Actualités japonaises: 大阪のタクシー料金 5000円を超えると半額…じゃなくなる

タクシーに乗のる時とき、どうしても料金りょうきんが気きになりますよね。

でも大阪おおさかのタクシー会社かいしゃの多おおくは、メーターが5000円えんを超こえると、そこから先さきの料金りょうきんが5割引わりびきになっていたんです。

しかし5月末げつまつで多おおくのタクシー会社かいしゃがこのサービスの廃止はいしを決きめています。

この大胆だいたんなサービスはどのように始はじまり、なぜ今いま、廃止はいしされるのでしょうか。

（大阪おおさか放送ほうそう局きょくなんでなん取材しゅざい班はん上原うえはら直ただし大だい寺田てらだ麻美あさみ廣瀬ひろせ奈々美ななみ）

タクシーのあんどんには同おなじ文字もじ

およそ1万まん5000台だいのタクシーが走はしるタクシー激戦げきせん区く・大阪おおさか。

タクシーの「あんどん」をよく見みると同おなじ文字もじが書かかれています。

「5000円えん超ちょう分ぶん5割引わりびき」

「5000円えん超ちょう分ぶん半額はんがく」

5000円えんを超こえた分ぶんの運賃うんちんを5割わり引びきにするとことから、「55（ゴーゴー）割わり」と呼よばれ、大阪おおさかを走はしるおよそ9割わりのタクシーで導入どうにゅうされています。

なぜ55割わりは始はじまったの

「55割わり」はなぜ始はじまったのか。

まず訪おとずれたのは関西かんさいのタクシーの運賃うんちんを認可にんかしている近畿きんき運輸うんゆ局きょくです。

担当たんとう者しゃが見みせてくれたのは、2002年ねんの当時とうじの業務ぎょうむを記録きろくした資料しりょう。

そこには「遠距離えんきょり割引わりびき（5000円えん超こえ50％割り引わりびき）など、事業じぎょう者しゃの創意そうい工夫くふうによる運賃うんちん・料金りょうきんの割引わりびきについて認可にんか」の文字もじがありました。

「55割わり」が誕生たんじょうした瞬間しゅんかんでした。

大阪おおさかは“規制きせい緩和かんわの実験じっけん場じょう”

2002年ねんは、小泉こいずみ政権せいけんのもと規制きせい緩和かんわが推し進おしすすめられていた時期じきでした。

当時とうじはデフレのまっただ中ただなか。さまざまなモノやサービスの価格かかくが下落げらくしていました。低てい成長せいちょうが続つづく中なか、規制きせい緩和かんわによって活力かつりょくを生み出うみだそうとしていたのです。

運賃うんちんが自由じゆうに設定せっていしやすくなったことで、初乗はつのり運賃うんちんが500円えんのタクシーが登場とうじょうするなど、大阪おおさかのタクシー業界ぎょうかいでは価格かかく競争きょうそうが激化げきかする結果けっかとなりました。

こうした中なか、編み出あみだされたのが「55割わり」だったのです。

こうした過剰かじょうなまでの価格かかく競争きょうそうによって、大阪おおさかは「規制きせい緩和かんわの実験じっけん場じょう」とも呼よばれ、全国ぜんこく的てきにも注目ちゅうもくを集あつめました。

近畿きんき運輸うんゆ局きょく旅客りょかく第だい二に課か河原かわはら正明まさあき課長かちょう

「『55割わり』は規制きせい緩和かんわの時代じだいに生うまれたもので、どこか1社しゃが導入どうにゅうすると、やはり安やすいタクシー会社かいしゃに客きゃくが流ながれていき、他社たしゃも追随ついずいしないといけない状況じょうきょうがあった。全国ぜんこく的てきにも、これほど価格かかく競争きょうそうが厳きびしい地域ちいきはなかった」

なぜ5000円えん？なぜ5割わり引びき？

ただ、疑問ぎもんに残のこるのは、なぜ「5000円えん」、そして「5割わり引びき」だったのか。

さらに調しらべていくと、「55割わり」を大阪おおさかで初はじめて導入どうにゅうしたタクシー会社かいしゃが見みつかりました。

営業えいぎょう責任せきにん者しゃを務つとめていた高月たかつき勝守かつもりさんによると、「55割わり」にしたのは主おもに3つの要素ようそがあったといいます。

１いち）ビジネスホテルの価格かかく

1つ目めがビジネスホテルの価格かかくです。

当時とうじの大阪おおさかの相場そうばは1泊はく5000円えん程度ていど。

終電しゅうでんを逃のがした客きゃくにタクシーを利用りようしてもらうために「ホテルに泊とまるのとあまり変かわらない値段ねだん」に設定せっていする必要ひつようがあったといいます。

２に）長距離ちょうきょり客きゃくの割合わりあい

2つ目めが長距離ちょうきょり客きゃくの割合わりあいです。

当時とうじ、高月たかつきさんの会社かいしゃでは、運賃うんちんが5000円えん以上いじょうとなる長距離ちょうきょり利用りようの客きゃくは全体ぜんたいの10％以下いかだったということで、5000円えんを超こえた分ぶんを大幅おおはばに割り引わりびきしても、経営けいえいに大おおきな影響えいきょうはないと考かんがえたのです。

