業種ぎょうしゅによって二に極きょく化か鮮明せんめい “K字じ型がた”に 昨年度さくねんど企業きぎょう決算けっさん

SMBC日興にっこう証券しょうけんのまとめによりますと、今月こんげつ13日にちまでに決算けっさんを発表はっぴょうした1033社しゃのうち、50％にあたる519社しゃが、最終さいしゅう損益そんえきで「増益ぞうえき」を確保かくほしました。

アメリカや中国ちゅうごくへの輸出ゆしゅつが回復かいふくしたことで、電機でんきや自動車じどうしゃ、それに半導体はんどうたい関連かんれんなどの「製造せいぞう業ぎょう」では増益ぞうえきが目立めだちました。また、テレワークが進すすんだことなどで「情報じょうほう・通信つうしん業ぎょう」も好調こうちょうでした。

これに対にたいし「減益げんえき」となった企業きぎょうは35％にあたる370社しゃ、「赤字あかじ」となった企業きぎょうは13％にあたる135社しゃでした。「非ひ製造せいぞう業ぎょう」は、航空こうくうや鉄道てつどうのほか、外食がいしょくなどで厳きびしい決算けっさんが相次あいつぎました。

新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうが長期ちょうき化かする中なか、輸出ゆしゅつの増加ぞうかなどの追い風おいかぜを受うけた業種ぎょうしゅと、移動いどうの制限せいげんや時短じたん営業えいぎょうの影響えいきょうを受うけた業種ぎょうしゅとの二に極きょく化かが鮮明せんめいになっています。

SMBC日興にっこう証券しょうけんの安田やすだ光ひかり 株式かぶしきストラテジストは「製造せいぞう業ぎょうと非ひ製造せいぞう業ぎょうで回復かいふくのペースが異ことなり、アルファベットの『K』字じのようになっている。今年度こんねんどの業績ぎょうせきについては、ワクチン接種せっしゅがどこまで広ひろがるかに加くわえ、アメリカと中国ちゅうごくの対立たいりつが企業きぎょうの生産せいさんにどう影響えいきょうしてくるかが注目ちゅうもくされる」と指摘してきしています。

製造せいぞう業ぎょうは、アメリカや中国ちゅうごくの景気けいき回復かいふくを背景はいけいに輸出ゆしゅつが増ふえたことなどから、増益ぞうえきが目立めだちました。

このうち、トヨタ自動車とよたじどうしゃは、グループ全体ぜんたいの最終さいしゅう利益りえきが10％増ふえて2兆ちょう2452億おく円えんと、前まえの年度ねんどに続つづいて2兆ちょう円えんを上回うわまわりました。

半導体はんどうたい製造せいぞう装置そうちメーカー最大さいだい手しゅの東京とうきょうエレクトロンは、本業ほんぎょうのもうけを示しめす営業えいぎょう利益りえきが過去かこ最高さいこうだった上うえ、最終さいしゅう利益りえきも2429億おく円えんと31％増ふえました。

いわゆる「巣すごもり需要じゅよう」を取り込とりこんだ企業きぎょうも最終さいしゅう利益りえきが大幅おおはばに伸のびました。

ソニーグループが前まえの年度ねんどの2倍ばいにあたる1兆ちょう1717億おく円えん、任天堂にんてんどうが前まえの年度ねんどより85.7％多おおい4803億おく円えんと、いずれも過去かこ最高さいこうを記録きろくしました。自宅じたくで過すごす時間じかんが増ふえ、家庭かてい用ようゲーム機きやゲームソフトの販売はんばいが好調こうちょうでした。

このほか、ソフトバンクグループは、最終さいしゅう利益りえきが4兆ちょう9879億おく円えんに上のぼりました。投資とうし先さき企業きぎょうの新規しんき上場じょうじょうや株価かぶかの値上ねあがりで利益りえきが押し上おしあげられ、国内こくないの上場じょうじょう企業きぎょうとしてはこれまでで最高さいこうとなりました。

