「人間にんげんであると感かんじられない」ガザ地区ちく北部ほくぶ 避難ひなん生活せいかつの現状げんじょうは

ガザ地区ちく北部ほくぶに避難ひなんする男性だんせいが現地げんちの状況じょうきょうを知しってほしいとNHKの取材しゅざいに応おうじました。

去年きょねん10月つきにイスラエル軍ぐんとイスラム組織そしきハマスの衝突しょうとつが始はじまって、今月こんげつ7日にちで半年はんとし。北部ほくぶではいま、食料しょくりょう不足ふそくが深刻しんこくさを増ましています。現地げんちのいまの状況じょうきょうを聞ききました。

破壊はかいされた自宅じたく

爆撃ばくげきをうけ破壊はかいされた建物たてもの。ガザ地区ちく北部ほくぶにある男性だんせいの自宅じたくです。

家いえの中なかに残のこっていた家財かざい道具どうぐは略奪りゃくだつされていました。この写真しゃしんは男性だんせいが1か月かげつ前まえに撮影さつえいしたものです。

乗のっていた車くるまも焼やけ焦こげていました。

ガザ地区ちく北部ほくぶで避難ひなんしている男性だんせい

「戦争せんそうが始はじまって、私わたしはすべてを失うしないました。外そとの通とおりに出でると、至いたるところでものが破壊はかいされています。ここで生活せいかつできないことは明あきらかです」

半年はんとし間かんの避難ひなん生活せいかつ 爆発ばくはつ音おんが…

男性だんせいの家族かぞくはこの半年はんとし、ガザ地区ちく北部ほくぶの倒壊とうかいを免まぬかれた建物たてものに、親族しんぞくと一緒いっしょに避難ひなんしていました。しかし避難ひなん先さきも空爆くうばくを受うけ、男性だんせいの親族しんぞくを含ふくめ10人にん以上いじょうが亡なくなりました。

半年はんとし間かん、戦闘せんとうを避さけるため、避難ひなんしている建物たてものから200～300メートルの中なかだけで生活せいかつすることを強しいられてきたといいます。

取材しゅざい中ちゅう、少すこし離はなれた場所ばしょで爆発ばくはつ音おんが外そとで聞きこえました。

男性だんせいは周まわりを見回みまわしながら「いま爆発ばくはつする音おとが聞きこえた」と私わたしたちに伝つたえました。

安全あんぜんな場所ばしょにいるか尋たずねたところ、「心配しんぱいいりません。安全あんぜんな場所ばしょなどどこにもありません。問題もんだいは、こうした日々ひびに慣なれてしまったことです」と話はなしました。

「20キロ以上いじょう痩やせた」北部ほくぶの食料しょくりょうは

取材しゅざい中ちゅう、飛行機ひこうきが真上まうえを飛とんでいるのが見みえました。男性だんせいによると、支援しえん物資ぶっしを空そらから落おとす飛行機ひこうきだと言いいます。

ただ、そうした支援しえんがあっても食料しょくりょうを満足まんぞくに得えることはできていません。

ガザ地区ちく北部ほくぶで避難ひなんしている男性だんせい

「食料しょくりょうは全然ぜんぜん足たりていません。私わたしは戦争せんそうがはじまって20キロ以上いじょう痩やせました。でも、私わたしたちは生いきています。なんとか生き延いきのびています」

ガザ地区ちく北部ほくぶではいま、食料しょくりょう不足ふそくが深刻しんこくさを増ましています。

OCHA＝国連こくれん人道じんどう問題もんだい調整ちょうせい事務所じむしょによると、3月つき1日にち以降いこう、ガザ地区ちく北部ほくぶへの人道じんどう支援しえん活動かつどうのうち3割わりがイスラエル当局とうきょくによって拒否きょひされ、ガザ地区ちく北部ほくぶでは飢ききんがことし5月つきにかけていつでも起おこりうるとしています

