完全かんぜん養殖ようしょくのウナギ 味あじは？価格かかくは？研究けんきゅう状況じょうきょうの報告ほうこく会かい 水産庁すいさんちょう

将来しょうらい、私わたしたちも食たべられる日ひが来くるのでしょうか。

報告ほうこく会かいは、ニホンウナギの完全かんぜん養殖ようしょくの実用じつよう化かに向むけた最新さいしんの研究けんきゅうについて知しってもらおうと、水産庁すいさんちょうが開ひらきました。

ニホンウナギは、絶滅ぜつめつ危惧きぐ種しゅに指定していされるなど資源しげんの保護ほごが課題かだいとなっていますが、14年ねん前まえ、国くにの研究けんきゅう機関きかんが卵たまごを人工じんこうふ化ふかさせて育そだてたウナギを親おやにして、さらにその卵たまごをふ化ふかさせる完全かんぜん養殖ようしょくに世界せかいで初はじめて成功せいこうし、実用じつよう化かに向むけた研究けんきゅう開発かいはつが進すすめられています。

4日にちは、実際じっさいに完全かんぜん養殖ようしょくの技術ぎじゅつで育そだてられたウナギの稚魚ちぎょ、シラスウナギが入はいった水槽すいそうが展示てんじされ、研究けんきゅう者しゃが最新さいしんの成果せいかを紹介しょうかいしました。

そして、卵たまごをふ化ふかさせるところから育そだてあげたウナギと天然てんねんの稚魚ちぎょを育そだてた通常つうじょうの養殖ようしょくのウナギをそれぞれかば焼かばやきにして関係かんけい者しゃ向むけの試食ししょくが行おこなわれ、坂本さかもと農林のうりん水産すいさん大臣だいじんも参加さんかしました。

坂本さかもと農林のうりん水産すいさん相しょう

「ふわふわでおいしいです。通常つうじょうの養殖ようしょくのウナギと比くらべても全まったく味あじは変かわりません。まだウナギは高級こうきゅう食材しょくざいなので、手てごろな値段ねだんで食たべられるようにしてもらいたい」

3倍ばい以上いじょうの価格かかく差さ 生産せいさんコストが課題かだい

水産庁すいさんちょうによりますとウナギを卵たまごから育そだてる場合ばあい、生産せいさんコストが高たかくなることが課題かだいで現在げんざいはシラスウナギ1匹ひきあたり1800円えん余あまりのコストがかかるということです。

天然てんねんのシラスウナギと比くらべると、まだ3倍ばい以上いじょうの価格かかく差さがあり、実用じつよう化かに向むけてさらにコストを削減さくげんする技術ぎじゅつを研究けんきゅうしているということです。

水産すいさん研究けんきゅう・教育きょういく機構きこう 風かぜ藤ふじ行こう紀きの シラスウナギ生産せいさん部長ぶちょう

「将来しょうらい的てきには、人工じんこう由来ゆらいのウナギの価格かかくを天然てんねん由来ゆらいの養殖ようしょくウナギと同おなじ程度ていどかさらに安やすくできるのではないかと考かんがえている。少すこしでも早はやく実用じつよう化かできるようにしていきたい」

ニホンウナギ 漁獲ぎょかく量りょうは減少げんしょう

東アジアひがしあじあに生息せいそくするニホンウナギは、近ちかい将来しょうらい、野生やせいでの絶滅ぜつめつの危険きけん性せいが高たかいとされています。

水産庁すいさんちょうによりますと、国内こくないの川かわや湖みずうみでとれる天然てんねんのニホンウナギの漁獲ぎょかく量りょうは、1961年ねんの3387トンをピークに、去年きょねんは55トンとおよそ60分ぶんの1にまで減少げんしょうしています。

また、養殖ようしょくのウナギの生産せいさん量りょうは1989年ねんの3万まん9704トンをピークに、去年きょねんは1万まん8294トンと半分はんぶん以下いかに減へっています。