一方いっぽう、新型しんがたコロナの影響えいきょうが長期ちょうき化かする中なか、厳きびしい決算けっさんとなった企業きぎょうも相次あいつぎました。

航空こうくう大手おおては、日本にっぽん航空こうくうが経営けいえい破綻はたん後ごに株式かぶしきを再さい上場じょうじょうした2012年ねん以降いこうでは初はじめて2866億おく円えんの最終さいしゅう赤字あかじとなったほか、ANAホールディングスも過去かこ最大さいだいの4046億おく円えんの最終さいしゅう赤字あかじを計上けいじょうしました。

鉄道てつどうは、JR東日本ひがしにっぽんの最終さいしゅう的てきな損益そんえきが5779億おく円えんの赤字あかじでした。通期つうきの決算けっさんで最終さいしゅう赤字あかじとなるのは、1987年ねんの旧きゅう国鉄こくてつの民営みんえい化か後ご初はじめてです。

このほかのJR5社しゃと、全国ぜんこくの主おもな私鉄してつ15グループも、すべて最終さいしゅう赤字あかじに陥おちいりました。

また、大手おおてデパートの三越みつこし伊勢丹いせたんホールディングスは、休業きゅうぎょうや営業えいぎょう時間じかんの短縮たんしゅくが続つづいたことで410億おく円えんの最終さいしゅう赤字あかじでした。

東京とうきょうディズニーランドと東京とうきょうディズニーシーを運営うんえいするオリエンタルランドも最終さいしゅう的てきな損益そんえきが541億おく円えんの赤字あかじと、通期つうきの決算けっさんとしては1996年ねんの上場じょうじょう以来いらい、初はじめての最終さいしゅう赤字あかじとなりました。

ただ、経済けいざい分野ぶんやでも対立たいりつが懸念けねんされるアメリカと中国ちゅうごくの関係かんけいが今後こんごの業績ぎょうせきに影響えいきょうしないか、注視ちゅうしする企業きぎょうもあります。

愛知あいち県けん小牧おまき市しにある従業じゅうぎょう員いんおよそ4400人にんの部品ぶひんメーカー「CKD」は、半導体はんどうたい製造せいぞう装置そうち向むけの部品ぶひんを作つくっています。

通信つうしん規格きかく「5G」の普及ふきゅうやテレワークの拡大かくだいを背景はいけいに、半導体はんどうたいが使つかわれる通信つうしん設備せつびなどの需要じゅようが増ふえ、半導体はんどうたい製造せいぞう装置そうちメーカーの設備せつび投資とうしが伸のびていて、この会社かいしゃでは主力しゅりょくの半導体はんどうたい関連かんれん部品ぶひんの売り上うりあげが前まえの年度ねんどより2割わり弱じゃく伸のびました。

今月こんげつ13日にち発表はっぴょうした1年間ねんかんの決算けっさんでは、最終さいしゅう的てきな利益りえきが前まえの年度ねんどを4割わり上回うわまわって増収ぞうしゅう増益ぞうえきとなり、今年度こんねんどの業績ぎょうせき予想よそうも、過去かこ最高さいこうの売り上うりあげを見込みこんでいます。

一方いっぽう、企業きぎょうは新型しんがたコロナウイルスとは別べつの懸念けねん材料ざいりょうに気きをもんでいます。

アメリカのバイデン政権せいけんが、中国ちゅうごくに頼たよらない重要じゅうよう資源しげんの供給きょうきゅう網もう、いわゆるサプライチェーンの再さい構築こうちくを命めいじ、対象たいしょうに半導体はんどうたいも含ふくまれているためです。

会社かいしゃでは、中国ちゅうごく向むけの輸出ゆしゅつ規制きせいが強化きょうかされる事態じたいに進展しんてんすれば、売り上うりあげにも影響えいきょうが出でる可能かのう性せいがあるとして、米べい中ちゅう関係かんけいの行方ゆくえを注視ちゅうししています。

「CKD」の梶本かじもと一典かずのり社長しゃちょうは、「去年きょねん11月つきごろから、注文ちゅうもんが多おおい状態じょうたいが持続じぞくしていてこれまでにないほど好調こうちょうの波なみが来きている。一方いっぽうで、米べい中ちゅうの貿易ぼうえき摩擦まさつが進すすんで規制きせいが生しょうじると、自社じしゃでもサプライチェーンを使つかえなくなる可能かのう性せいがあり、リスクを感かんじている。先行さきゆきが見通みとおせない中なかでも、対応たいおうできるようにしていきたい」と話はなしています。