群馬ぐんま 太田おおた 太平洋たいへいよう戦争せんそう末期まっきの地上ちじょうから撮影さつえいした空襲くうしゅう映像えいぞう見みつかる

映像えいぞうは太田おおた市しで160人にん余あまりが犠牲ぎせいになった、昭和しょうわ20年ねん2月つき10日にちの空襲くうしゅうの様子ようすを地上ちじょうから撮影さつえいしたものです。

当時とうじ、市内しないにあった軍用ぐんよう機きの製造せいぞう工場こうじょうに勤務きんむしていた男性だんせいが撮影さつえいし、40年ねん余あまり前まえに群馬ぐんま県立けんりつ歴史れきし博物館はくぶつかんの学芸がくげい員いんが男性だんせいの許可きょかを得えてフィルムにダビングしましたが、そのまま保管ほかんされ続つづけていました。

太田おおた市しは陸軍りくぐんの訓練くんれん用ようの飛行場ひこうじょうがあったこともあり、戦争せんそう末期まっきに繰り返くりかえし空襲くうしゅうを受うけましたが、専門せんもん家かによりますとその様子ようすを伝つたえる映像えいぞうはこれまでアメリカ軍ぐんが上空じょうくうから撮影さつえいしたものしか確認かくにんされていないということです。

群馬ぐんま県立けんりつ歴史れきし博物館はくぶつかんは、撮影さつえいした男性だんせいの家族かぞくの了承りょうしょうを得えて今後こんご、映像えいぞうを公開こうかいしたいとしています。

映像えいぞうは1分ふん半はん余よ 逃にげる人ひとや航空こうくう機きが写うつされる

残のこされていたフィルムの中なかに太田おおた空襲くうしゅうについての映像えいぞうは1分ふん半はん余あまりあり、冒頭ぼうとうには「群馬ぐんま地区ちく来襲らいしゅう、昭和しょうわ20年ねん2月つき10日にち」という文字もじが写うつされています。

続つづいて、

▽上空じょうくうに長ながく伸のびる飛行機雲ひこうきぐもや

▽防空ぼうくう頭巾ずきんをかぶった大勢たいせいの人ひとたちが同おなじ方向ほうこうに集団しゅうだんで走はしって逃にげる様子ようす

▽上空じょうくうで最大さいだいで10機き余あまり編隊へんたいを組くんで飛とぶ航空こうくう機き

また、

▽航空こうくう機きが墜落ついらくして炎上えんじょうする様子ようすなどが写うつされていました。

この映像えいぞうについてNHKは、所有しょゆう者しゃ側がわの許可きょかを得えて、2人にんの専門せんもん家かに分析ぶんせきを依頼いらいしました。

その結果けっか、専門せんもん家かは

▽飛行機雲ひこうきぐもについてはアメリカ軍ぐんの爆撃ばくげき機きを迎撃げいげきするために発進はっしんした日本にっぽん軍ぐんの戦闘せんとう機きによるもの

▽編隊へんたいを組くんで飛行ひこうしているのは、アメリカ軍ぐんの爆撃ばくげき機き、B29であること

また、

▽きりもみ状態じょうたいで墜落ついらくしたのはB29で、日本にっぽん軍ぐんの戦闘せんとう機きに体からだ当あたりをされたものだと回答かいとうしました。

この映像えいぞうは最後さいごに「撮影さつえい 監修かんしゅう 金子かねこ三千雄みちお」、「終おわり」という文字もじが写うつされて締しめくくられています。

専門せんもん家か「極きわめて貴重きちょうな映像えいぞう」

今回こんかい見みつかった映像えいぞうについてNHKはアメリカ軍ぐんによる空襲くうしゅうに詳くわしい2人にんの専門せんもん家かに分析ぶんせきを依頼いらいしました。

このうちアメリカ軍ぐんによる空襲くうしゅうの歴史れきしを研究けんきゅうしている工藤くどう洋三ようぞうさんは、アメリカ軍ぐんが残のこした太田おおた市しの空襲くうしゅうに関にかんする別べつの資料しりょうにあった爆撃ばくげき機きが組くむ編隊へんたいの形かたちや、当日とうじつの天気てんきなどと照てらし合あわせた結果けっか、それらが映像えいぞうと一致いっちしていると指摘してきしています。