こうした状況じょうきょうを受うけ、環境省かんきょうしょうは2013年ねん、ニホンウナギを「絶滅ぜつめつ危惧きぐIB類るい」に指定していしたほか、2014年ねんにはIUCN＝国際こくさい自然しぜん保護ほご連合れんごうが「近ちかい将来しょうらいにおける野生やせいでの絶滅ぜつめつの危険きけん性せいが高たかい種たね」として、レッドリストに掲載けいさいしています。

ニホンウナギ 生態せいたいは

ニホンウナギは産卵さんらんの際さいには日本にっぽんの川かわを離はなれ、日本にっぽんから南みなみにおよそ2000キロ離はなれたマリアナ諸島しょとうの近ちかくの海うみで産卵さんらんします。

卵たまごからふ化ふかしたあと海流かいりゅうに運はこばれながら「シラスウナギ」と呼よばれる稚魚ちぎょになり、日本にっぽんの川かわまでたどり着たどりついて成長せいちょうし、再ふたたび海うみに戻もどって産卵さんらんします。

こうしたニホンウナギの生態せいたいは長年ながねん、詳くわしく分わかっておらず、人工じんこう的てきに卵たまごからウナギを育そだてる試こころみもうまくいきませんでした。

国内こくないでウナギの完全かんぜん養殖ようしょくに向むけた研究けんきゅうが始はじまったのは1960年代ねんだいで、1973年ねんに北海道ほっかいどう大学だいがくのチームが世界せかいで初はじめて卵たまごを人工じんこうふ化ふかさせることに成功せいこうしました。

2010年ねん 完全かんぜん養殖ようしょくに成功せいこう 世界せかい初はつ

その後そのご、2002年ねんに当時とうじの水産すいさん総合そうごう研究けんきゅうセンターがアブラツノザメの卵たまごをエサにすることで、シラスウナギまで成長せいちょうさせることに成功せいこうし、2010年ねんには卵たまごから育そだてたウナギを親おやにして、さらにその卵たまごをふ化ふかさせる完全かんぜん養殖ようしょくに世界せかいで初はじめて成功せいこうしました。

ただ、当初とうしょは非常ひじょうに高たかいコストがかかり、水産すいさん総合そうごう研究けんきゅうセンターの後身こうしんとなる組織そしき「水産すいさん研究けんきゅう・教育きょういく機構きこう」の2016年度ねんどの試算しさんでは、シラスウナギ1匹ひきあたり4万まん円えん以上いじょうとなっていました。

その後そのごの研究けんきゅうで、ふ化ふかしてからのエサを高価こうかなアブラツノザメの卵たまごからニワトリの卵たまごなどに切り替きりかえることに成功せいこうしたことや、水槽すいそうの形かたちを工夫くふうして卵たまごからシラスウナギまで育そだつ割合わりあいを高たかめたことなどで現在げんざいは、シラスウナギ1匹ひきあたりのコストは1821円えんにまで下さがったということです。

天然てんねんシラスウナギ 価格かかく高騰こうとう

一方いっぽう、現在げんざい、ウナギの養殖ようしょくに使つかわれている天然てんねんのシラスウナギは近年きんねん、漁獲ぎょかく量りょうが減へり、価格かかくが高騰こうとうしています。

業界ぎょうかい団体だんたいの統計とうけいや水産庁すいさんちょうによりますと、シラスウナギの取引とりひき価格かかくは上昇じょうしょう傾向けいこうとなっていて、ことしは1キロあたり250万まん円えん、1匹ひきあたりにするとおよそ500円えんと20年ねん前まえと比くらべておよそ10倍ばいとなっています。

水産すいさん研究けんきゅう・教育きょういく機構きこうでは、自動じどうでエサを与あたえることができる装置そうちの開発かいはつや、成長せいちょうの早はやいウナギの品種ひんしゅ改良かいりょうなどの研究けんきゅうを進すすめているということで、完全かんぜん養殖ようしょくのシラスウナギ、1匹ひき当あたりのコストが1000円えんを下回したまわることを目指めざしているということです。