ポルトガルで見つかったこの書見台は、全体が黒の漆で塗られていて中心には松の木が描かれ、周囲は、貝殻のらでん細工がちりばめられています。
調査した東京文化財研究所の小林公治特任研究員によりますと、この書見台は聖書を読むときに使うもので、そのデザインから江戸時代初期にポルトガル人やスペイン人が日本の職人に作らせ海を渡った南蛮漆器の1つと見られています。
ただ、これには、これまで確認された書見台のほぼすべてにある十字架やイエス・キリストを示す「IHS」の文字など、キリスト教を示すデザインがないということです。
このため小林さんらがX線で撮影したところ、松の木の下に何かを剥がしたと見られる跡が見つかり、それらが十字架や「IHS」の文字の一部と確認できたということです。
書見台が作られたのは幕府がキリスト教の弾圧を強めていた時期で、その摘発を逃れるため宗教色を消して本国に送ったのではないかと見られています。
小林特任研究員は「単に上から絵を描くのではなく貝を取って何があったのかを完全に見えないようにしていて、宗教弾圧を恐れていた当時の人々の気持ちがわかる貴重な資料だ」と話しています。