３さん）客きゃくによる値切ねぎり

そして3つ目めが大阪おおさか特有とくゆうの事情じじょう。

それが、客きゃくによる運賃うんちんの「値切ねぎり」です。

価格かかくにシビアと言いわれる大阪おおさかでは、タクシーの運賃うんちんも値切ねぎろうとする客きゃくがいて、会社かいしゃにとって悩なやみの種たねだったといいます。

大阪おおさかで初はじめて55割わりを導入どうにゅうしたタクシー会社かいしゃ当時とうじの営業えいぎょう責任せきにん者しゃ高月たかつき勝守かつもりさん

「八はち百ひゃく屋ややスーパーで値切ねぎりするように『運転うんてん手しゅさん、なんぼになる？』というような形かたちで言いわれることがあって、運転うんてん手しゅがストレスを感かんじていた。5000円えん以上いじょうの割り引わりびきならば、それほど痛手いたでは被かぶらないだろうという判断はんだんだった。スーパーでも半額はんがくと言いったらみんな寄よってくるので、半額はんがくということにしようということだったようだ」

終しゅうえんを迎むかえる「55割わり」

この会社かいしゃが導入どうにゅうしたことをきっかけに一気いっきに広ひろまった「55割わり」。

実じつに大阪おおさかを走はしるタクシーのおよそ9割わりが導入どうにゅうしています。

しかし、長年ながねん続つづいてきた「55割わり」は大おおきな転換てんかん点てんにあります。

今月こんげつ末まつのタクシー運賃うんちんの値上ねあげにあわせて、大半たいはんの会社かいしゃが「55割わり」を廃止はいしし、9000円えんを超こえた分ぶんを1割わり引びきにする「91割わり」に変更へんこうしようとしているのです。

これについて大阪おおさかの繁華はんか街がい・ミナミで話はなしを聞きくと…

「けっこう痛いたい」

「厳きびしいです、悲かなしいです、家いえが奈良ならやねん」

「終電しゅうでんまでに帰かえれるように早はやめに切り上きりあげたりとか、時間じかんを気きにしながら飲のむことになると思おもいます」

一方いっぽう、タクシードライバーや業界ぎょうかい団体だんたいの受け止うけとめは正せい反対はんたいとも言いえるものでした。

「やっと廃止はいしかという感かんじ、さんざん苦くるしめられてきて、やっと元もとに戻もどるんかという感かんじ」

「関空かんくうなんかいってもメーターで2万まんくらい出でても、55割わりがあると、実質じっしつ1万まん2、3千せん円えんになっちゃうんだよね」

大阪おおさかタクシー協会きょうかい井田いだ信雄のぶお専務せんむ理事りじ

「大阪おおさかのシンボル的てきなもので、もう完全かんぜんに根付ねついてしまったものですから。一度いちどやってしまったものを戻もどしにくいというようなところがありました。本当ほんとうはずっと元もとに戻もどしたかったんですが」

遠とおくになればなるほど割引わりびき額がくが増ふえる「55割わり」。

タクシーは客きゃくを乗のせられるエリアが決きめられていて、エリアの外そとで客きゃくを降おろすと客きゃくを乗のせずに帰かえってくるケースも多おおく、非ひ効率こうりつな面めんがあったといいます。

なぜ今いま、廃止はいしするの？

新型しんがたコロナの感染かんせんが落ち着おちつき飲のみ会かいなどの需要じゅようも戻もどる中なかで、なぜ今いま、タクシー会社かいしゃがこぞって「55割わり」の廃止はいしに踏み切ふみきるのか。

大阪おおさか・西にし区くのタクシー会社かいしゃを訪たずねました。

この会社かいしゃでは、初乗はつのり運賃うんちんを600円えん台だいに設定せっていする会社かいしゃが多おおい中なか、550円えんに設定せっていし、安やすさを売うりにしてきました。

しかし、この会社かいしゃも、およそ20年ねん続つづけてきた「55割わり」の廃止はいしを決断けつだんしました。

ワンコイングループ町野まちの革かわ会長かいちょう

「正直しょうじきに言いうと、10年ねん以上いじょう前まえから過度かどな割引わりびきということで、現場げんばの乗務じょうむ員いんも含ふくめ、やめられるもんならやめたいと考かんがえていたが、他社たしゃが続つづけている中なかで、自分じぶんのところだけやめたら客きゃくが乗のってくれなくなるかもしれず、タイミングが難むずかしかった。ただ、もう体力たいりょく的てきに無理むりがあり、思い切おもいきってそちらの方向ほうこうに経営けいえい判断はんだんしてかじをきった」

この会社かいしゃでは、コロナ禍かで一時いちじは半分はんぶん程度ていどまで売り上うりあげが減少げんしょう。

燃料ねんりょう費ひの高こう止とまりも追い打おいうちをかけました。

ここに来きてようやく利用りよう客きゃくが回復かいふくする中なか、この会社かいしゃでは、これを機きに価格かかく一辺倒いっぺんとうではなく、質しつへの転換てんかんも図はかっていきたいとしています。

「55割わり」の廃止はいしによる増収ぞうしゅう分ぶんを、従業じゅうぎょう員いんの待遇たいぐう改善かいぜんに加くわえ、タクシーアプリへの対応たいおうや新型しんがた車両しゃりょうの導入どうにゅうなどの費用ひように充あてることにしています。

町野まちの会長かいちょう

「コロナ不況ふきょうを耐え抜たえぬいたことで、値段ねだんの競争きょうそうから質しつの競争きょうそうに変かわってきているのではないかと思おもう。乗務じょうむ員いんの質しつ、車くるまの質しつ、会社かいしゃの質しつと上あがっていけば、値段ねだんが上あがったことは消費しょうひ者しゃに理解りかいしてもらえると感かんじている」