工藤くどうさんは工場こうじょうから逃にげる人々ひとびとの様子ようすについて「非常ひじょうに早足はやあしで慌あわてて逃にげているようにみられ、組織そしき的てきな動うごきがあまり見受みうけられない。空襲くうしゅうを事前じぜんに察知さっちして、従業じゅうぎょう員いんや学徒がくとを早はやく逃にがしておくといった対応たいおうができていないことの現あらわれだと思おもう。日本にっぽん側がわの防御ぼうぎょに対にたいする心構こころがまえが非常ひじょうに弱よわかったことを教おしえてくれる資料しりょうだ」と分析ぶんせきしていました。

また、アメリカの国立こくりつ公文こうぶん書しょ館かんから入手にゅうしゅした戦時せんじ中ちゅうの全国ぜんこくの空襲くうしゅう映像えいぞうの分析ぶんせきをしている大分おおいた県けん宇佐うさ市しの市民しみんグループ、「豊ゆたかの国くに宇佐うさ市し塾じゅく」のメンバーの1人にん、織田おだ祐輔ゆうすけさんは「初はじめて見みた映像えいぞうで、大変たいへん興味深きょうみぶかく感かんじた」と話はなしています。

そのうえで「B29が墜落ついらくして炎上えんじょうするまでの流ながれが映うつっていること、また、日本にっぽん側がわが終戦しゅうせん直後ちょくごに撮影さつえいした映像えいぞうフィルムの多おおくが焼却しょうきゃく処分しょぶんされている中なかで、それが現存げんそんしているという意味いみでも極きわめて貴重きちょうな映像えいぞうだと思おもう」と話はなしていました。

フィルムの保管ほかん者しゃ「歴史れきしを立体りったい的てきに見みていく手てがかりに」

フィルムを残のこしていた原田はらだ恒ひさし弘ひろしさん（85）は群馬ぐんま県立けんりつ歴史れきし博物館はくぶつかんの学芸がくげい員いんだった41年ねん前まえ、「軍用ぐんよう機きを製造せいぞうしていた「中島なかじま飛行機ひこうき」の工場こうじょうで『写真しゃしん班はん』だった男性だんせいが桐生きりゅう市しに住すんでいる」と聞きき、男性だんせいのもとを訪たずねたということです。

その男性だんせいが映像えいぞうの最後さいごに撮影さつえい者しゃとして名前なまえがあった金子かねこ三千雄みちおさんで、原田はらださんは許可きょかを得えてフィルムを見みてダビングさせてもらったといいます。

フィルムはその後そのご、博物館はくぶつかんで保管ほかんされていたものの映写えいしゃ機きがなかったことなどから見みられることなく40年ねんを超こえる時ときが過すぎましたが、博物館はくぶつかんの資料しりょうのデジタル化かに伴ともない9月つき、映写えいしゃ機きを手配てはいして今いまいる学芸がくげい員いんが原田はらださんとともに映像えいぞうを確認かくにんしました。

原田はらださん自身じしんは終戦しゅうせん10日にち前まえの昭和しょうわ20年ねん8月つき5日にちから翌日よくじつにかけてアメリカ軍ぐんの空襲くうしゅうを受うけて535人にんが犠牲ぎせいとなった「前橋まえばし空襲くうしゅう」の体験たいけん者しゃの1人にんで、今いまも語かたり部ぶとして活動かつどうしています。

原田はらださんは「金子かねこさんは工場こうじょう専属せんぞくのカメラマンで『あなたならばどの部分ぶぶんを撮とってもかまいませんよ』という『特別とくべつ部隊ぶたい』に所属しょぞくしていたと聞きいている。日本にっぽん側がわが空襲くうしゅうをどのように捉とらえていたのかがわかる映像えいぞうだと思おもう。歴史れきしを立体りったい的てきに見みていくための手てがかりになることを期待きたいしています」と話はなしていました。