SDV開発かいはつで「打倒だとうテスラ」!? 日本にっぽんの自動車じどうしゃ産業さんぎょう 新しん戦略せんりゃくの内容ないようは

都内とないのスタートアップ企業きぎょうが取り組とりくんでいるのは「ＳＤＶ」と呼よばれる車くるまの開発かいはつ。

まるでスマートフォンのように、ソフトウエアの書き換かきかえで車くるまの性能せいのうを更新こうしんできる、次世代じせだいの車くるまです。

アメリカのテスラや中国ちゅうごくのメーカーが先行せんこうしてきた分野ぶんやで、日本にっぽんの自動車じどうしゃ産業さんぎょうの生き残いきのこりに向むけて、政府せいふがまとめた新あらたな戦略せんりゃく案あんの内容ないようとは？

実用じつよう化かされた「SDV」 画面がめんタッチでソフトウェア更新こうしん 　

アメリカのテスラは、「SDV」を実用じつよう化かし、日本にっぽんでも2014年ねんから販売はんばいしています。

ソフトウエアの更新こうしんが必要ひつようになると、運転うんてん席せきと助手じょしゅ席せき間かんにあるタッチパネルの画面がめんに通知つうちされる仕組しくみです。画面がめんにある「更新こうしん」の表示ひょうじをタッチすると、そのまま更新こうしん作業さぎょうが始はじまります。

横浜よこはま市しにある店舗てんぽに展示てんじされている車くるまでその様子ようすを取材しゅざいしたところ、ソフトウエアの軽微けいびな修正しゅうせいのための更新こうしん作業さぎょうが始はじまり、およそ30分ふんで作業さぎょうは完了かんりょうしました。

会社かいしゃによりますと、ソフトウエアの更新こうしんは、車くるまの省エネしょうえね性能せいのうを高たかめるために使つかわれるほか、世界中せかいじゅうで走行そうこうする自社じしゃの車くるまから収集しゅうしゅうした事故じこのデータに基もとづいてエアバッグの作動さどうの条件じょうけんを変更へんこうすることなどにも使つかわれているということです。また、搭載とうさいされたゲームの機能きのうを増ふやすこともできるということです。

合言葉あいことばは「打倒だとうテスラ」

日本にっぽんのスタートアップ企業きぎょうのなかには、大手おおて自動車じどうしゃメーカーに先行せんこうする形かたちで、「SDV」の車くるまづくりに取り組とりくんでいるところもあります。

東京とうきょう・品川しながわに本社ほんしゃがあるスタートアップ企業きぎょうは、2030年ねんに完全かんぜん自動じどう運転うんてんの車くるまを1万まん台だい、市場しじょうに投入とうにゅうすることを目指めざしています。

去年きょねん、試作しさく車しゃも完成かんせいし、いまは運転うんてんを制御せいぎょする技術ぎじゅつの実用じつよう化かに向むけて、膨大ぼうだいな画像がぞうや音声おんせいのデータを解析かいせきする生成せいせいAIや半導体はんどうたいの開発かいはつを進すすめています。

この会社かいしゃは、完全かんぜん自動じどう運転うんてんでは、随時ずいじ、走はしりや安全あんぜん性せいに関かかわるソフトウエアを更新こうしんし、性能せいのうをアップデートしていく仕組しくみが欠かかせないとして、「SDV」の車くるまを前提ぜんていに開発かいはつを進すすめています。

この分野ぶんやでは、アメリカのテスラや中国ちゅうごくのEVメーカーが先行せんこうしていますが、日本にっぽんは、自動車じどうしゃメーカーや部品ぶひんメーカー各社かくしゃがこれまで培つちかってきた安全あんぜん性せいなどに関にかんする知見ちけんを生いかすことで、十分じゅうぶん、巻き返まきかえしが可能かのうだと指摘してきしています。

「チューリング」青木あおき俊介しゅんすけCTO

「ソフトウエアが車くるまの核かくになると、携帯けいたい電話でんわがスマートフォンになった時ときのように、想像そうぞうし得えないような変革へんかくが必かならず起おきる。われわれは『打倒だとうテスラ』という合言葉あいことばを掲かかげて会社かいしゃをやっている。ソフトウエア化かによって、自動車じどうしゃが大おおきく変かわっても、日本にっぽんはまだ勝かてると思おもう」

SDVとは

SDV＝ソフトウエア・デファインド・ビークル、直訳ちょくやくすると「ソフトウエアによって定義ていぎされる車くるま」は、メーカー各社かくしゃにとって次世代じせだいの車くるまの開発かいはつに向むけた重要じゅうようなテーマとなっています。

SDVは、部品ぶひんなどのハードウエアではなく、ソフトウエアを更新こうしんすることで自動車じどうしゃの機能きのうや性能せいのうを継続けいぞく的てきに高たかめることができます。

