オスプレイ墜落ついらく事故じこ “待機たいき求もとめられ旋回せんかい 着陸ちゃくりく直前ちょくぜんに墜落ついらくか”

オスプレイが墜落ついらくするまでの詳くわしい飛行ひこう状況じょうきょうが明あきらかに

去年きょねん11月つき29日にち、鹿児島かごしま県けんの屋久島やくしま空港くうこうの南東なんとうの海上かいじょうで、東京とうきょうの横田よこた基地きちに所属しょぞくするアメリカ空軍くうぐんの輸送ゆそう機きオスプレイが墜落ついらくし、乗員じょういん8人にん全員ぜんいんが死亡しぼうしました。

この事故じこについて、複数ふくすうの関係かんけい者しゃへの取材しゅざいや目撃もくげき者しゃの証言しょうげんなどから、オスプレイが墜落ついらくするまでの詳くわしい飛行ひこうの状況じょうきょうが明あきらかになりました。

それによりますとオスプレイは、

▽墜落ついらくの5分ふんほど前まえの午後ごご2時じ35分ふんごろから36分ふんごろにかけて、屋久島やくしま空港くうこうの北きたの沖合おきあい上空じょうくうでこのエリアを管轄かんかつする鹿児島かごしま空港くうこうの航空こうくう管制かんせい運航うんこう情報じょうほう官かんに対にたいし無線むせんで緊急きんきゅう事態じたいを伝つたえ、屋久島やくしま空港くうこうへの着陸ちゃくりくを求もとめました。

▽しかし、当時とうじ、屋久島やくしま空港くうこうの滑走かっそう路ろは民間みんかん機きが離陸りりくに向むけて使用しようしていて、運航うんこう情報じょうほう官かんがオスプレイに対にたいし「上空じょうくうでの待機たいき」を求もとめていたことがわかりました。

▽その後そのご、オスプレイは空港くうこう北東ほくとうの沖合おきあい上空じょうくうで旋回せんかいし、

▽民間みんかん機きが離陸りりくした後のち、午後ごご2時じ40分ふんごろに滑走かっそう路ろの南東なんとう側がわから着陸ちゃくりくする最終さいしゅう進入しんにゅう経路けいろの付近ふきんまで飛行ひこうしましたが、その直後ちょくごに沖合おきあいで墜落ついらくしたということです。

関係かんけい者しゃによりますと、こうした状況じょうきょうなどからオスプレイは緊急きんきゅう事態じたいを伝つたえたあとも、しばらくはある程度あるていど、機体きたいをコントロールできていたとみられ、その後そのご、短時間たんじかんで深刻しんこくな事態じたいに陥おちいって墜落ついらくした可能かのう性せいがあるということです。

この事故じこをめぐっては、アメリカ軍ぐんが機体きたいの残骸ざんがいやフライトレコーダーなどを回収かいしゅうし事故じこ原因げんいんの究明きゅうめいに向むけた調査ちょうさを進すすめています。

離島りとう空港くうこう”制約せいやく”も 軍用ぐんよう機きの飛来ひらい増加ぞうか

今回こんかいの屋久島やくしま空港くうこうと同様どうように離島りとうなどでは航空こうくう管制かんせいの運用うんように制約せいやくがある中なかで、近年きんねん、南西なんせい諸島しょとうの空港くうこうや周辺しゅうへんで軍用ぐんよう機きの飛行ひこうや緊急きんきゅう着陸ちゃくりくが増ふえています。

国土こくど交通こうつう省しょうによりますと、離島りとうや遠隔えんかく地ちなど比較的ひかくてき交通こうつう量りょうの少すくない空港くうこうでは、現地げんちに管制かんせい官かんなどを置おかずに別べつの空港くうこうにいる航空こうくう管制かんせい運航うんこう情報じょうほう官かんが無線むせん通信つうしんで離着陸りちゃくりくに必要ひつような情報じょうほうをパイロットに提供ていきょうしているところもあるということです。

こうした運用うんよう形態けいたいをとる空港くうこうは去年きょねん4月つきの時点じてんで、北海道ほっかいどうや東北とうほく地方ちほう、それに東京とうきょうの島とうしょ部ぶや南西なんせい諸島しょとうなど全国ぜんこく各地かくちの合あわせて38か所かしょに上のぼります。

屋久島やくしま空港くうこうもその1つで、民間みんかんの定期ていき便びんの離着陸りちゃくりくは一いち日にちに10回かい程度ていど、1時間じかん当あたり1回かいから2回かい程度ていどで、航空こうくう機きに対にたいしては鹿児島かごしま空港くうこうの航空こうくう管制かんせい運航うんこう情報じょうほう官かんがリモート無線むせん通信つうしんで情報じょうほう提供ていきょうを行おこなっています。

また、運航うんこう情報じょうほう官かんは、管制かんせい官かんとは異ことなり離着陸りちゃくりくや滑走かっそう路ろへの進入しんにゅうの許可きょかを出だすのではなく、あくまでも情報じょうほうを提供ていきょうして運航うんこうを支援しえんするのが業務ぎょうむで、これらの空港くうこうでは離着陸りちゃくりくなどを最終さいしゅう的てきに判断はんだんするのはパイロット自身じしんだということです。

