「2024年ねん問題もんだい」運送うんそう業ぎょう 建設けんせつ業ぎょう 医師いしの時間じかん外がい労働ろうどうの上限じょうげん規制きせい開始かいし

働はたらき方かた改革かいかくに伴ともなって労働ろうどう基準きじゅん法ほうが改正かいせいされ、2019年ねんから多おおくの業種ぎょうしゅで時間じかん外がい労働ろうどうに上限じょうげんが設もうけられましたが、運送うんそう業ぎょうと建設けんせつ業ぎょう、それに医師いしは、準備じゅんび期間きかんとして5年間ねんかん、適用てきようが猶予ゆうよされていました。

4月つき1日にちから、これら3つの業種ぎょうしゅも規制きせいの適用てきようが始はじまり、

▽運送うんそう業ぎょうのトラックやバス、タクシーのドライバーは、時間じかん外がい労働ろうどうの上限じょうげんは原則げんそく、月つき45時間じかん、年とし360時間じかんとされ、特別とくべつな事情じじょうがあった場合ばあい、上限じょうげんは年とし960時間じかん以内いないとなります。

▽建設けんせつ業ぎょうの現場げんばで働はたらく人ひとも、災害さいがい復旧ふっきゅうや復興ふっこうの事業じぎょうにあたる場合ばあいを除のぞいて、他たの業界ぎょうかいと同様どうように、月つき45時間じかん、年とし360時間じかん以内いないの原則げんそくが適用てきようされ、特別とくべつな事情じじょうがある場合ばあいは、年とし720時間じかん以内いないが上限じょうげんとなります。

▽医師いしは、休日きゅうじつ労働ろうどうも含ふくめて、上限じょうげんは年とし960時間じかん、地域ちいきの医療いりょう提供ていきょう体制たいせいを確保かくほするために、やむをえず上限じょうげんを超こえる場合ばあいは、年とし1860時間じかんとなります。

これらの規制きせいによって、過労かろう死しなどのリスクに直面ちょくめんしてきた多おおくの現場げんばで、長時間ちょうじかん労働ろうどうの是正ぜせいが期待きたいされます。

一方いっぽうで、労働ろうどう時間じかんの減少げんしょうによって生しょうじると指摘してきされている、物流ぶつりゅうの停滞ていたいや路線ろせんバスの減げん便びん、それに地域ちいき医療いりょうへの影響えいきょうなどの、いわゆる「2024年ねん問題もんだい」に、社会しゃかいがどう対応たいおうしていくかが課題かだいとなっています。

大だい企業きぎょうでは5年ねん前まえから 時間じかん外がい労働ろうどうの上限じょうげん規制きせいとは

時間じかん外がい労働ろうどうの上限じょうげん規制きせいは、政府せいふの働はたらき方かた改革かいかくに伴ともなう労働ろうどう基準きじゅん法ほうの改正かいせいで、2019年ねん4月つきから大だい企業きぎょうに、2020年ねん4月つきからは中小ちゅうしょう企業きぎょうに適用てきようされていて、違反いはんした場合ばあいには罰則ばっそくが科かされます。

法定ほうてい労働ろうどう時間じかんは1日にち8時間じかん、週しゅう40時間じかんとなっていますが、時間じかん外がい労働ろうどうは、労使ろうしで協定きょうていを締結ていけつすることで、原則げんそくとして月つき45時間じかん、年とし360時間じかん以内いないと定さだめられました。

また、特別とくべつな事情じじょうがあって、労使ろうしが合意ごういする場合ばあいでも、月つき45時間じかんの原則げんそくを超こえることができるのは年間ねんかん6か月かげつまでで、この場合ばあいでも、年とし720時間じかん以内いないと定さだめられています。

さらに、休日きゅうじつ労働ろうどうを含ふくみ、複数ふくすうの月つきで平均へいきん80時間じかん以内いない、1か月かげつでは100時間じかん未満みまんとなっています。

ただ、トラックドライバーなどの自動車じどうしゃ運転うんてん手しゅや建設けんせつ業ぎょうの現場げんばでは、長年ながねんの慣行かんこうによって、個々ここの企業きぎょうだけで長時間ちょうじかん労働ろうどうを是正ぜせいすることが難むずかしいことや、医師いしは、患者かんじゃへの影響えいきょうが大おおきいことなどから、準備じゅんび期間きかんとして2024年ねん4月つき1日にちまで5年間ねんかん、適用てきようが猶予ゆうよされてきました。

