日本新聞: 「ChatGPT」で模擬裁判のイベント未来の司法考える東京大学

未来みらいの司法しほうの形かたちを考かんがえるきっかけにしてほしいと、対話たいわ型がたAI「ChatGPT」を裁判官さいばんかん役やくとした、模擬もぎ裁判さいばんのイベントが東京とうきょう大学だいがくで行おこなわれ、判決はんけつの行方ゆくえに注目ちゅうもくが集あつまりました。

このイベントは公正こうせいで中立ちゅうりつな裁さばきが求もとめられる裁判さいばんで、裁判官さいばんかんが「人間にんげん」ではなく「機械きかい」だった場合ばあい、複雑ふくざつな法律ほうりつ判断はんだんの可否かひや機械きかいが人ひとを裁さばく未来みらいを受け入うけいれられるのかといったことについて問題もんだい提起ていきするために、東京とうきょう大学だいがくの学生がくせいが中心ちゅうしんとなって企画きかくし、会場かいじょうの安田やすだ講堂こうどうには多おおくの人ひとが傍聴ぼうちょうに訪おとずれました。

模擬もぎ裁判さいばんのシナリオは、元もと交際こうさい相手あいてから嫌いやがらせを受うけた女性じょせいが、現在げんざいの交際こうさい相手あいてに相談そうだんしたところ元もとの交際こうさい相手あいてを殺害さつがいし、女性じょせいも殺害さつがいに共謀きょうぼうしたとして殺人さつじんの罪つみに問とわれるという、架空かくうの事件じけんを想定そうていし、検事けんじや弁護士べんごしなどは人間にんげんが務つとめ、裁判官さいばんかん役やくを対話たいわ型がたのAI「ChatGPT」が担にないました。

まず書記官しょきかん役やくから「この法廷ほうていでは裁判さいばんの正確せいかく性せいと迅速じんそく性せいを高たかめるために、人工じんこう知能ちのうを裁判官さいばんかんとしています」と説明せつめいがなされ、審理しんりが始はじまりました。

そして、被告ひこくの女性じょせいの弁護士べんごし役やくが「殺害さつがいを依頼いらいしたり、殺害さつがい計画けいかくを共有きょうゆうしたりしたことはなく、共謀きょうぼうして被害ひがい者しゃを殺害さつがいしたとの検察けんさつの主張しゅちょうは全まったくの誤あやまり」などとして無罪むざいを主張しゅちょうし、検察けんさつ側がわは、被告ひこくの友人ゆうじんの証言しょうげんなどから「元もと交際こうさい相手あいての殺害さつがいを企図きとし、交際こうさい相手あいてと共謀きょうぼうして、これをなそうとしたことは明あきらか」などと、互たがいの主張しゅちょうを展開てんかいしました。

審理しんり中ちゅうはスクリーンにCGで映し出うつしだされたAI裁判官さいばんかんも「殺害さつがいについて具体ぐたい的てきな計画けいかくや手段しゅだんを提案ていあんしているところを聞きいたことはありますか」などと、合成ごうせいされた音声おんせいで証人しょうにんなどに質問しつもんしていました。

そして、AI裁判官さいばんかんが「主文しゅぶん。被告ひこく人じんは、殺人さつじん罪ざいの共犯きょうはんとは認みとめられないため、無罪むざいとする」と判決はんけつを言い渡いいわたし、「被告ひこくが憎悪ぞうおの感情かんじょうを持もっていたことは事実じじつであるが、具体ぐたい的てきな殺害さつがい計画けいかくや共謀きょうぼうが確定かくてい的てきに立証りっしょうされたわけではない」などと判決はんけつ理由りゆうを読み上よみあげ、模擬もぎ裁判さいばんは閉廷へいていしました。

イベントを主催しゅさいした有志ゆうしの学生がくせい団体だんたいの代表だいひょうで、法学部ほうがくぶ3年ねんの岡本おかもと隼はやぶさ一いちさんは「民主みんしゅ主義しゅぎ社会しゃかいに生いきる市民しみん一いち人にん一いち人にんに未来みらいの司法しほうの形かたちを自分じぶん事ごととして考かんがえてほしいというのがねらいです。ネットも含ふくめ予想よそう以上いじょうに多おおくの人ひとたちが訪おとずれ、立ち入たちいった議論ぎろんをする人ひともいて関心かんしんが集あつまったという点てんでは成功せいこうだったと思おもいます。今後こんごも最新さいしん技術ぎじゅつに触ふれながら勉学べんがくを深ふかめていきたい」と話はなしていました。

模擬もぎ裁判さいばんの傍聴ぼうちょう者しゃからは

模擬もぎ裁判さいばんを傍聴ぼうちょうした40代だいの女性じょせいは「AI裁判官さいばんかんの途中とちゅうの質問しつもんは人間にんげんだったら、もう少もうすこし違ちがうことを尋たずねていたのではないかと思おもいました。AIだと公平こうへいというか、見た目みためなど、人間にんげんなら考慮こうりょしてしまう、影響えいきょうされてしまうところが、影響えいきょうされないという利点りてんもあるのかなと思おもいました」と話はなしていました。

また、別べつの50代だいの男性だんせいは「結果けっかは無罪むざいでしたが人間にんげんの裁判官さいばんかんだったら有罪ゆうざいだったのではと思おもいました。また、機械きかいにはブラックボックスなところがあると思おもうので、判断はんだんを納得なっとくさせるという点てんでは人間にんげんに委ゆだねたほうがいいと思おもいます。そうでないと、いつか自分じぶんが被告ひこくになった時ときに最後さいごまで納得なっとくできないまま疑問ぎもんが残のこると思おもいます」と話はなしていました。

さらに、別べつの50代だいの男性だんせいは「人ひとの判決はんけつと機械きかいの判決はんけつを両方りょうほう比較ひかくできたらおもしろいと思おもいました。公平こうへい性せいなら機械きかいのほうが人間にんげんよりも上うえになると思おもいますが、刑事けいじ裁判さいばんには心情しんじょう的てきなものが強つよいため、現時点げんじてんでは刑事けいじ裁判さいばんは人間にんげんのほうが適切てきせつにできると思おもいました」と話はなしていました。

判決はんけつ前まえのアンケートは

判決はんけつが言い渡いいわたされる直前ちょくぜんには、模擬もぎ裁判さいばんを傍聴ぼうちょうした人ひとたちに対にたいして、「有罪ゆうざいか無罪むざいか」を尋たずねるオンラインのアンケートも実施じっしされ、実行じっこう委員いいん会かいによりますと、回答かいとうした864人にんのうち、「無罪むざい」が559人にん、「有罪ゆうざい」が305人にんだったということです。