鴨川かもがわでトビに食べ物たべものさらわれるの なんでなん？

鴨川かもがわの河川敷かせんしきを鳥とりの唐とう揚あげを食たべながら歩あるいていた時ときでした。

最後さいごの一いち口くち…と思おもったその瞬間しゅんかん。

「ビュッ」という鋭するどい音おととともに、手元てもとにあった唐とう揚あげが消きえていました。

私わたしの唐とう揚あげをさらっていったのは「トビ」でした。

あのときの悔くやしさと悲かなしみを胸むねに、トビがなぜ食べ物たべものをさらうのか、その謎なぞを調しらべました。

（京都きょうと放送ほうそう局きょく カメラマン 中嶋なかじま路ろ央ひさし 大阪おおさか放送ほうそう局きょく ディレクター 吉岡よしおか芙由紀ゆき）

目めの前まえで被害ひがいが…

まずはトビの映像えいぞうを撮影さつえいしようと鴨川かもがわ周辺しゅうへんに行いってみると…

目めの前まえで被害ひがい者しゃが続々ぞくぞくと。

「トビにシュークリームを取とられました」

「パン食たべていたら、『バサッ』という音おととともに、持もって行いかれました」

「食たべようと思おもったら、『えっ？ない！あれ！？』って。まいりました、という感かんじでした」

商店しょうてん街がいで聞きいてみると

私わたしと同おなじ思おもいをした人ひとたちがこれほどいたとは！

続つづいて訪おとずれたのが鴨川かもがわ近ちかくの商店しょうてん街がい。

ここで何なにか、ヒントを得えられるでしょうか。

（鮮魚せんぎょ店てん）

「おいしいから取とられるでって言いいたいんやけど」

（豆腐とうふ店てん）

「コロッケでもよう取とられたって言いわはる。おいしそうに見みえるんやろうね」

皆みなさん、味あじに自信じしんはあるようですが、謎なぞは解とけず。

私わたしが唐とう揚あげを買かった店みせでも、なぜ取とられるのかを聞きいてみると。

（妻つま）

「トビが上うえからこう見みてんのちゃうかな？」

（夫おっと）

「誰だれかが先さきにエサとしてな、与あたえたりするから、それで味あじをしめたんちゃうかな」

トビが増ふえた要因よういん、実じつは…

取材しゅざいを進すすめていくと、心強こころづよい存在そんざいに行き着いきつきました。

半はん世紀せいき近ちかくにわたって鴨川かもがわ周辺しゅうへんでトビの調査ちょうさを続つづける、日本にっぽん鳥とり学会がっかいの西台にしだい律子りつこさん。

西台にしだいさんが口くちにしたのは意外いがいなことばでした。

(日本にっぽん鳥とり学会がっかい 西台にしだい律子りつこさん)

「もともとのきっかけは、ユリカモメへの餌付えづけです。トビからすれば、おこぼれをもらうという感かんじですね」

ん！？

いきなり出でてきたユリカモメ。

いったいどういう関係かんけいなのでしょうか。

ユリカモメは渡り鳥わたりどり。

西台にしだいさんによると、1980年代ねんだいから90年代ねんだいにかけて、冬ふゆになると、鴨川かもがわ周辺しゅうへんには数多かずおおく飛来ひらいするようになったといいます。

その姿すがたをカメラに収おさめようと、愛鳥あいちょう家かや地元じもとの人ひとたちのあいだでは、餌付えづけがブームになったのです。

しかし、2000年代ねんだいに入はいると、鳥とりインフルエンザの流行りゅうこうなどを背景はいけいに、鴨川かもがわにやってくるユリカモメの数かずは減少げんしょう。

一方いっぽうで、増ふえていったのがユリカモメへのエサを目当めあてにやって来やってくるトビだったというのです。

トビは、ワシなどと同おなじ猛もうきん類るいですが、臆病おくびょうな性格せいかくで、本来ほんらいは、ほかの鳥とりが食たべ残のこした魚さかなやカエルなどを食たべています。

そんなトビがエサをもらえると分わかって、鴨川かもがわに多おおく出でるようになったと西台にしだいさんは分析ぶんせきしています。

（日本にっぽん鳥とり学会がっかい 西台にしだい律子りつこさん）

「ユリカモメにエサをあげようとエサを持もってきてもいない。じゃあ、せっかく持もってきたものはほかの鳥とりにあげましょうということで、トビにエサをあげる人ひともいた。トビは猛もうきん類るいですけど、プライドがないのでね（笑えみ）。人ひとが持もってるお弁当べんとうとかパンとか、そういうものも取とっていくようになった」

