アメリカの複数のメディアは、イスラエルのネタニヤフ首相がバイデン大統領に、今月1日のイランによる大規模なミサイル攻撃への対抗措置をとるとして、イランの軍事施設を標的とする計画を伝えたと報じています。
こうした中、アメリカ国防総省はイスラエルへの配備を決めた迎撃ミサイルシステム「THAAD」の一部と運用部隊が14日、現地に到着したと発表しました。
THAADは弾道ミサイルを高い高度で撃ち落とすことができるとされ、国防総省は今後数日間をかけて搬入を進め「近い将来、完全に運用可能になる」としています。
アメリカ政府はこれによってイスラエルをイランのさらなる攻撃から守るとしていますが、イラン側はイスラエルの対抗措置があれば反撃する構えで、事態のエスカレートを防ぐ抑止力となるかは不透明です。
また、イランの支援を受けるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは15日、指導者カセム師のビデオ声明を公開しました。
この中でカセム師はイスラエルに「停戦こそが解決策だ」と呼びかける一方で「戦争が続くならさらに多くの人が住まいを追われ、危険にさらされる。敵はレバノン全土を攻撃しているため、われわれにもイスラエル全土をねらう権利がある」と述べ、攻撃の範囲を拡大して抗戦すると強調しました。
イスラエル 迎撃ミサイル不足に直面か 英経済紙が指摘
THAADが配備される背景にはイスラエルが直面しつつある迎撃ミサイル不足という深刻な事情があるとイギリスの経済紙フィナンシャル・タイムズは指摘しています。
それによりますとイスラエルにはこの1年間でパレスチナのガザ地区とレバノンからだけでも、合わせて2万発以上のロケット弾やミサイルが発射されたということです。
ただイスラエル軍の元幹部は、ヒズボラはミサイルなどを1日に最大2000発発射できると推定されるもののこれまでその能力の10分の1程度しか使っていないと分析し、イスラエルの軍事企業の代表は迎撃ミサイルを24時間態勢で製造していることを明らかにしています。
さらに今月1日、イランによる大規模なミサイル攻撃を受けた際には、イスラエル中部の空軍基地に30発以上が着弾したほか、情報機関モサドの本部からわずか700メートルの場所でもミサイルの爆撃を受けたということです。
これについてイスラエル国防省の元研究員は「イランがテルアビブに向けて再びミサイル攻撃を仕掛けた場合に備え、イスラエル軍は迎撃ミサイルを温存したのではないか」とした上で「イスラエルが迎撃ミサイルを使い果たし、優先順位をつけて運用しなければならなくなるのは時間の問題だ」という見方を示しています。