不正ふせい輸出ゆしゅつえん罪えんざい事件じけん 警察官けいさつかんの証人しょうにん尋問じんもん始はじまる 民事みんじ裁判さいばん2審しん

横浜よこはま市しの化学かがく機械きかいメーカー「大川原おおかわら化工かこう機き」の社長しゃちょうなど幹部かんぶ3人にんは2020年ねん、軍事ぐんじ転用てんようが可能かのうな製品せいひんを中国ちゅうごくなどに不正ふせいに輸出ゆしゅつした疑うたがいで逮捕たいほ、起訴きそされましたが、その後そのご、起訴きそが取り消とりけされる異例いれいの措置そちがとられました。

社長しゃちょうらが国くにと東京とうきょう都とを訴うったえた裁判さいばんで1審しんの東京とうきょう地方ちほう裁判所さいばんしょは去年きょねん12月つき、捜査そうさの違法いほう性せいを認みとめて国くにと都とに賠償ばいしょうを命めいじましたが、双方そうほうが控訴こうそしています。

9日にち、2審しんの東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょで、当時とうじ警視庁けいしちょう公安こうあん部ぶで事件じけんを担当たんとうした現職げんしょくの警察官けいさつかん3人にんへの証人しょうにん尋問じんもんが行おこなわれ、午前ごぜん中ちゅうはメーカーの元もと顧問こもん、相嶋あいじま静夫しずおさんを取り調とりしらべた警察官けいさつかんが出廷しゅっていしました。

相嶋あいじまさんは勾留こうりゅう中ちゅうにがんが見みつかり、無実むじつが明あきらかになる前まえに亡なくなっていて、原告げんこくの1人にん、相嶋あいじまさんの息子むすこから「謝罪しゃざいはないのか」と問とわれると、警察官けいさつかんは「謝罪しゃざいではないが、亡なくなったことにお悔くやみ申し上もうしあげる。ただ、捜査そうさ自体じたいは適正てきせいだったと考かんがえている」と述のべました。

午後ごごには1審しんで違法いほうと認定にんていされた取り調とりしらべに立ち会たちあった警察官けいさつかんと輸出ゆしゅつ規制きせいを担当たんとうする経済けいざい産業さんぎょう省しょうとの調整ちょうせいをした警察官けいさつかんへの尋問じんもんが行おこなわれ、どのような証言しょうげんをするのか、注目ちゅうもくされます。

2審しんの争点そうてん(1) 輸出ゆしゅつ規制きせい品ひんを定さだめた省令しょうれいの解釈かいしゃく

2審しんで争点そうてんの1つとなっているのが、どのような噴霧ふんむ乾燥かんそう機きが輸出ゆしゅつ規制きせいの対象たいしょうになるかを定さだめた、経済けいざい産業さんぎょう省しょうの省令しょうれいの解釈かいしゃくについてです。

経済けいざい産業さんぎょう省しょうの省令しょうれいでは、機械きかいの内部ないぶを「滅菌めっきん」または「殺菌さっきん」できる能力のうりょくがあるものを輸出ゆしゅつ規制きせいの対象たいしょうとしています。

警視庁けいしちょう公安こうあん部ぶは「滅菌めっきん」または「殺菌さっきん」の方法ほうほうには熱ねつによる殺菌さっきんも含ふくまれ、経済けいざい産業さんぎょう省しょうが省令しょうれいで挙あげた細菌さいきんのうち1種類しゅるいでも死滅しめつさせればよいと解釈かいしゃくし、捜査そうさを進すすめました。

この解釈かいしゃくについてメーカー側がわは、「国際こくさい的てきには規制きせいの対象たいしょうは化学かがく物質ぶっしつによる殺菌さっきんに限定げんていされていて、熱ねつによる殺菌さっきんが含ふくまれるという解釈かいしゃくは根拠こんきょがなく、不合理ふごうりな判断はんだんだ。公安こうあん部長ぶちょうが経済けいざい産業さんぎょう省しょうに働はたらきかけて解釈かいしゃくをねじ曲ねじまげさせた」と主張しゅちょうしています。

一方いっぽう、都と側がわは「経済けいざい産業さんぎょう省しょうは警視庁けいしちょうと同様どうようの解釈かいしゃくをしていて、それに基もとづき捜査そうさをするのは当然とうぜんだ。公安こうあん部長ぶちょうが経済けいざい産業さんぎょう省しょうに働はたらきかけた事実じじつはない」と主張しゅちょうしています。

