はく製はくせいは絶滅ぜつめつしたニホンオオカミか 気きづいたのは都内とないの中学生ちゅうがくせい

論文ろんぶんを発表はっぴょうしたのは都内とないの中学ちゅうがく1年生ねんせい、小森こもり日菜子ひなこさんと国立こくりつ科学かがく博物館はくぶつかんなどの研究けんきゅうチームです。

小森こもりさんは小学しょうがく4年生ねんせいだった4年ねん前まえ、茨城いばらき県けんつくば市しにある国立こくりつ科学かがく博物館はくぶつかんの収蔵しゅうぞう庫この特別とくべつ公開こうかいイベントを訪おとずれたときに保管ほかんされている動物どうぶつのはく製はくせい標本ひょうほん1点てんが図鑑ずかんなどで見みたニホンオオカミと似にていることに気きがつきました。

このはく製はくせいは「ヤマイヌの一種いっしゅ」として博物館はくぶつかんに保管ほかんされてきたものでしたが、小森こもりさんが専門せんもん家かとともに詳くわしく調しらべた結果けっか、体からだの大おおきさやはく製はくせいのラベルに基もとづく過去かこの記録きろくなどから100年ねん以上いじょう前まえに現在げんざいの上野うえの動物どうぶつ園えんで飼育しいくされていたニホンオオカミの可能かのう性せいが高たかいことがわかり、2年ねんがかりで論文ろんぶんにまとめて今月こんげつ、発表はっぴょうしました。

研究けんきゅうチームによりますと、ニホンオオカミはかつて日本にっぽんに広ひろく生息せいそくしていましたが、およそ100年ねん前まえに絶滅ぜつめつしたとされ、はく製はくせいや毛皮けがわの標本ひょうほんは国内こくない外がいでわずかしか残のこっていないということです。

小森こもりさん「これはニホンオオカミだなと ピピッときた」

論文ろんぶんを発表はっぴょうした小森こもり日菜子ひなこさん（13）は都内とないの中学校ちゅうがっこうに通かよっている1年生ねんせいです。

小学しょうがく2年生ねんせいのころにニホンオオカミに興味きょうみを持もち、国内こくないで保管ほかんされているはく製はくせいを見学けんがくしたり、図鑑ずかんや学術がくじゅつ書しょを調しらべたりしてその特徴とくちょうについて学まなんできたといいます。

ニホンオオカミと特徴とくちょうが似にていることに気きがついた当時とうじの心境しんきょうについて小森こもりさんは「額がくから鼻はなにかけての形かたちが平たいらになっていることや、前足まえあしが短みじかく、背中せなかに黒くろい毛けがあるといった特徴とくちょうを見みつけて、これはニホンオオカミだなとレーダーみたいな感かんじでピピッときました。すごい頭あたまの中なかで、踊おどり出だしたいというか、舞まいを始はじめるというかそんな感情かんじょうでした」と振り返ふりかえりました。

その後そのご、このはく製はくせいは「ヤマイヌの一種いっしゅ」として扱あつかわれ、よく調しらべられていなかったことを知しった小森こもりさんは、専門せんもん家かに相談そうだんしながら博物館はくぶつかんなどが公開こうかいしている過去かこの記録きろくを調しらべ上あげて考かんがえをまとめていき、5年生ねんせいの時とき、自由じゆう研究けんきゅうで博物館はくぶつかんで見みつけたはく製はくせいはニホンオオカミではないかとレポートにまとめて発表はっぴょうしました。

このレポートは図書館としょかん振興しんこう財団ざいだんが主催しゅさいするコンクールで文部もんぶ科学かがく大臣だいじん賞しょうを受賞じゅしょうしたほか、相談そうだんしていた専門せんもん家かの1人にんで、標本ひょうほんの歴史れきしに詳くわしい千葉ちば県けんにある山階やましな鳥類ちょうるい研究所けんきゅうじょの研究けんきゅう員いんの小林こばやしさやかさんから「この調査ちょうさ結果けっかをぜひ学術がくじゅつ論文ろんぶんとして世よに残のこして欲ほしい」と提案ていあんを受うけることにつながり、論文ろんぶんの作成さくせいを目指めざすことになったということです。

論文ろんぶんとして客観きゃっかん的てきな根拠こんきょをもった考察こうさつを行おこなうため、さらに2年ねんにわたって分析ぶんせきや検討けんとうを重かさねて執筆しっぴつを進すすめ、専門せんもん家かによる査読さどくを経へたうえで今月こんげつ22日にちに国立こくりつ科学かがく博物館はくぶつかんが発行はっこうしている電子でんしジャーナルで論文ろんぶんを発表はっぴょうしました。

