韓国における漢字廃止の歴史的背景とハングル専用政策の形成過程
YouTubeチャンネル「パクくんの東大留学」では、「なぜ韓国は日本とは異なり漢字を完全に廃止し、ハングルの使用に徹したのか」というテーマについて、東大博士課程在籍のパクくん氏が歴史的かつ社会的観点から詳細に解説している。朝鮮半島は約二千年にわたり中国文化圏に属し、長きにわたって公文書や学術分野において漢字が不可欠な存在であったものの、識字率の低さが社会問題となっていた。
こうした状況を憂慮した朝鮮王朝第4代王・世宗は、1443年に独自の表音文字である「訓民正音」、すなわち現在のハングルを創製した経緯がある。しかし、ハングルは長らく補助的な文字にとどまり、社会全体への普及には至らなかったという。
転機となったのは、1945年の第二次世界大戦終結と韓国の独立である。当時、韓国社会は「いかなる文字を国語として採用すべきか」という根本的な問いいに直面し、(1)漢字を存続させる、(2)漢字とハングルを併用する、(3)ハングルのみを用いる、という三つの選択肢が提示された。初代大統領李承晩は、民族独立の象徴としてハングル一本化を選択したのである。
その後、1960年代から70年代にかけてパク・チョンヒ大統領が「100%ハングル政策」を推進し、公文書や教育現場から漢字を排除する方針が明確に打ち出された。
さらに、1990年代以降の電子化の進展がハングル専用化を決定づけた要因の一つとなった。タイプライターや初期のコンピューター環境において、複雑な漢字よりも組み合わせによって表現可能なハングルの方が圧倒的に扱いやすかったため、社会全体で漢字離れが急速に進行したのである。そして2010年前後には、学校教育においても漢字がほとんど排除され、韓国は「ハングルの国」へと完全に移行した。
このように、民族主義的な理念に加え、技術的な制約が相まってハングルが唯一の公式文字として定着した経緯が説明された。結果として、識字率や読み書きの速度が向上するという利点があった方で、語彙力の低下や同音異義語の識別困難といった問題も生じている。言語政策が文化や社会に及ぼす影響は極めて大きいことが、今回の事例からも明らかである。