹いもうとが生いきていた証あかしや、妹いもうとが培つちかってきたものが詰つまっている気きがします。事件じけんに遭あわなければ、妹いもうとも結婚けっこんをしていたかもしれないし、子こどもがいたかもしれない。全まったく違ちがう人生じんせいがあった」と丁寧ていねいに話はなしていました。

妹いもうとの日課にっかを引き継ひきつぎ、病状びょうじょうが回復かいふくしたときに読よんでもらおうと、浅川あさがわさんは妻つまとともに、幸子さちこさんへのメッセージを日記にっきに書き残かきのこしてきました。

ノート8冊さつ分ぶんほどに上のぼるといいます。

病院びょういんを退院たいいんし、在宅ざいたくでの介護かいごが始はじまる日ひには「幸みゆきちゃんの第だい2の人生じんせいのスタート、後ごを見みずにこれからを生いきていこう！オウムはゆるさないけど恨うらみ節ぶしの一生いっしょうなんてやりきれない」と書かきました。

浅川あさがわさんは「本当ほんとうは妹いもうとが元気げんきになって、私わたしたちが記しるした内容ないようを引き継ひきついでくれればよかったのですが、それはかないませんでした。妹いもうとはごはんを人ひとに食たべさせてもらい、自分じぶんのやりたいことができず、思おもいを伝つたえることもできなくなった。つらく、悲かなしかったと思おもいます」と話はなしていました。

教団きょうだんの後継こうけい団体だんたいが存続そんぞくし、事件じけんを知しらない世代せだいが増ふえるなか、浅川あさがわさんは記憶きおくの風化ふうかへの危機きき感かんがあるといいます。

一雄かずおさんは「同様どうようの事件じけんは起おこりうる。後継こうけい団体だんたいの信者しんじゃたちは地下鉄ちかてつサリン事件じけんは関係かんけいないと考かんがえているかもしれませんが、そうではない。きちんと見極みきわめる必要ひつようがあると思おもいます。事件じけんを知しらない若わかい人ひとたちには、事件じけんで亡なくなった人ひとや妹いもうとにどういうことが起おきたのかを見みつめてもらいたい」と話はなしています。

遺族いぞくたちの証言しょうげんのサイト立たち上あげインタビューや手記しゅきを紹介しょうかい

地下鉄ちかてつサリン事件じけん被害ひがい者しゃの会かいの代表だいひょう世話人せわにんをつとめる高橋たかはしシズヱさんと有志ゆうしのメンバーは3月つき、遺族いぞくたちの証言しょうげんなどを載のせたウェブサイトを立たち上あげました。

サイトは「地下鉄ちかてつサリン『テロ』事件じけんの記憶きおく」というタイトルで、遺族いぞくや被害ひがい者しゃ、それにオウム真理教おうむしんりきょうの事件じけんに関かかわった弁護士べんごしなどのインタビューや手記しゅきを紹介しょうかいしています。

事件じけんの概要がいようや年表ねんぴょうなども掲載けいさいされています。

高橋たかはしさんは「今後こんごもコンテンツを増ふやしていきたいと思おもっている。被害ひがい者しゃ自身じしんのことばを残のこしていきたい」と話はなしています。

オウム真理教おうむしんりきょう後継こうけいの3団体だんたい信者しんじゃはあわせて約やく1600人にん

オウム真理教おうむしんりきょうは、事件じけん後ご「アレフ」と名前なまえを変かえ、信者しんじゃどうしの対立たいりつが深ふかまるなどして「ひかりの輪わ」「山田やまだらの集団しゅうだん」の3つに分わかれました。

これらの3団体だんたいは「無む差別さべつ大量たいりょう殺人さつじん行為こういに及およぶ危険きけん性せいがある」として団体だんたい規制きせい法ほうに基もとづき観察かんさつ処分しょぶんの対象たいしょうとされ、信者しんじゃや資産しさんなどについて国くにに定期ていき的てきに報告ほうこくすることが求もとめられているほか、公安こうあん調査ちょうさ庁ちょうによる施設しせつへの立ち入たちいり検査けんさなどが実施じっしされています。

公安こうあん調査ちょうさ庁ちょうによりますと、信者しんじゃの数かずは2025年ねん1月つきの時点じてんで3団体だんたいあわせておよそ1600人にんだということです。

このうちアレフについては、公安こうあん審査しんさ委員いいん会かいが、20歳さい未満みまんの信者しんじゃや資産しさんの一部いちぶを報告ほうこくせず、状況じょうきょうを把握はあくすることが困難こんなんだなどとして、2年ねん前まえから「再発さいはつ防止ぼうし処分しょぶん」を継続けいぞくして適用てきようしています。