2審しんの争点そうてん(2) 捜査そうさに不利ふりな実験じっけん結果けっかを握にぎりつぶしたのか

警察けいさつが行おこなった噴霧ふんむ乾燥かんそう機きの実験じっけん結果けっかの扱あつかいについても双方そうほうで主張しゅちょうが異ことなり、争点そうてんとなっています。

強制きょうせい捜査そうさに入はいる前まえ、警視庁けいしちょうは大川原おおかわら化工かこう機きの噴霧ふんむ乾燥かんそう機きの温度おんどがどこまで上あがるかを調しらべる実験じっけんを行おこない、高たかい温度おんどを維持いじできると判断はんだんして幹部かんぶの逮捕たいほなどに踏み切ふみきりました。

高たかい温度おんどが維持いじされれば殺菌さっきん能力のうりょくが高たかく、規制きせいの対象たいしょうになると考かんがえていたためです。

その後そのご、改あらためて行いった実験じっけんで温度おんどが上あがらない場所ばしょがあることが分わかり、起訴きその取り消とりけしにつながりました。

しかしメーカー側がわは、警視庁けいしちょうは強制きょうせい捜査そうさの前まえから温度おんどが上あがらない箇所かしょがあることを知しっていたとする新あらたな証拠しょうこを2審しんで提出ていしゅつし、「捜査そうさに不利ふりに動うごく実験じっけん結果けっかを握にぎりつぶした」と主張しゅちょうしています。

新あらたな証拠しょうこは、実験じっけん結果けっかが示しめされたメモです。

捜査そうさ機関きかんは規制きせいを担当たんとうする経済けいざい産業さんぎょう省しょうに実験じっけんの結果けっかとして製品せいひん内ないの2か所かしょの温度おんど変化へんかを示しめし、いずれも100度ど以上いじょうが4時間じかん以上いじょう続つづいたとされました。

しかし実際じっさいはもう1か所かしょ、温度おんどを測定そくていしていて、その場所ばしょではほとんどの時間じかん、100度どを超こえていませんでした。

メモには「殺菌さっきん可能かのうな温度おんどと時間じかんを達成たっせいできなかったが、必かならずしも殺菌さっきんが必要ひつような場所ばしょと捉とらえる必要ひつようはない」と書かかれていました。

メーカー側がわは、うその報告ほうこく書しょを作成さくせいした疑うたがいで担当たんとうした警察官けいさつかんを刑事けいじ告発こくはつしています。

一方いっぽう、都とはメモについて、3か所かしょで温度おんどを測定そくていしていたことは認みとめ、「経済けいざい産業さんぎょう省しょうも、メモにあった場所ばしょは機械きかいの内部ないぶではないと明確めいかくに示しめしていて、内部ないぶに当あたる所ところだけを報告ほうこく書しょに記載きさいするのは当然とうぜんのことだ」と反論はんろんしています。

証人しょうにん尋問じんもんを受うけた警察官けいさつかんは

1人にん目めの警察官けいさつかんは都と側がわが請求せいきゅうした証人しょうにんで、逮捕たいほされた元もと顧問こもんの相嶋あいじま静夫しずおさんの取り調とりしらべを担当たんとうしていました。

相嶋あいじまさんは、問題もんだいとされた噴霧ふんむ乾燥かんそう機きの設計せっけいを担当たんとうした、技術ぎじゅつ部門ぶもんでの第だい一いち人にん者しゃです。

勾留こうりゅう中ちゅうにがんが見みつかり、保釈ほしゃくを繰り返くりかえし求もとめても認みとめられず、無実むじつが明あきらかになる前まえに亡なくなりました。

1審しん判決はんけつでは相嶋あいじまさんは逮捕たいほ前まえの取り調とりしらべで、噴霧ふんむ乾燥かんそう機きには極端きょくたんに温度おんどが低ひくい箇所かしょがあり、完全かんぜんな殺菌さっきんはできないと警察官けいさつかんに伝つたえたと認定にんていしています。

この取り調とりしらべを終おえたあと、相嶋あいじまさんは大川原おおかわら正明まさあき社長しゃちょうなどにメールを送おくり、温度おんどが低ひくくなることを警察官けいさつかんに指摘してきしたと報告ほうこくしていたことも分わかっています。

一方いっぽう、都と側がわは、相嶋あいじまさんが警察官けいさつかんに対にたいし、温度おんどが下さがると指摘してきしたことはなかったと主張しゅちょうしています。