論文ろんぶんを発表はっぴょうする原げん動力どうりょくになったのは探究たんきゅう心しんだったということで、小森こもりさんは「調しらべていくなかで新あらたな謎なぞが出でてきて、そこをさらに調しらべて解とくことが大変たいへんでしたが楽たのしかったです。ニホンオオカミはたくさん研究けんきゅうされていますが、真しんの姿すがたは分わかっていないので、色々いろいろな謎なぞが残のこされています。真しんの姿すがたを知しりたい、解明かいめいしたいというのがやっぱり一番いちばんです」と話はなしていました。

論文ろんぶんの共著きょうちょ者しゃ「日菜子ひなこちゃんはすごい観察かんさつ力りょく」

論文ろんぶんで発表はっぴょうすることを勧すすめた共著きょうちょ者しゃの1人にんで、千葉ちば県けんにある山階やましな鳥類ちょうるい研究所けんきゅうじょの研究けんきゅう員いんの小林こばやしさやかさんは「最初さいしょにレポートを見みた時ときから、かなり研究けんきゅうになるなと思おもっていたので、論文ろんぶんにまとまってよかった。日菜子ひなこちゃんはすごい観察かんさつ力りょくというか、そういう面めんで才能さいのうがあるなと思おもっています。私わたしは手法しゅほうを教おしえただけなんですが、好すきなことを極きわめて、最終さいしゅう的てきにニホンオオカミの可能かのう性せいが高たかいというところまで近ちかづけたのはすごいよかったです」と話はなしていました。

そして「興味きょうみを持もったことを1つ調しらべてみると、その先さきにどんどん広ひろがる世界せかいがあると思おもうので、自分じぶんが関心かんしんを持もった分野ぶんやをどんどん深ふかめていってほしいと思おもいます」と小森こもりさんにエールを送おくりました。

国立こくりつ科学かがく博物館はくぶつかんの担当たんとう者しゃ「今後こんごもいろんな発見はっけんを」

国立こくりつ科学かがく博物館はくぶつかんの収蔵しゅうぞう庫こから新あらたにニホンオオカミとみられるはく製はくせいが見みつかったことについて、論文ろんぶんの共著きょうちょ者しゃの1人にんで、国立こくりつ科学かがく博物館はくぶつかん動物どうぶつ研究けんきゅう部ぶ研究けんきゅう主幹しゅかんの川田かわた伸しん一郎いちろうさんは小森こもりさんが小学生しょうがくせいの時ときに発見はっけんして中学ちゅうがく1年生ねんせいで論文ろんぶんを書かいたことは「すごいことだと思おもいます」と評価ひょうかしています。

そして「ちゃんと学まなんでいくプロセスを歩あゆめば、研究けんきゅうというのは小中こなか学生がくせいでも高校生こうこうせいでもできるのだと思おもいます。小森こもりさんは今後こんごもいろんな発見はっけんをするだろうなとこれからが楽たのしみです」とエールを送おくっていました。

国立こくりつ科学かがく博物館はくぶつかんには今回こんかいのニホンオオカミとみられるはく製はくせいをはじめ、100年ねん以上いじょう前まえの歴史れきし的てきに貴重きちょうな標本ひょうほんが保管ほかんされているほか、新あらたな標本ひょうほんや資料しりょうも毎年まいとし増ふえ続つづけ、その数かずは500万まん点てん以上いじょうと国内こくない最大さいだい規模きぼです。

貴重きちょうなコレクションの管理かんりに充あてるため、国立こくりつ科学かがく博物館はくぶつかんは去年きょねん8月つき、クラウドファンディングを行おこなったところ、5万まん人にん以上いじょうから支援しえんが寄よせられ、目標もくひょう額がくを大幅おおはばに上回うわまわる9億おく円えんあまりが集あつまりました。

川田かわたさんは博物館はくぶつかんに保管ほかんされている膨大ぼうだいな動物どうぶつのはく製はくせいを管理かんりする立場たちばでもありますが、今回こんかいの発見はっけんを通をつうじて貴重きちょうなコレクションを未来みらいに引き継ひきついでいくことの大切たいせつさを再さい認識にんしきしたといいます。

川田かわたさんは「100年ねん前まえの標本ひょうほんを調しらべて今回こんかいの成果せいかが得えられたわけですが、ニホンオオカミに限かぎらず素性すじょうがわかっていない標本ひょうほんは結構けっこうあります。できるだけ未来みらいにつないで、これから新あたらしい技術ぎじゅつの発達はったつでもっと別べつの方面ほうめんから調しらべていくことも可能かのうになってくると思おもうので、未来みらいのために標本ひょうほんを残のこしていくことが大切たいせつなんだなと改あらためて感かんじました」と話はなしていました。

今回こんかいのはく製はくせいはバックヤードで保管ほかんしており公開こうかいする予定よていは当面とうめんないということですが、別べつのニホンオオカミのはく製はくせいは東京とうきょう・上野うえのにある博物館はくぶつかんで展示てんじされていて、見みることができるということです。