アメリカの有力紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は今月6日、反転攻勢を進めるウクライナにとってメリトポリの奪還が最優先の目標の1つだと多くの専門家がみていると指摘しています。
メリトポリには、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミアにつながるロシアにとって重要な補給路があります。
このためウクライナ軍がメリトポリを奪還することでロシア側の補給路を遮断することができ、ザポリージャ州や隣接するヘルソン州の地域の奪還に向けても大きな影響を与えるとみられます。
また、現地メディアなどによりますと、メリトポリではロシア側に協力している関係者を標的にした爆破事件なども起きていて、メリトポリは、ウクライナの市民らによるロシアへの抵抗運動の拠点にもなっているということです。
一方、戦況の分析を続けているイギリス国防省は、ロシア側は、ザポリージャ州でおよそ120キロにわたって3重にもなる大規模な防衛線を築いていると分析していて、ウクライナ側の反転攻勢への警戒を強めているとみられます。
このなかでプリゴジン氏は「われわれの部隊の要員が減ったため、陣地の側面をロシア軍に引き渡したが軍はそこでも失敗した。いまのワグネルには包囲されるリスクが出てきた」としています。 そして「ロシアの正規軍の部隊はいまやバフムトを去り、市内に残っているのはワグネルだけだ」とした上で、「もし十分な弾薬がなければ、ウクライナ軍によってワグネルは全滅するだろう」と危機感を示しました。 プリゴジン氏は9日、弾薬の一部をロシア国防省から受け取ったとしてバフムトからの撤退表明を撤回し戦闘を続ける意向を示していましたが、今回あらためてみずからの部隊が置かれた厳しい状況について明らかにしたものです。
その上で「反転攻勢を成功させるには、適切な準備を行い、すべての条件を整えておくことが求められる」として反転攻勢を始めるにあたっては、欧米側から供与される兵器や後方支援の態勢などをみながら慎重に判断されるという見方を示しました。 また、サモシ氏は、冬のあと南部などで土壌がぬかるんでいることが反転攻勢の時期に影響すると指摘されていることについて「数週間もすれば温かく乾燥した気候になり、土壌の問題は解決される。11月ごろまでは作戦を継続できる」と述べました。 一方、反転攻勢が行われる地域については、住宅などが集まる東部のドンバス地域よりも、南部のザポリージャ州やクリミアのほうが平野が広がるなど地形的にも攻撃を仕掛けやすいとした上で「次の攻勢への起点を作っていくという意味でも南部の方が戦略的に重要だ」と指摘しました。 そして、ロシアが一方的に併合したクリミアの軍港都市セバストポリにある燃料の貯蔵施設で先月起きた火災などについて、ウクライナ側が反転攻勢を優位に進めるための作戦の一部であるという見方を示し、「ロシアが有効な防衛作戦をできないようにするための準備を進めている」と分析しました。
ただ、前線の状況については「まだ地面がぬかるんでいて、農地には大きな水たまりもあり、この数週間は大規模な戦闘に必要な条件が整っていないと伝えられた」と述べました。 一方、ドイツをはじめヨーロッパ各国がウクライナに供与しているドイツ製の主力戦車「レオパルト2」についてブロイヤー総監は「戦闘で使われているとの説明を受けた」と述べ、ウクライナ軍が実戦に投入していると指摘しました。
これについて、ウクライナの原子力発電公社「エネルゴアトム」は10日、ロシア軍が占拠するザポリージャ原子力発電所がある地域からおよそ3100人が移動を強いられるという情報があるとSNSで明らかにしました。 このうち2700人がザポリージャ原発の従業員やその家族で「熟練した人材が壊滅的に不足し、原発の運転ができなくなる」として強い危機感を示しました。 そして、原発の安全運転に向け、ウクライナ国内にいる専門家など必要な人材を集めるため、あらゆる手段を講じているとしています。 IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長も6日、声明で「原発で働くほとんどのスタッフが住む地域で住民の移動が開始されたという情報がある。深刻な原発事故の脅威を防ぐためすぐに行動しなければならない」として、懸念を示しています。
その上で「われわれの計画をすべて知っているものは誰もいない。なぜなら、計画はまだ承認されていないからだ」と述べ、いくつかの選択肢を検討している段階だと明らかにしました。 ウクライナ国内などでは、反転攻勢への期待が高まっていますが、ウクライナ政府と軍としては、確実に成果を得るためにも慎重に準備を進めているものとみられます。 反転攻勢をめぐってはレズニコフ国防相が先月末「全体としてわれわれの準備はできている」と述べるなど早ければ今月にも始まるという見方が出ています。
ワグネル代表プリゴジン氏 “弾薬がなければ全滅“ 危機感示す
軍事専門家“ウクライナ反転攻勢 初期段階が重要”
ドイツ軍トップ ウクライナ軍総司令官などと会談
ウクライナ原発公社 “人材が不足 原発運転できなくなる”
ウクライナ高官 “反転攻勢 計画は検討段階”