「人間にんげんであると感かんじられない」

男性だんせいはガザ地区ちくでのいまの生活せいかつついて「今いまはどうやって食料しょくりょうを確保かくほするか、次つぎの日ひに何なにが起おこるか分わからないまま、どうやってあすまで生き延いきのびるかだけを考かんがえています。次つぎは自分じぶんの番ばんかもしれないと考かんがえて生いきています。プライバシーもなく、食べ物たべものも娯楽ごらくもなく、私わたしたちが人間にんげんであると感かんじられないんです」と話はなします。

その上うえで、親族しんぞくが半年はんとし前まえに空爆くうばくで亡なくなったことについても「当然とうぜん悲かなしいのですが、感かんじるべきであろう痛いたみを感かんじられていません。今いま、危機ききのまっただ中ただなかにいるので、危機ききが終おわった時ときに、ここで失うしなったものの大おおきさを気きづくんだと思おもいます」と話はなしています。

家族かぞくのために…

男性だんせいには生後せいご10か月かげつの赤あかちゃんがいます。避難ひなん先さきでは水道すいどうが破壊はかいされ、きれいな水みずは手てに入はいりません。子こどもの予防よぼう接種せっしゅも受うけられず、腹痛はらいたや発熱はつねつなど何なん度ども体調たいちょうを崩くずしたといいます。

男性だんせいの妻つま

「私わたしは娘むすめがすこしでも清潔せいけつな水みずが飲のめるように水みずを煮沸しゃふつしていますが、それをするための道具どうぐすら手てに入はいらない人ひとたちもいます」と話はなします。その上うえで「今いまは不安ふあんと恐怖きょうふの２ふたつの感情かんじょうしかありません。愛あいする人ひとや家いえを失うしなうことを恐おそれずに生いきたいです。」と話はなします。

取材しゅざい中ちゅう、寝ねていた赤あかちゃんが起おきてきました。赤あかちゃんは目めをこすりながら、母親ははおやにだっこされて微笑ほほえんでいます。

男性だんせいは「子こどもは何なにが起おこっているのか全まったく分わかっていません。ただ手しゅを叩たたいてみんなに対にたいしてニコニコしています。本当ほんとうに純粋じゅんすい無垢むくであどけなく感かんじます」と話はなしていました。

“すべてをこの半年はんとしで失うしなった”

男性だんせいが子こどもや家族かぞくのために願ねがっていることがあります。

戦闘せんとうが始はじまった半年はんとし前まえ、男性だんせいは1日にちも早はやく戦闘せんとうが終おわってガザ地区ちく暮くらしを立て直たてなおすことを願ねがっていました。しかし半年はんとしがたった今たったいまは、ガザ地区ちくを離はなれることを望のぞんでいると言いいます。ガザ地区ちくには、子こどもの明あかるい未来みらいはないと考かんがえているからです。

ガザ地区ちく北部ほくぶで避難ひなんしている男性だんせい

「ガザは私わたしの故郷こきょうです。ガザから出でることを考かんがえたことは一いち度どもありませんでした。ただ、積み上つみあげたすべてをこの半年はんとしで失うしないました。子こどもには私わたしたちが今いま生いきているような人生じんせいを送おくってほしくありません。ずっと良よい未来みらいを送おくってほしいと願ねがっています」

「戦争せんそう終結しゅうけつしたという報道ほうどうを見みたい」

インタビューの最後さいご、男性だんせいは私わたしたちにこう言い残いいのこしました。

「民間みんかん人じんがガザにいるということ、そしてみんなが平和へいわに暮くらしたいと思おもっている人々ひとびとだということを知しっていただきたいです。もう他たのことなどどうでもよいのです。公式こうしきに戦争せんそうが終結しゅうけつしたという報道ほうどうを見みたい、ただそれだけです。いまは、それだけが見みたいのです」

（取材しゅざい おはよう日本にっぽん / ディレクター 大門だいもん志こころざし光こう 佐藤さとう楽らく / 記者きしゃ 今村いまむら清人きよひと 福岡ふくおか由梨ゆり）