“小ちいさい人ひとを信しんじて見守みまもってほしい” 高見たかみのっぽさんの思おもい

当初とうしょ、のっぽさんは「高見こうけん映うつ」という芸名げいめいで活動かつどうしていましたが、「できるかな」が終了しゅうりょうしたあとも「ノッポさん」のイメージで見みられることが多おおかったため、2005年ねんごろに「高見こうけんのっぽ」という芸名げいめいにみずから変かえたということです。

その理由りゆうを古家ふるやさんは本人ほんにんから聞きいていたといいます。

「『子こ“ども”なんてひとからげにはできない。大人おとなだって大人おとな“ども”なんて言いわれたら嫌いやでしょ』と話はなしていました」。

のっぽさんは著書ちょしょの中なかで次つぎのように記しるしています。

「子こどもだからといって、“経験けいけんも浅あさい、物事ものごとをよくわかっていない存在そんざい”とは、これっぽっちも思おもっていないからですよ/小ちいさい人ひとたちというのは、実じつにいろいろなことが分わかっているのです。大人おとなが思おもうよりも、いやおそらく大人おとなよりも、ずっとずっと賢かしこいんですから」。

（「ノッポさんの『小ちいさい人ひと』となかよくできるかな？」より）

また、古家ふるやさんはのっぽさんが「小ちいさい人ひと」に話はなしかけていた姿すがたが印象いんしょうに残のこっているといいます。

（古家ふるやさん）

「『僕ぼくはのっぽと言いいますが、君きみのお名前なまえを教おしえていただけませんでしょうか』と話はなしかけるんです。言いわれた子こは、顔かおを真っ赤まっかにしながらも必死ひっしに自分じぶんの名前なまえを言いうものですから、そばにいた親おやが驚おどろいていました。泣ないている赤あかちゃんに『どうされましたか。一生懸命いっしょうけんめいおしゃべりしていますね。眠ねむたいですか。どうぞどうぞお休やすみください』なんて優やさしく話はなしかけていると、赤あかちゃんもお母おかあさんもにこにこになる。そんな奇跡きせきみたいな場面ばめんがのっぽさんといるとたくさんありました」。

古家ふるやさんによると「できるかな」の工作こうさくは子こどもが作つくるのには難むずかしいものもあったということです。

（古家ふるやさん）

「番組ばんぐみは工作こうさくの手順てじゅんを教おしえるのではなく、ものを作つくる楽たのしさを伝つたえ、『やってみたい』という子こどものやる気やるきを引き出ひきだすことだったと聞きいています。だから子こどもたちが番組ばんぐみと同おなじように作つくってうまくいかないことがあったとしても、のっぽさんは『うまくいかない経験けいけんがすごく大事だいじで、大人おとなは“失敗しっぱいを保証ほしょうする”ことが大事だいじ』と常々つねづね言いってました」

失敗しっぱいしたら、次つぎに道具どうぐを使つかう際さいの力ちから加減かげんも覚おぼえられるし、工夫くふうも生うまれる。

失敗しっぱいを積み重つみかさねて人ひとは成長せいちょうする。

のっぽさんには、大人おとなが先回さきまわりをして子こどもの失敗しっぱいを回避かいひさせるのではなく、「もっと小ちいさい人ひとを信しんじて見守みまもってほしい」という思おもいがあったそうです。

番組ばんぐみは15分間ふんかん、ほぼノンストップで収録しゅうろくして放送ほうそうしていたため、工作こうさくに取り組とりくんでいるときののっぽさんはいつも一生懸命いっしょうけんめいで表情ひょうじょうは真剣しんけんそのものでした。

そして、うまくできたときは、心こころからうれしそうな笑顔えがおを浮うかべていました。

みずから手てがけたその歌詞かしは“小ちいさい人ひと”への応援おうえん歌うたでした。

「とべとべ はねをひろげ

　おおぞらの むこうへ

　おそれることは ない

　まだみぬ せかいへ

　いつのまにか ときはすぎ

　わかきひは とおくなるよ

　ホラ まごたちよ とんでおくれ

　おじいさんの ねがいさ

　まちかどの ちいさな こうえん

　かたすみの くさかげに

　ホラ まごたちを まえに あつめて

　おじいさんのグラスホッパー

　おじいさんのグラスホッパー！」

（「グラスホッパー物語ものがたり」より抜粋ばっすい）

「できるかな」を見みて育そだった人ひとは、のっぽさんが声こえ高たからかに歌うたう姿すがたに驚おどろいた人ひとも少すくなくありませんでした。

その歌詞かしに励はげまされたと全国ぜんこくから共感きょうかんの声こえが寄よせられ、「みんなのうた」としては異例いれいの10か月かげつ間かんにわたるロングラン放送ほうそうとなりました。

（古家ふるやさん）

「のっぽさんは、日頃ひごろから『僕ぼくは風かぜのようにいなくなるからね』と話はなしていました。人間にんげんは誰だれでも死しんでいく動物どうぶつだから、あまり残念ざんねんがらないでほしい、というのがのっぽさんの考かんがえでした。今回こんかいは突然とつぜんの報告ほうこくで『驚おどろかせてごめんね』と言いってるのではないでしょうか。そんな優やさしさがのっぽさんなんです」

のっぽさんが「小ちいさい人ひと」に寄よせた思おもいは、どこまでも優やさしいものでした。

そして、その優やさしさは「かつて小ちいさかった人ひと」にも向むけられていました。