アイスランドの噴火ふんかから5か月かげつ 今いまも約やく3700人にんが避難ひなん生活せいかつ

噴火ふんかが続つづいているのは南西なんせい部ぶのレイキャネス半島はんとうで、去年きょねん12月つき、地面じめんの亀裂きれつから溶岩ようがんが噴き出ふきだして以来いらい、合あわせて4回かいの噴火ふんかが起おきました。

アイスランド気象庁きしょうちょうによりますと、溶岩ようがんが流ながれた地表ちひょうの面積めんせきは4月つき中旬ちゅうじゅんの時点じてんで6平方キロメートルへいほうきろめ-とる余あまりにおよび、その一部いちぶは火口かこうから南西なんせいに3キロ離はなれた町まちグリンダビークにゆっくりと押し寄おしよせています。

アイスランド政府せいふは町まちを溶岩ようがん流りゅうから守まもるため、土砂どしゃをおよそ10メートルの高たかさに積み上つみあげた防護ぼうご壁かべを町まちを囲かこむように作つくりましたが、押し寄おしよせた溶岩ようがん流りゅうはすでに防護ぼうご壁かべの高たかさに達たっし、壁かべを乗り越のりこえつつあります。

グリンダビークではおよそ3800人にんの住民じゅうみんのほとんどが町まちの外そとに避難ひなんしているものの、噴火ふんかの影響えいきょうが少すくないと判断はんだんされた地区ちくの100人にんほどが自宅じたくにとどまっているほか、日にち中ちゅうは町内ちょうないの水産物すいさんぶつ工場こうじょうなどで働はたらいている人ひともいます。

こうした人ひとたちの安全あんぜんや住宅じゅうたくなどを守まもるため、防災ぼうさい当局とうきょくは無人むじんカメラで火山かざん活動かつどうを24時間じかん態勢たいせいで監視かんししたり、ドローンで撮影さつえいした立体りったい画像がぞうで溶岩ようがんの流ながれなどを分析ぶんせきしたりしていて、状況じょうきょうに応おうじ避難ひなんを呼よびかけることにしています。

防災ぼうさい当局とうきょく「生活せいかつ再建さいけんできるよう 町まちを守まもっていく」

防災ぼうさい当局とうきょくのマネージャー、アルナ・エリションさんは「溶岩ようがん流りゅうが防護ぼうご壁かべを越こえるような事態じたいになれば消防しょうぼうによる放水ほうすいを行おこない、溶岩ようがんを冷ひやす計画けいかくだ。町まちの人ひとたちがいつか自宅じたくに戻もどり、生活せいかつを再建さいけんできるように町まちを守まもっていかなければならないが、自然しぜんは動うごき続つづけている。この状況じょうきょうは何なん年ねんも続つづく可能かのう性せいがあることを受け入うけいれる必要ひつようがある」と話はなしています。

被災ひさい地ちの現状げんじょうは

NHKの取材しゅざい班はんは4月つき、アイスランド当局とうきょくの立ち会たちあいのもと、グリンダビークの町まちに入はいりました。

風かぜの向むきや強つよさによっては有毒ゆうどくな火山かざんガスの濃度のうどが高たかくなるため、ガスマスクを持ち歩もちあるく必要ひつようがあり、実際じっさいに時折ときおり、装着そうちゃくするよう指示しじされました。

町内ちょうないに人ひとの姿すがたはまばらで、地面じめんや道路どうろなどあちらこちらに噴火ふんかに伴ともなう地殻ちかく変動へんどうによってできた深ふかい亀裂きれつが見みられました。

当局とうきょくによりますとこうした亀裂きれつに作業さぎょう員いんの男性だんせい1人にんが転落てんらくして亡なくなったということです。

また、町まちを守まもる防護ぼうご壁かべの内側うちがわでも小規模しょうきぼな噴火ふんかが起おきたため、そこから流ながれてきた溶岩ようがんに飲のまれた住宅じゅうたく数すう軒けんが焼け落やけおち、黒くろく固かたまった溶岩ようがんの中なかには焦こげた車くるまもありました。

避難ひなん続つづける住民じゅうみん “復帰ふっきへの希望きぼうは失うしなっていない”

住民じゅうみんの多おおくは今いまも避難ひなんを余儀よぎなくされ、グリンダビークで生うまれ育そだった写真しゃしん家かのインギ・ヨナソンさん（47）もその1人にんです。

最初さいしょの噴火ふんかが始はじまる前まえの去年きょねん11月つきに自宅じたく前まえの地面じめんが陥没かんぼつしたため家族かぞくとともに町まちを逃のがれ、その後そのご、友人ゆうじんの家いえや借家しゃくやなどを転々てんてんとしています。

グリンダビークは住民じゅうみんどうしが家族かぞくのように親したしくつきあい、2人にんの子こどもが安心あんしんして遊あそべる町まちだったと振り返ふりかえりますが、噴火ふんか後ごは子こどもたちも学校がっこうの友達ともだちと離れ離はなればなれになってしまったということで、許可きょかが下おりれば一刻いっこくも早はやく町まちに戻もどり、地域ちいきの再建さいけんをしたいと言いいます。

ヨナソンさんは「過去かこの例れいを見みるとこの噴火ふんかは100年ねん、200年ねん続つづくかもしれない。それでも町まちの灯あかりを消けしたくないし、復帰ふっきへの希望きぼうは失うしなっていない」と話はなしています。

噴火ふんか続つづく中なか 政府せいふは地元じもとの経済けいざい活動かつどう推し進おしすすめる

こうした中なかで政府せいふは噴火ふんかが続つづく中なかでも、安全あんぜん対策たいさくを講こうじながら地元じもとの経済けいざい活動かつどうを推し進おしすすめようとしています。