鴨川かもがわ周辺しゅうへんの環境かんきょうも影響えいきょう？

エサだけでなく、鴨川かもがわ周辺しゅうへんの環境かんきょうを指摘してきする専門せんもん家かもいます。

日本にっぽん野鳥やちょうの会かい京都きょうと支部しぶの船瀬ふなせ茂信しげのぶさんです。

船瀬ふなせさんが案内あんないしてくれたのは、京都きょうと市内しないの植物しょくぶつ園えん。

すると、木きの上うえにトビの巣すのあとが見みつかりました。

船瀬ふなせさんによると、トビは山間さんかん部ぶで繁殖はんしょく活動かつどうを行おこない、街まち中ちゅうにも姿すがたを見みせていましたが、ここ数すう年ねんは街まち中ちゅうでも繁殖はんしょくを行おこなうようになりました。

案内あんないしてくれた植物しょくぶつ園えんのほかにも、京都きょうと御苑ぎょえんや下鴨神社しもがもじんじゃなどでも、トビの巣すが相次あいついで発見はっけんされているというのです。

船瀬ふなせさんは、子育こそだてのために多おおくのエサを必要ひつようとしていたトビが、人間にんげんから食べ物たべものを取とるようになったのではないかと指摘してきします。

（日本にっぽん野鳥やちょうの会かい 京都きょうと支部しぶ 船瀬ふなせ茂信しげのぶさん）

「子育こそだての条件じょうけんとして、本来ほんらいの生息せいそくしている場所ばしょと同おなじような環境かんきょうがこの辺あたりにたまたまあったということになります。ひなが育そだつまでは、必死ひっしになってエサ取とりをして、子育こそだてをするので、自分じぶんで食たべる量りょうの何なん倍ばいかのエサを確保かくほせなあかん。どうしても足たらない部分ぶぶんはやっぱり人間にんげんから奪うばうという行動こうどうに出でてしまう」

“映はえ”に気きを取とられていると

ユリカモメへの餌付えづけや繁殖はんしょくに適てきした京都きょうと市内しないの環境かんきょうが、トビによる「被害ひがい」が増ふえている理由りゆうと考かんがえられますが、実じつは人間にんげんの側がわにも要因よういんがあるといいます。

それがSNS。

“映はえる写真しゃしん”を撮とるために、腕うでを伸のばして食べ物たべものなどを撮影さつえいするこうした行為こうい。

実じつはトビにとっては格好かっこうのターゲットなのだそうです。

（日本にっぽん鳥とり学会がっかい 西台にしだい律子りつこさん）

「じっと食べ物たべものを持もつっていうのは、トビにエサをあげてるのと一緒いっしょですから。手てを前まえや上うえに伸のばしている人ひともいますから、トビからすると、それと間違まちがえますよね。食べ物たべものをこうじっとするのはダメですね」

鴨川かもがわの夏なつの風物詩ふうぶつし 「納涼のうりょう床ゆか」では

しかし、取材しゅざいの途中とちゅう、新あらたな疑問ぎもんにぶつかりました。

鴨川かもがわといえば、京都きょうとの夏なつの風物詩ふうぶつし「納涼のうりょう床ゆか」。

川かわべりに床ゆかを組くみ、食事しょくじや酒さけを楽たのしむ場所ばしょですが、川かわのすぐそばで食事しょくじをしていれば、被害ひがいが多おおいのではないか、と思おもいきや、お店みせの方ほうに聞きくと…

（飲食いんしょく店てんマネージャー）

「鴨川かもがわ沿ぞいには、飲食いんしょく店てんがもちろん多おおいので、そういう被害ひがいはあってもおかしくないのかなと思おもうんですけれども、一切いっさい聞きいたことがないですね」

このお店みせのマネージャーはプライベートではトビに食べ物たべものをさらわれたことがあるようですが、お店みせでは被害ひがいの報告ほうこくはないそうです。

この謎なぞを解き明ときあかしてもらうために、日本にっぽん野鳥やちょうの会かいの船瀬ふなせさんに話はなしを聞きくと、納涼のうりょう床ゆかには被害ひがいが出でにくい要素ようそがあるといいます。

人ひとが向かい合むかいあって食たべていること。

トビは警戒けいかい心しんが強つよく人ひとの目めを気きにするため、向かい合むかいあって食たべている納涼のうりょう床ゆかは狙ねらいにくいそう。

屋根やねや柵しがらみ・壁かべがあるとトビは小回こまわりが効きかないため、屋根やねや柵しがらみ・壁かべがあると、近ちかづきにくいそう。

屋根やねがないところでは、傘かさをさすことなども対策たいさくとして有効ゆうこうだそうです。

唐とう揚あげをさらわれた経験けいけんから始はじまったトビを巡めぐる謎なぞ解とき。

その悔くやしさは簡単かんたんには忘わすれられませんが、人間にんげんの側がわにも要因よういんがあると聞きくと、トビとうまく付き合つきあっていくためのポイントも見みえてきました。