その利点りてんは、販売はんばいした後のちでもソフトの更新こうしんによって車くるまの性能せいのうを高たかめたり、不ふ具合ぐあいの修正しゅうせいも行おこなえたりすることで、アメリカのテスラが実用じつよう化かしたことをきっかけにその流ながれが加速かそくしました。

日本にっぽんメーカー各社かくしゃもSDV開発かいはつ強化きょうか

こうしたなか、日本にっぽんメーカー各社かくしゃも、運転うんてん支援しえんの機能きのうや将来しょうらいの自動じどう運転うんてんなどに向むけてSDVの開発かいはつの強化きょうかに乗り出のりだしています。

＜トヨタ自動車とよたじどうしゃ＞

車載しゃさい用ようの基本きほんソフトの自社じしゃ開発かいはつを進すすめていて、ほかのメーカーへの供給きょうきゅうも含ふくめて来年らいねん、世界せかいに展開てんかいする車種しゃしゅへの搭載とうさいを目指めざしています。

＜ホンダ＞

自動じどう運転うんてん技術ぎじゅつなどの導入どうにゅうで大量たいりょうのデータの処理しょりが必要ひつようになることから、車載しゃさい用ようの次世代じせだい半導体はんどうたいやソフトウエアの開発かいはつをアメリカのIBMと共同きょうどうで行おこなう計画けいかくを先週せんしゅう、明あきらかにしました。

＜日産にっさん自動車じどうしゃ＞

新あらたに開発かいはつするソフトウエアを搭載とうさいした車くるまを2026年ねん以降いこうに投入とうにゅうする計画けいかくです。

日本にっぽんの自動車じどうしゃ産業さんぎょうは、さまざまな部品ぶひんによる最適さいてきな設計せっけいを行おこなうことで車くるまの性能せいのうを高たかめていく“すり合すりあわせ”の技術ぎじゅつを強つよみとしてきました。SDVは、こうしたハードウエアが中心ちゅうしんの従来じゅうらいのものづくりの常識じょうしきから大おおきな変革へんかくを迫せまるものとなっています。

ただ、日本にっぽんの自動車じどうしゃメーカー各社かくしゃは、ものづくりで培つちかってきた製品せいひんの信頼しんらい性せいはこれからも求もとめられるとして、ソフトウエアの分野ぶんやでもその強つよみを生いかそうと開発かいはつに力ちからを入いれています。

政府せいふ 新しん戦略せんりゃく案あん“2030年ねんに世界せかいシェアの3割わりまで高たかめる“

政府せいふは、日本にっぽんの自動車じどうしゃ産業さんぎょうの生き残いきのこりに向むけた新あらたな戦略せんりゃくの案あんを取とりまとめ、公表こうひょうしました。

「SDV」の車くるまの開発かいはつに取り組とりくみ、2030年ねんに日本にっぽんメーカーの世界せかいシェアを3割わりまで高たかめる目標もくひょうを掲かかげています。

世界せかいの自動車じどうしゃ業界ぎょうかいでは、EV＝電気でんき自動車じどうしゃや自動じどう運転うんてん技術ぎじゅつの開発かいはつが進すすみ、アメリカや中国ちゅうごくの新興しんこうメーカーが存在そんざい感かんを増ますなど、競争きょうそう環境かんきょうが大おおきく変化へんかしています。

こうした中なかで、政府せいふは自動車じどうしゃメーカーなどを交まじえた会議かいぎで、日本にっぽんの自動車じどうしゃ産業さんぎょうの生き残いきのこりに向むけた方策ほうさくを検討けんとうしてきましたが、20日にち、新あらたな戦略せんりゃくの案あんを取とりまとめ、公表こうひょうしました。

それによりますと、「SDV」の車くるまの開発かいはつにオールジャパンで取り組とりくむ必要ひつよう性せいを指摘してきしています。

そのうえで、自動車じどうしゃ向むけの高性能こうせいのうな半導体はんどうたいの研究けんきゅう開発かいはつやソフトウエアの標準ひょうじゅん化かなどの分野ぶんやで、日本にっぽんのメーカーどうしの連携れんけいを促うながしていくほか、自動じどう運転うんてんのトラックやタクシーの開発かいはつも支援しえんしていくとしています。

そして、2030年ねんにこの分野ぶんやで立ち遅たちおくれている日本にっぽんメーカーのSDVの世界せかいシェアを3割わりまで高たかめる目標もくひょうを掲かかげています。

20日にちの会議かいぎで、経済けいざい産業さんぎょう省しょうの伊吹いぶき英明ひであき製造せいぞう産業さんぎょう局長きょくちょうは「国際こくさい競争きょうそうも非常ひじょうに激はげしく、海外かいがい勢ぜいが先行せんこうしている分野ぶんやもあると思おもうので、官民かんみん連携れんけいやスタートアップも含ふくめた民間みんかんどうしの連携れんけいを具体ぐたい化かしていきたい」と述のべました。