アイスランドの電力でんりょくのおよそ30％を構成こうせいするのは地熱ちねつ発電はつでんですが、グリンダビークの町まちなどに電力でんりょくを供給きょうきゅうしている地熱ちねつ発電はつでん所しょでは、溶岩ようがん流りゅうが一時いちじ、1キロ先さきまで迫せまりました。

それでも発電はつでん所しょの周まわりに短たん期間きかんで建設けんせつされた防護ぼうご壁かべと、防災ぼうさい当局とうきょくから毎日まいにち提供ていきょうされる噴火ふんか関連かんれんの情報じょうほうによって安全あんぜんを確保かくほし、一いち度ども中断ちゅうだんせず稼働かどうを続つづけているということです。

被災ひさい地ち近ちかくの観光かんこう名所めいしょは

一方いっぽう、グリンダビーク近ちかくにある観光かんこう名所めいしょの温泉おんせん施設しせつ「ブルーラグーン」は、噴火ふんかが始はじまった去年きょねん12月つきからの4か月かげつで100日にち近ちかく休業きゅうぎょうし、売り上うりあげが日本にっぽん円えんでおよそ50億おく円えん落ち込おちこんだということです。

対策たいさくとして施設しせつ内ないの40か所かしょに火山かざんガスの検知けんち器きを設もうけ、さらに当局とうきょくの避難ひなん指示しじを知しらせる防災ぼうさいスピーカーも取り付とりつけるなどして、4月つき、本格ほんかく的てきな営業えいぎょう再開さいかいにこぎ着こぎつけました。

温泉おんせん施設しせつの部長ぶちょう「運営うんえい 生活せいかつ 前進ぜんしんしていく方法ほうほうを見みつけなければ」

温泉おんせん施設しせつのシグドゥル・トステンション部長ぶちょうは「再開さいかいするためにはすべての利用りよう者しゃを40分ふん以内いないに避難ひなんさせる方法ほうほうを確立かくりつさせなければならなかった。難むずかしい課題かだいだったがそもそも火山かざん活動かつどうがなければ、この施設しせつは存在そんざいしえない。何なんとか運営うんえいし、生活せいかつし、前進ぜんしんしていく方法ほうほうを見みつけなければならない」と話はなしています。

噴火ふんかが観光かんこうの後押あとおしにも 国外こくがいからの来訪らいほう増加ぞうか

噴火ふんかが続つづく中なかでも、アイスランドが経済けいざい活動かつどうを進すすめられる要因よういんの一ひとつに、噴火ふんかが爆発ばくはつ的てきなものになっていないことがあります。

2010年ねんには、氷河ひょうがの下したで発生はっせいした噴火ふんかによって大だい規模きぼな水蒸気すいじょうき爆発ばくはつが起おきて火山灰かざんばいが広ひろい範囲はんいに広ひろがり、ヨーロッパ各地かくちの空港くうこうで合あわせて10万まん便びん以上いじょうが欠航けっこうする事態じたいとなりましたが、今回こんかいは航空こうくう便びんへの影響えいきょうはほとんど出でていません。

こうした状況じょうきょうを背景はいけいに、噴火ふんか後ごに外国がいこくからアイスランドを訪おとずれた人ひとは、前まえの年としの同おなじ時期じきに比くらべて10％ほど増ふえたことが政府せいふの統計とうけいで明あきらかになっています。

首都しゅとレイキャビクで溶岩ようがんを使つかったショーを運営うんえいする観光かんこう施設しせつの経営けいえい者しゃは「安全あんぜんな環境かんきょうのもとで火山かざんについて知しりたいという人ひとが増ふえている。私わたしたちにとって、今回こんかいの噴火ふんかは後押あとおしになった」と話はなしています。

“火山かざん活動かつどう 場合ばあいにより数すう百ひゃく年ねん続つづく可能かのう性せいも”

今後こんごの噴火ふんかの見通みとおしについて、アイスランド気象庁きしょうちょうのエリサベト・パルマドッティル専門せんもん員いんは、レイキャネス半島はんとうの地下ちかには現在げんざい、新あらたなマグマがたまり始はじめていることから、近ちかく、地表ちひょうに新あらたな火口かこうができ、マグマが噴出ふんしゅつする可能かのう性せいがあるとしています。

ただ、長期ちょうき的てきな予測よそくはほぼ不可能ふかのうで、終息しゅうそくの見通みとおしは立たっていないとしたうえで「レイキャネス半島はんとうの地質ちしつ学がく的てきな歴史れきしを見みると、火山かざん活動かつどうは数すう十じゅう年ねん、場合ばあいによって数すう百ひゃく年間ねんかん続つづく可能かのう性せいもある」と指摘してきしています。

アイスランドにはおよそ30の活火山かっかざんがあり、ほかの地域ちいきでいつ同おなじような事態じたいが起おきてもおかしくない状況じょうきょうです。

環境かんきょう・エネルギー・気候きこう相しょう “火山かざんとの共存きょうぞん続つづける覚悟かくご”

これについてトールダルソン環境かんきょう・エネルギー・気候きこう相しょうは「アイスランド人じんのDNAには自然しぜんを敬うやまう意識いしきが組み込くみこまれている。道路どうろや建物たてものを計画けいかくするときは最悪さいあくの事態じたいを想定そうていしている上うえ、常つねに学まなぼうとしている。今回こんかいの噴火ふんかについても現状げんじょうに満足まんぞくせず、最新さいしん技術ぎじゅつを使つかってグリンダビーク周辺しゅうへんだけでなく、ほかの地域ちいきも監視かんししていく必要ひつようがある」と述のべ、今後こんごもできるかぎりの安全あんぜん対策たいさくを講こうじながら、火山かざんとの共生きょうせいを続つづけていく覚悟かくごを示しめしました。