運送うんそう業ぎょう

トラックやバス タクシー運転うんてん手しゅの上限じょうげん規制きせい

トラックやバス、タクシーのドライバーも、4月つき1日にちから時間じかん外がい労働ろうどうの上限じょうげん規制きせいが行おこなわれている企業きぎょうと同おなじ、月つき45時間じかん、年とし360時間じかん以内いないという原則げんそくが適用てきようされます。

ただ、特別とくべつな事情じじょうがある場合ばあいは、年とし960時間じかん以内いないまでと定さだめられています。

労働ろうどう時間じかんと休息きゅうそく時間じかんを合あわせた拘束こうそく時間じかんや、運転うんてん時間じかんなどを規制きせいする改善かいぜん基準きじゅん告示こくじも職種しょくしゅごとに適用てきようされます。

例たとえば、特とくに労働ろうどう時間じかんが長ながいトラックドライバーの改善かいぜん基準きじゅん告示こくじは、

▽1日にちの拘束こうそく時間じかんは、13時間じかんを超こえないことを原則げんそくとして、最大さいだいでも15時間じかんとなります。

▽運転うんてん時間じかんは、2日にち平均へいきんで1日にち9時間じかん以内いない

▽1年ねんの拘束こうそく時間じかんは、3300時間じかん以内いない、月つきでは284時間じかん以内いない

▽1日にちの休息きゅうそく期間きかんは、11時間じかん以上いじょうを基本きほんとして、9時間じかんを下回したまわらないと定さだめられました。

運送うんそう業ぎょうの現状げんじょうは

トラックドライバーなどに、時間じかん外がい労働ろうどうの上限じょうげん規制きせいが適用てきようされることによって、ドライバーの労働ろうどう時間じかんが減へり、物流ぶつりゅうの停滞ていたいが生しょうじることが懸念けねんされています。

これは、「物流ぶつりゅうの2024年ねん問題もんだい」と呼よばれ、民間みんかんの調査ちょうさでは、輸送ゆそう力りょくが現状げんじょうと比くらべて

▽2024年度ねんどには14％

▽2030年度ねんどには34％

不足ふそくする可能かのう性せいがあるとされています。

一方いっぽうで、トラックドライバーは長年ながねん、長時間ちょうじかん労働ろうどうが指摘してきされていて、特とくに荷物にもつの積つみ降おろしの順番じゅんばんを待まつ「荷に待まち」の時間じかんが、その大おおきな要因よういんになっているとされています。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうの調査ちょうさでは、「運輸うんゆ業ぎょう・郵便ゆうびん業ぎょう」の令りょう和わ4年ねんの総そう実じつ労働ろうどう時間じかんは、平均へいきんで1980時間じかんと、全ぜん産業さんぎょう平均へいきんの1633時間じかんよりも350時間じかん程度ていど長ながく、すべての産業さんぎょうの中なかで最もっとも長ながくなっています。

中なかでも、トラックドライバーの長時間ちょうじかん労働ろうどうが顕著けんちょで、別べつの調査ちょうさでは、大型おおがたトラックのドライバーの年間ねんかん労働ろうどう時間じかんは2568時間じかんと、全ぜん産業さんぎょうの平均へいきんよりも440時間じかん程ほど長ながくなっています。

労働ろうどう災害さいがいの数かずも多おおく、過労かろう死しなど、労災ろうさいに認定にんていされ補償ほしょうの支給しきゅうが決定けっていした数かずは、トラックドライバーを含ふくむ「道路どうろ貨物かもつ運送うんそう業ぎょう」が、令りょう和わ4年度ねんどで50件けんと、すべての業種ぎょうしゅで最もっとも多おおくなっています。

建設けんせつ業ぎょう

建設けんせつ業ぎょうの上限じょうげん規制きせい

建設けんせつ業ぎょうについても、ほかの業種ぎょうしゅと同様どうように、月つき45時間じかん、年とし360時間じかん以内いないという原則げんそくが適用てきようされます。

ただ、災害さいがいの復旧ふっきゅう・復興ふっこうの事業じぎょうに関にかんしては、時間じかん外がい労働ろうどうと休日きゅうじつ労働ろうどうの合計ごうけいで、月つき100時間じかん未満みまん、複数ふくすうの月つきで平均へいきん80時間じかん以内いないとする規制きせいは、適用てきようされません。

