アメリカのメディアは、男の車や自宅から爆発物の材料が見つかったと伝えていて、捜査当局が事件の背景や動機の解明を急いでいます。
容疑者は地元の20歳男 “車から爆発物の材料”
アメリカのトランプ前大統領は、東部ペンシルベニア州で13日、選挙集会の演説中に銃撃を受け、右の耳にけがをしました。また、集会の参加者1人が死亡し、2人が重傷だということです。
トランプ氏に対する暗殺未遂事件として捜査を進めるFBI=連邦捜査局は14日、声明を出し、銃撃に関与した疑いでその場で射殺された男について、地元に住むトーマス・クルックス容疑者、20歳と特定したと発表しました。
アメリカのABCテレビなど主要メディアは、クルックス容疑者が使用したのは殺傷能力が高いライフル銃「AR15」で、容疑者の父親が合法的に購入したものだと報じました。
また、AP通信は、捜査関係者の話として、容疑者の車や自宅から爆発物の材料が見つかったと伝えています。
クルックス容疑者は共和党員として有権者登録をしていたと、アメリカのメディアが伝えていて、過激派組織とのつながりがあったのかなど詳しいことは分かっていません。
バイデン大統領は14日の会見で「捜査は初期段階にあり、容疑者の動機については分かっていない」と述べていて、捜査当局が事件の背景や動機の解明を急いでいます。
アメリカ社会では今回の事件に大きな衝撃が広がっていて、今後の選挙戦にどのような影響を与えるのかにも関心が集まっています。
欧米メディア 容疑者の顔写真伝える
トランプ前大統領が選挙集会の演説中に銃撃された事件で、欧米のメディアは、FBI=連邦捜査局が容疑者として特定したトーマス・クルックス容疑者の顔写真を伝えています。
写真はクルックス容疑者が高校に通っていた2020年につくられたイヤーブックに掲載されたもので、メガネをかけてTシャツを着た容疑者が写っています。
CNNテレビは、容疑者の人となりについて、在学当時、学校生活になじめずいじめられていたとする同級生の話を報じています。
トランプ氏 銃撃から一夜明け “団結が重要”
銃撃事件から一夜明けた現地時間の14日朝、トランプ前大統領は自身のSNSに「皆さんのきのうの思いと祈りに感謝する。われわれは恐れない。信仰を保ち、邪悪に抵抗し続ける」と投稿した上で事件で亡くなった人に哀悼の意を表してけがをした人たちの回復を願うとしています。
また、トランプ氏は「私たちが団結してアメリカ人としての真の姿を示し、強く決意を固めて悪に勝たせないことがいま、これまでになく重要だ」としています。
そして「ウィスコンシンから偉大な国民にむけて話すことを楽しみにしている」と投稿し、今月15日から中西部ウィスコンシン州で開催される、大統領選挙の共和党の候補者を正式に決定する党大会に出席する意向を示しました。
トランプ氏 予定どおり共和党大会に出発へ
アメリカのトランプ前大統領は14日、みずからのSNSに投稿し「前日の恐ろしい事件を受け、共和党大会への出発を2日間遅らせることを考えたが、銃撃犯によってスケジュールの変更が余儀なくされるのは許されないと判断した」として、共和党大会が開かれる中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーに向けて、予定どおり、14日午後に出発すると明らかにしました。
容疑者が狙撃したとみられる建物は
容疑者がトランプ氏を狙撃したとみられる建物は、トランプ氏が演説をしていたステージから見て右の方向にあります。建物の周りには高い木があり、傾斜がそれほどない屋根にうつ伏せになっていたとみられる容疑者の姿は、周囲から見えにくかったことがうかがえます。
事件のあと、選挙集会の参加者やメディアはシークレットサービスからすぐに会場を出るよう指示されましたが、敷地内の駐車場ではNHKの取材班も中継や目撃者のインタビューを行うことができました。
しかし、一夜明けた14日朝からは警察が駐車場を含む敷地のすべての出入り口を封鎖しています。
容疑者の自宅とみられる場所の周辺は
アメリカ東部ペンシルベニア州のピッツバーグから南に10キロほど離れたべセルパークにある、クルックス容疑者の自宅とみられる場所の周辺は、現地時間の14日朝、広い範囲にわたって閉鎖されています。
規制線が張られた場所からは住宅を直接、確認することはできず、閉鎖された区域内には複数の警察官の姿がみられます。
また、複数のメディアが遠くからカメラを構えていますが、大きな動きはみられません。
警備員によりますと、住民たちは警察の指示で一時的に別の場所に移っているということです。
バイデン大統領がトランプ氏と電話 “よい会話だった”
ホワイトハウスは14日、バイデン大統領がハリス副大統領とともに、危機管理にあたるための「シチュエーション・ルーム」でガーランド司法長官やマヨルカス国土安全保障長官、それにFBI=連邦捜査局のレイ長官らから最新の捜査状況などについて説明を受けたと発表しました。
バイデン大統領はそのあと、ホワイトハウスで会見し、13日に行ったトランプ前大統領との電話について「彼が元気で回復していることを心からありがたく思う。短時間だったが、よい会話だった」と述べました。
そして「このような暴力はアメリカにふさわしくない」と述べて、今回の事件を重ねて非難しました。
また、容疑者については「動機に関する情報はまだ何もない」とした上で、捜査中であり動機などを推測することは避けるべきだとして、国民に結束を呼びかけました。
さらにバイデン大統領は、シークレット・サービスに対し、トランプ氏の警護を改めて徹底することや、15日から中西部ウィスコンシン州で開催される共和党の全国党大会の警備を見直すよう命じたことを明らかにしました。
一方、ホワイトハウスは、バイデン大統領が15日にイベントに出席するため予定していた南部テキサス州への訪問を延期すると発表しました。
英 スターマー首相もトランプ氏と電話
イギリスの首相官邸は14日、スターマー首相が、13日に銃撃されてけがをしたトランプ前大統領と電話で話をしたと発表しました。
この中でスターマー首相は暴力を非難し、事件の犠牲者と家族への哀悼の意を表すとともに、トランプ氏やけがをした人たちの早期回復を願う気持ちを伝えたということです。