脱だつ炭素たんそやデジタル化かで「ゲームチェンジ」

政府せいふがまとめた新あらたな戦略せんりゃく案あんでは、自動車じどうしゃ産業さんぎょうにおいて、脱だつ炭素たんそやデジタル化かを背景はいけいに「ゲームチェンジ」が起おきると指摘してきしています。

そのうえで、世界せかい的てきに競争きょうそうが激化げきかしている領域りょういきとして次つぎの3つを挙あげ、オールジャパンで取り組とりくむ必要ひつよう性せいを強調きょうちょうしています。

▼ソフトウエアの書き換かきかえで車くるまの性能せいのうを更新こうしんできる「SDV」

▼自動じどう運転うんてんなどの「モビリティサービス」

▼「データ利り活用かつよう」

「SDV」の領域りょういきは

EV＝電気でんき自動車じどうしゃや高こう価格かかく帯たいの車くるまから「SDV」化かが進すすむと予測よそくし、2027年ねんまでに自動車じどうしゃ向むけの高性能こうせいのうな半導体はんどうたいの研究けんきゅう開発かいはつや生成せいせいAIの活用かつよう、ソフトウエアの標準ひょうじゅん化かで日本にっぽんメーカーどうしの連携れんけいを促うながすなど、海外かいがい勢ぜいに対抗たいこうするための基盤きばんづくりを進すすめるとしています。そして、2030年ねんにこの分野ぶんやで立ち遅たちおくれている日本にっぽんメーカーのSDVの世界せかいシェアを3割わりまで高たかめるとしています。

さらに2035年ねんに向むけては、ハイブリッド車しゃやプラグインハイブリッド車しゃなどでもSDVへの転換てんかんを進すすめ、グローバルに展開てんかいしていくと打ち出うちだしています。

「モビリティサービス」の領域りょういきは

今年度こんねんど中ちゅうに、高速こうそく道路どうろに専用せんようレーンを設もうけ、自動じどう運転うんてんトラックの実証じっしょう実験じっけんを始はじめるほか、自動じどう運転うんてんトラックを運行うんこうする新しん会社かいしゃの設立せつりつも検討けんとうするとしています。

また、アメリカや中国ちゅうごくの一部いちぶの都市としで始はじまっている、自動じどう運転うんてんタクシーの早期そうきの実用じつよう化かも目指めざします。

「データ利り活用かつよう」の領域りょういきは

各社かくしゃのデータを連携れんけいする基盤きばんを構築こうちくし、各社かくしゃ単独たんどくでは出来できない新あらたなビジネスを作り出つくりだしていくとしています。

具体ぐたい的てきには、自動車じどうしゃの製造せいぞうから利用りよう、廃棄はいきまでの各かくプロセスでの二に酸化さんか炭素たんその排出はいしゅつ量りょうなどのデータを活用かつようし、各社かくしゃが環境かんきょうへの影響えいきょうを評価ひょうかできる仕組しくみなどを構築こうちくするとしています。

政府せいふは、これらの領域りょういきでの取り組とりくみをオールジャパンで進すすめていくため、情報じょうほう共有きょうゆうや人材じんざい育成いくせいの場ばを提供ていきょうする、産官学さんかんがくの新あらたな枠組わくぐみをことし秋あきごろに立たち上あげるとしています。

専門せんもん家か　“まったく違ちがう知見ちけんや取り組とりくみ必要ひつよう”　

自動車じどうしゃ産業さんぎょうに詳くわしい東海とうかい東京とうきょうインテリジェンス・ラボの杉浦すぎうら誠司せいじシニアアナリストに、政府せいふが、日本にっぽんのSDVの世界せかいシェアを3割わりまで高たかめるとする目標もくひょうを掲かかげたことについて聞ききました。

「アメリカのテスラや中国ちゅうごくメーカーのSDVの開発かいはつが、私わたしたちの想像そうぞう以上いじょうに速はやいスピードで進化しんかし、新あたらしいアイデアが生うまれている。日本にっぽんの自動車じどうしゃメーカーにとっても、新あらたな経営けいえい課題かだいとして急速きゅうそくに台頭たいとうしてきたことが背景はいけいにある」

そのうえで、政府せいふや各かくメーカーに求もとめられる対応たいおうについては、次つぎのように指摘してきしています。

「日本にっぽんの自動車じどうしゃメーカーにとっても、これまで得意とくいとしてきた機械きかい工学こうがく的てきな世界せかいからまったく違ちがう知見ちけんや経営けいえいの取り組とりくみが必要ひつようになってくる。これまで想定そうていしなかった新あたらしいビジネスが生うまれてくるので、政府せいふは、障害しょうがいとなる規制きせいは緩和かんわして産業さんぎょうを育そだてていくというスタンスが求もとめられる」