レバノン政府はこれまでの死者が2000人を超えたと発表し、パレスチナのガザ地区に加え、レバノンでも犠牲者が増え続けています。
イランが今月1日、ヒズボラの最高指導者の殺害などへの報復として、イスラエルに大規模なミサイル攻撃を行ったことを受け、イスラエルは対抗措置をとる構えです。
アメリカのバイデン大統領は、4日、記者会見で「イスラエルはどのような攻撃をするのかまだ結論を出していない。協議中だ。イスラエルはすぐには決定しないだろう」と述べ、イスラエル側で検討が続いているという認識を示しました。
一方、イスラエル軍は連日、レバノンの首都ベイルートなどへの空爆を続けていて、5日未明にはベイルート郊外の一部の住民に対し、近くにヒズボラの施設があるとして直ちに退避するようSNSで一方的に通告しました。
また、地上侵攻に踏み切ったレバノン南部でも攻勢を強めていて、イスラエル軍は5日、病院に隣接するモスクがヒズボラの活動拠点になっていると主張し、空爆を行ったと発表しました。
ヒズボラは去年10月にガザ地区で戦闘が始まると、イスラム組織ハマスに連帯を示しイスラエル軍と攻撃の応酬を続けていて、レバノン政府は4日、イスラエル側の攻撃でこれまでに2000人以上が死亡したと発表しました。
今月7日で戦闘が始まって1年となるガザ地区では、現地の保健当局によりますと、これまでに4万1800人以上が死亡していて、戦闘が拡大するなか、レバノンでも犠牲者が増え続けています。
イランの核関連施設とは
イスラエルがイランへの対抗措置として攻撃する可能性があると懸念されているのが、核関連施設です。
2018年、イランが核開発を制限する見返りに国際社会が制裁を解除する取り決めである「核合意」から、アメリカのトランプ前政権が一方的に離脱すると、イランは対抗して核開発を加速させました。
特にイラン中部のナタンズとフォルドゥにあるウラン濃縮施設では、濃縮度を核合意で定められた上限の3.67%を大きく超える60%まで高めたウランの製造を進めています。
こうした施設についてイスラエルは以前から、核兵器の材料となる濃縮度90%以上の高濃縮ウランの製造を阻止するためとして、軍事攻撃を辞さない構えを見せてきました。
フォルドゥの施設は山岳地帯の地下80メートルほどに設置されているとみられ、イスラエルからの空爆を避けるために、地下深くに建設されたとも指摘されています。
イラン中部には、イスファハンの郊外に核燃料を製造・加工する施設などもあります。
また、イラン西部のホンダブにある実験用の重水炉は、使用済み核燃料から、核兵器の材料となるプルトニウムを抽出しやすいことから軍事利用を疑われましたが、イラン側は医療用の放射性物資を製造することが目的だとしています。
このほか、イラン南部のブシェールに国内唯一の原子力発電所があります。
イランの石油生産施設とは
イスラエルが、イランからのミサイル攻撃への対抗措置をとる構えを示す中、今月3日、アメリカのバイデン大統領は「イランの石油生産施設への攻撃を支持するか」と問われ「協議中だ」と述べました。
石油生産施設が攻撃の対象となる可能性が否定できないとの受け止めが広がり、国際的な原油の先物価格は、一時、およそ1か月ぶりの高値水準となりました。
イギリスのエネルギー研究所の報告書によりますと、イランは去年、石油の生産量で世界5位、シェアにして4.8%を占める世界屈指の産油国です。
油田はイラクとの国境に近い南西部からペルシャ湾にかけての地域に集中していて、イラン石油省によりますと、その数はおよそ70に上ります。
この中には、アメリカがイランに対する制裁を強める中、日本の石油開発会社が権益を手放したアザデガン油田もあります。
また、首都テヘランの郊外や中部イスファハンなど国内各地に製油所があるほか、ペルシャ湾には輸出のための大規模な積み出し港が整備されています。
アメリカによる経済制裁下でも中国など一部の国への輸出は継続されていて、その収入は国家財政の根幹を支え、イランが地域で影響力を振るう源泉ともなっています。
日本もかつては多くの原油をイランから輸入していましたが、アメリカのトランプ前政権がイランへの経済制裁を再開して以降、輸入を停止しています。