南西なんせい諸島しょとうの空港くうこうなど 自衛隊じえいたい機きや米べい軍機ぐんきの飛行ひこうや緊急きんきゅう着陸ちゃくりくが増加ぞうか

このように航空こうくう管制かんせいの運用うんように制約せいやくがある一方いっぽうで、南西なんせい諸島しょとうで近年きんねん、自衛隊じえいたいやアメリカ軍ぐんの訓練くんれんなどが増加ぞうかしているのに伴ともない、自衛隊じえいたい機きやアメリカ軍機ぐんきが周辺しゅうへんを飛行ひこうしたり緊急きんきゅう着陸ちゃくりくなどで空港くうこうを一時いちじ的てきに使用しようしたりするケースが増ふえています。

国土こくど交通こうつう省しょうによりますと、おととし、南西なんせい諸島しょとうの自衛隊じえいたい機きが常駐じょうちゅうしない空港くうこうに自衛隊じえいたい機きが着陸ちゃくりくした回数かいすうは515回かいに上のぼるほか、アメリカ軍機ぐんきの着陸ちゃくりくは、奄美あまみ空港くうこうが50回かい、種子島たねがしま空港くうこうが49回かいなど合あわせて121回かいに上のぼり、5年間ねんかんでおよそ3倍ばいに増加ぞうかしていて、こうした着陸ちゃくりくの多おおくが管制かんせい官かんなどのいない空港くうこうで行おこなわれています。

日本にっぽん航空こうくうの元もと機長きちょう 航空こうくう評論ひょうろん家かの小林こばやし宏之ひろゆきさんは

今回こんかい明あきらかになった当時とうじの飛行ひこうの状況じょうきょうなどについて、日本にっぽん航空こうくうの元もと機長きちょうで、航空こうくう評論ひょうろん家かの小林こばやし宏之ひろゆきさんに聞ききました。

まず、オスプレイの飛行ひこうの状況じょうきょうについては「航跡こうせきを見みる限かぎり、墜落ついらく寸前すんぜんまではパイロットのコントロール下かにあったと言いえると思おもう。上空じょうくうで1回かい旋回せんかいしながら待機たいきするところまではパイロットがコントロールできていたが、その後そのご、最終さいしゅう進入しんにゅうに入はいってからトラブルが急激きゅうげきに悪化あっかし、操縦そうじゅう不能ふのうになって墜落ついらくしたと推測すいそくできる」と指摘してきしています。

また、オスプレイが緊急きんきゅう事態じたいを伝つたえた際さい、屋久島やくしま空港くうこうの滑走かっそう路ろを別べつの民間みんかん機きが使用しようしていて、上空じょうくうでの待機たいきを求もとめられていたことについては「基本きほん的てきには、緊急きんきゅう事態じたい宣言せんげんした飛行機ひこうきを最さい優先ゆうせんさせるので、ほかの飛行機ひこうきについては離陸りりくも着陸ちゃくりくも待まってくださいというのがどこの空港くうこうにおいても原則げんそくだ」としたうえで、今回こんかいのケースでは、屋久島やくしま空港くうこうに管制かんせい官かんなどがいなかったことと滑走かっそう路ろに平行へいこうに設もうけられ、滑走かっそう路ろからの速すみやかな離脱りだつを可能かのうにする「平行へいこう誘導ゆうどう路ろ」がなかったことが影響えいきょうした可能かのう性せいを指摘してきしています。

小林こばやしさんは「管制かんせい官かんが配置はいちされていて目めで見みて状況じょうきょうを把握はあくできていたら、もう少もうすこし迅速じんそくな対応たいおうがとれた可能かのう性せいもある。また、平行へいこう誘導ゆうどう路ろがあれば『緊急きんきゅうの飛行機ひこうきがいるから、いったん誘導ゆうどう路ろに出でてください』ということもできたが、屋久島やくしま空港くうこうには管制かんせい官かんもおらず、平行へいこう誘導ゆうどう路ろもないので、離陸りりく機きが一度いちど滑走かっそう路ろに入はいってしまえば離陸りりくするまでオスプレイには空中くうちゅう待機たいきしてもらうしかなかったのではないか」と話はなしています。

そのうえで、こうした離島りとうの空港くうこう周辺しゅうへんで今回こんかいの事故じこが起おきたことについて「日本にっぽんをとりまく国際こくさい状況じょうきょうからして、軍用ぐんよう機きや自衛隊じえいたい機きが南西なんせい諸島しょとうに多おおく展開てんかいすることは今後こんごも考かんがえられ、今回こんかいのような事故じこやトラブルも増ふえる可能かのう性せいがある。また、今回こんかいはアメリカ軍ぐんの軍用ぐんよう機きだったが、同おなじことは民間みんかん機きでも起おこりうるので、今回こんかいの事故じこを教訓きょうくんに離島りとうの空港くうこうの安全あんぜんや人員じんいん配置はいちなどについても考かんがえる必要ひつようがあるのではないか」と指摘してきしています。