“怪童かいどう” 中西なかにし太ふとしさん死去しきょ 90歳さい プロ野球やきゅうの西鉄にしてつで活躍かつやく

宮本みやもとさんは、プロ5年ねん目めの平成へいせい11年ねんの秋季しゅうきキャンプで、初はじめて中西なかにしさんから指導しどうを受うけ、「アウトコース低ひくめの一番いちばん難むずかしいボールを強つよくスイングできるように、一緒いっしょに反復はんぷく練習れんしゅうをしてくれた。すごく打うたされたが、いいスイングをすると『そう！それそれ！』と褒ほめてくれて、しんどい練習れんしゅうもしんどいと感かんじさせないようにしてくださった」と、当時とうじの思い出おもいでを振り返ふりかえりました。

また、「シーズンに入はいっても神宮じんぐう球場きゅうじょうで裸はだか姿すがたに心電図しんでんずみたいな機械きかいを付つけてバッティングピッチャーをしてくれたりしていた」と熱あつい指導しどうを受うけたと話はなしました。

そのうえで、「指導しどうを受うけた翌年よくねんの平成へいせい12年ねんにキャリアで初はじめて3割わりを打うてた。僕ぼくが打うてるようになり、通算つうさん2000本ほん安打あんだを達成たっせいできたのは、中西なかにしさんのおかげなので本当ほんとうに感謝かんしゃしていますし、恩人おんじんです」と話はなしました。

さらに、「若わかい選手せんしゅや外国がいこく人じん選手せんしゅなど分わけ隔へだてなく指導しどうにあたられていたのが印象いんしょう的てきでした。天国てんごくでもバッティングを教おしえていると思おもいます」と話はなしていました。

ことし3月つきに行おこなわれた野球やきゅうのWBC＝ワールド・ベースボール・クラシックで日本にっぽんを優勝ゆうしょうに導みちびいた栗山くりやま英樹ひでき監督かんとくもその1人にんです。

栗山くりやま監督かんとくは中西なかにしさんがヤクルトのコーチを務つとめていた昭和しょうわ59年ねんに入団にゅうだんしました。

「選手せんしゅのことを考かんがえて熱心ねっしんに指導しどうしてもらった」という栗山くりやま監督かんとくは、現役げんえきを引退いんたいしスポーツキャスターとして活動かつどうしていた20年ねんほど前まえ、バッティングの理論りろんや指導しどう法ほうを学まなぶために中西なかにしさんの自宅じたくを訪おとずれました。

そこで中西なかにしさんは、打撃だげきの極意ごくいを身みぶり手しゅぶり伝つたえたあと、義理ぎりの父親ちちおやで、西鉄にしてつの黄金おうごん時代じだいを監督かんとくとして率ひきいた三原みはら脩おさむさんが書き残かきのこした、あるノートを栗山くりやま監督かんとくに見みせました。

三原みはらさんは日本にっぽんシリーズで巨人きょじんを破やぶって3連覇れんぱを達成たっせいするなど、日本にっぽん一いち4回かい、監督かんとく通算つうさん歴代れきだい2位いの1687勝しょうを挙あげた名将めいしょうで、常識じょうしきを覆くつがえす采配さいはいは「三原みはらマジック」と呼よばれ、50年ねん以上いじょうも前まえに投打とうだの二刀流にとうりゅうの選手せんしゅ起用きようにも挑戦ちょうせんしていました。

その名将めいしょうが記しるした監督かんとくとしての理論りろんや勝負しょうぶの極意ごくいなど、野球やきゅうのすべてが詰つまった貴重きちょうなノート。

栗山くりやまさんは「これは神様かみさまからのプレゼントだ」と胸むねが高鳴たかなり、中西なかにしさんになんとかコピーをとらせてほしいとお願おねがいしたといいます。

それ以来いらい、栗山くりやま監督かんとくはそのノートを繰り返くりかえし読み込よみこみ、三原みはらさんの考かんがえを落とし込おとしこみました。

中西なかにしさんは栗山くりやま監督かんとくについて、「彼かれは本当ほんとうに勉強べんきょう家かでね。いろいろな本ほん読よんだり、いろいろなノートを写うつし持もって、話はなしを聞きく人ひと。まあよう（三原みはらさんを）まねとるよ。勉強べんきょうしとるよ」と、野球やきゅうに対にたいする熱心ねっしんな姿勢しせいを評価ひょうか。

