戦後の
日本文学を
代表する
作家、
三島由紀夫の
長編小説「
金閣寺」について、
三島が
原題を「
人間病」
などと
構想していたことを
示す編集者への
手紙が
見つかりました。
手紙は、
東京の
日本近代文学館で
開かれている
企画展で
展示が
始まっていて、
多くの
ファンが
訪れています。
手紙は、三島由紀夫の当時の住所などから「金閣寺」の連載が始まる前年の1955年6月に編集者に宛てて書いたものだとみられ、東京 目黒区の日本近代文学館で開かれている三島の生誕100年に合わせた企画展で展示されています。
この中で三島は新しい小説のテーマについて「題は『人間病』(人間存在といふ病気の治療法について)あるひは『人間病院』といふのです」などと記し、当初「金閣寺」とは異なる原題を考えていたことが分かります。
「金閣寺」は実際に起きた放火事件を題材に、きつ音によるコンプレックスを抱えつつも、金閣寺の美しさにとりつかれた学僧の複雑な心理を描いた作品ですが、手紙ではあらゆるコンプレックスを抱えた芸術家が主人公で、意志や芸術の力で人間であるという病気を治していくといった物語の設定にも触れられています。
「金閣寺」誕生の秘密に迫る発見ということもあり、企画展には多くの三島ファンが訪れていました。
展示を担当した白百合女子大学の井上隆史教授は「人間は病を抱える存在で、芸術が癒やすことができるのではないかという問いや、病を癒やすことが本当に人間にとって幸せかは分からないという深いテーマがもともとあったことがうかがえ、編集者とのやり取りの中で三島が自分の考えを深めていった過程も分かり貴重な発見だ」と話していました。
企画展は来年2月8日まで開かれています。