また、災害さいがいなど避さけることができない事由じゆうがあり、労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署長しょちょうの許可きょかなどがあった場合ばあいには、例外れいがいとして上限じょうげん規制きせいの適用てきようはなくなります。

建設けんせつ業ぎょうの現状げんじょうは

建設けんせつ業ぎょうでも、他たの産業さんぎょうに比くらべて労働ろうどう時間じかんが長ながくなっています。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうなどの調査ちょうさによりますと、建設けんせつ業ぎょうの令りょう和わ4年ねんの総そう実じつ労働ろうどう時間じかんは、平均へいきんで1962時間じかんと、全ぜん産業さんぎょうの平均へいきんに比くらべて、330時間じかん程度ていど長ながくなっています。

長時間ちょうじかん労働ろうどうの背景はいけいには、工期こうきが短みじかいことによって労働ろうどう時間じかんが増ふえ、適切てきせつな休暇きゅうかも確保かくほしづらい状況じょうきょうがあると指摘してきされています。

高齢こうれい化かも目立めだっていて、総務そうむ省しょうの労働ろうどう力りょく調査ちょうさでは、建設けんせつ業ぎょうで働はたらく人ひとのうち、29歳さい以下いかの若者わかものは12％にとどまる一方いっぽうで、55歳さい以上いじょうが36％にのぼり、若手わかての人材じんざい確保かくほが課題かだいとなっています。

医師いし

医師いしの上限じょうげん規制きせい 医療いりょう体制たいせい維持いじなどに課題かだいも

医師いしの働はたらき方かたをめぐっても、4月つき1日にちから患者かんじゃの診療しんりょうにあたる勤務きんむ医いに対にたいして、労働ろうどう基準きじゅん法ほうに基もとづき、休日きゅうじつや時間じかん外がい労働ろうどうの上限じょうげん規制きせいが適用てきようされます。

具体ぐたい的てきには、これまでは、勤務きんむ医いの休日きゅうじつや時間じかん外がい労働ろうどう時間じかんに関にかんする上限じょうげん規制きせいはありませんでしたが、4月つき1日にちからは労働ろうどう基準きじゅん法ほうに基もとづく規制きせいが適用てきようされます。

上限じょうげんは「原則げんそく年間ねんかん960時間じかん」、1か月かげつあたりの平均へいきんに換算かんさんすると80時間じかんで、一般いっぱんの労働ろうどう者しゃとほぼ同おなじ規制きせいになります。

一方いっぽう、例外れいがいとして、一部いちぶの救急きゅうきゅう病院びょういんなど、地域ちいきの医療いりょう体制たいせいを確保かくほするために、やむをえず長時間ちょうじかん労働ろうどうをせざるをない場合ばあいを想定そうていして、「暫定ざんていで年間ねんかん1860時間じかん」の特例とくれい水準すいじゅんも設定せっていされます。

このほか、健康けんこう確保かくほのための措置そちとして、連続れんぞく勤務きんむ時間じかんの制限せいげんや休息きゅうそく時間じかんの確保かくほなども始はじまります。

一方いっぽう、課題かだいも残のこされています。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうが、2022年ねんに行いった医師いしの勤務きんむ実態じったいに関にかんする調査ちょうさでは、960時間じかんの上限じょうげんを超こえる医師いしの割合わりあいは全体ぜんたいの21.2％で、依然いぜん高たかい数字すうじとなっています。

また、全国ぜんこくで入院にゅういんや出産しゅっさんを扱あつかう医療いりょう機関きかんを対象たいしょうにした別べつの調査ちょうさでは、回答かいとうがあった7326の医療いりょう機関きかんのうち、およそ6％にあたる457の医療いりょう機関きかんが診療しんりょうの体制たいせいを縮小しゅくしょうする見込みこみがあると答こたえています。

医療いりょう体制たいせいを維持いじしながら、医師いしの労働ろうどう時間じかん短縮たんしゅくをどう進すすめていくかが課題かだいとなっていて、厚生こうせい労働ろうどう省しょうは、引き続ひきつづき都道とどう府県ふけんと連携れんけいして、医療いりょう体制たいせいに支障ししょうが出でていないか確認かくにんすることにしています。