栗山くりやま監督かんとくが平成へいせい24年ねんに日本ハムにほんはむの監督かんとくに就任しゅうにんした際さいには、三原みはらさんの残のこした「日々ひび新あらたなり」ということばが書かかれたふくさを送おくりました。

そのふくさは日本ハムにほんはむの監督かんとく室しつにずっと飾かざられていたということです。

三原みはらさんのノートをバイブルに、栗山くりやま監督かんとくは日本ハムにほんはむをリーグ優勝ゆうしょう2回かいと日本にっぽん一いち1回かいに導みちびき、大谷おおや翔しょう平ひら選手せんしゅを投打とうだの二刀流にとうりゅうの選手せんしゅとして育て上そだてあげました。

中西なかにしさんがノートを託たくしてからおよそ20年ねん。

日本にっぽん代表だいひょうの監督かんとくとして3大会たいかいぶりの優勝ゆうしょうを目指めざしWBCに臨のぞむ栗山くりやま監督かんとくについて、ことし1月つき、中西なかにしさんは「栗山くりやま君くんが思おもいきりやってくれるように期待きたいしています」などと思おもいを語かたっていました。

大谷おおや選手せんしゅなど大リーガーだいり-が-4人にんを擁ようし史上しじょう最強さいきょうの呼び声よびごえ高たかい日本にっぽん代表だいひょうを率ひきい、「眠ねむれなくなる日ひがあった」と重圧じゅうあつと戦たたかった栗山くりやま監督かんとくは、大会たいかい直前ちょくぜんの合宿がっしゅくでも中西なかにしさんから受け継うけついだノートを熟読じゅくどくしていました。

そして、三原みはらさんが残のこした「僅差きんさのゲームで『シノギ』を削けずる場面ばめんは監督かんとくがその全ぜん能力のうりょくを投入とうにゅうする時とき」などということばに背中せなかを押おされ、大会たいかい本番ほんばんに臨のぞみました。

短期たんき決戦けっせんを勝かち上あがり、大リーグだいり-ぐのスター選手せんしゅが顔かおをそろえたアメリカと対戦たいせんした決勝けっしょうでは、7人にんの投手とうしゅを小刻こきざみにつなぐ継投けいとう策さくという思おもいきった采配さいはいを見みせ、3対たい2で勝利しょうり。

文字もじどおり「僅差きんさのゲーム」をものにして、頂点ちょうてんに立たちました。

野球やきゅうへの情熱じょうねつがきっかけとなり受け継うけつがれたノート。

三原みはらさんが培つちかってきた野球やきゅう理論りろんが、中西なかにしさんを通をつうじて、栗山くりやま監督かんとくに継承けいしょうされ、世界一せかいいちという形かたちで実みを結むすんだ瞬間しゅんかんでもありました。

▽打率だりつ3割わり7厘りん、

▽1262安打あんだ、

▽ホームラン244本ほん、

▽785打点だてんをマーク、打撃だげきタイトルでは

▽首位しゅい打者だしゃを2回かい、

▽ホームラン王おうを5回かい、

▽打点だてん王おうを3回かい、獲得かくとくしています。

これらの輝かがやかしい功績こうせきに加くわえて、中西なかにしさんにはスケールの大おおきなさまざまな逸話いつわが語り継かたりつがれています。

高松たかまつ一いち高だか時代じだいに3回かい、甲子園こうしえんに出場しゅつじょうした中西なかにしさんは相手あいての内野ないや手しゅが捕と球たましたあとに、後うしろに倒たおれるほどの強烈きょうれつなライナーを打うっていたと言いわれています。

その豪快ごうかいな打撃だげきだけでなく、甲子園こうしえんでランニングホームランも記録きろくするなど、俊足しゅんそくも兼ね備かねそなえていました。

プロ入いり後ご、2年ねん目めに打うったホームランは、今いまも野球やきゅうファンの間まで語かたりぐさとなっています。

そのホームランは、昭和しょうわ28年ねん8月つき29日にち、平和へいわ台だい球場きゅうじょうで行おこなわれた西鉄にしてつ対たい大映だいえいの試合しあいで出でた1本ほんでした。

その様子ようすを見みた関係かんけい者しゃは、「ショートがジャンプした打球だきゅうが場外じょうがいに消きえた」や、「160メートルは飛とんだ」などと話はなし、その打球だきゅうのすさまじさを証言しょうげんしていて、NPB＝日本にっぽん野球やきゅう機構きこうに残のこされた当時とうじの試合しあいのスコアカードの雑記ざっき欄らんにも、「バックスクリーンを越こす場外じょうがいホームラン」と記しるされているということです。