これによって、今いまはおよそ20の教団きょうだん施設しせつのうち16か所かしょの使用しようなどが禁止きんしされています。

アレフは不服ふふくとして処分しょぶんの取り消とりけしを求もとめる訴うったえを起おこしましたが、1審しんで退しりぞけられました。

公安こうあん調査ちょうさ庁ちょうはアレフの施設しせつへの立ち入たちいり検査けんさで「サリンはオウムが作つくったものではない」などとする資料しりょうを確認かくにんし、陰謀いんぼう論ろんを展開てんかいして事件じけんへの関与かんよを否定ひていしていると説明せつめいしています。

また公安こうあん調査ちょうさ庁ちょうは、アレフは国くにに報告ほうこくしていない資産しさんを2024年ねん2月つき時点じてんで少すくなくとも7億おく円えん保有ほゆうしているとしています。

具体ぐたい的てきには、アレフが実質じっしつ的てきに経営けいえいする会社かいしゃが行おこなうカルチャー教室きょうしつ、雑貨ざっかの販売はんばいやヨガセミナー、それにしょうゆの製造せいぞう、食品しょくひんの販売はんばいなどの事業じぎょう収益しゅうえきを報告ほうこくしていないとしています。

アレフはNHKの取材しゅざいに対にたいし「団体だんたい規制きせい法ほうが求もとめる事項じこうについて虚偽きょぎの報告ほうこくはしていない。会員かいいんについても適法てきほう、適正てきせいに報告ほうこくしている。宗教しゅうきょう団体だんたいには厳きびしい守秘しゅひ義務ぎむがあり、会員かいいんとしての自覚じかくを欠かく未成年みせいねん者しゃの氏名しめいなどは報告ほうこくすることができない」としています。

後継こうけい団体だんたいがコメント

事件じけんから30年ねんとなることを受うけ、オウム真理教おうむしんりきょうの後継こうけい団体だんたい「アレフ」と「ひかりの輪わ」がそれぞれホームページでコメントを出だしました。

アレフは「オウム真理教おうむしんりきょうの流ながれを受け継うけつぐ団体だんたいとして事件じけんを重おもく受け止うけとめ、立場たちばを問とわず、一連いちれんの事件じけんに関係かんけいして亡なくなられたすべての人ひとたちに対にたいして深ふかく哀悼あいとうの意いを捧ささげ、改あらためてご冥福めいふくをお祈おいのりいたします」としています。

また、ひかりの輪わは「事件じけん当時とうじオウム信者しんじゃだった者ものたち一同いちどうは、犠牲ぎせいになられた14名めいの皆様みなさまのご冥福めいふくをお祈おいのりするとともに、心身しんしんに傷きずを負おわれた多おおくの方々かたがたが1日にちも早はやく癒いやされるよう祈念きねんし、当時とうじのオウム教団きょうだんに関かかわった者ものとして、あらためて皆様みなさまに深ふかくお詫おわび申し上もうしあげます」としています。

山梨やまなし県警けんけい後継こうけい団体だんたいが活動かつどう続つづけることなど伝つたえるチラシ配くばる

山梨やまなし県けんの旧きゅう上うえ九きゅう一色いっしょく村むら、今いまの富士ふじ河口湖かわぐちこ町まちの富士ふじヶ嶺みね地区ちくには、かつて教団きょうだんの拠点きょてんとして多おおくの施設しせつが建たてられ、中なかでは猛毒もうどくの「サリン」が製造せいぞうされていました。

事件じけんから30年ねんになるのを前まえに、山梨やまなし県警けんけいは19日にち、県内けんない11か所かしょで啓発けいはつ活動かつどうを行おこないました。

このうちJR甲府こうふ駅前えきまえでは通勤つうきんや通学つうがくで駅えきを利用りようする人ひとに「事件じけんを忘わすれないでください」と呼よびかけながら、後継こうけい団体だんたいが活動かつどうを続つづけていることなどを伝つたえるチラシを手渡てわたしていました。

高校こうこう2年生ねんせいの娘むすめがいる50代だいの女性じょせいは「当時とうじ、両親りょうしんが東京とうきょうに出張しゅっちょうに行いっていたので心配しんぱいしたのを覚おぼえていて、30年ねんもたったのかという気持きもちです。娘むすめにも事件じけんのことを伝つたえたいと思おもいます」と話はなしていました。