ヒッタイト王国おうこくの粘土ねんど板いたか 日本にっぽん調査ちょうさ隊たい トルコ古代こだい遺跡いせきから発掘はっくつ

粘土ねんど板ばんが発掘はっくつされたのは、トルコ中部ちゅうぶにある「ビュクリュカレ遺跡いせき」です。

この遺跡いせきでは、15年ねん前まえから中近東ちゅうきんとう文化ぶんかセンター附属ふぞくアナトリア考古こうこ学がく研究所けんきゅうじょの松村まつむら公こう仁じん研究けんきゅう員いんが率ひきいる日本にっぽんの調査ちょうさ隊たいが調査ちょうさを行おこなっています。

去年きょねん5月つき、遺跡いせきの北側きたがわから70行こうにわたってくさび形がた文字もじが刻きざまれた手てのひらほどの大おおきさの粘土ねんど板ばんがほぼ完全かんぜんな状態じょうたいで見みつかりました。

粘土ねんど板ばんは文字もじの形かたちから今いまからおよそ3300年ねん前まえ、紀元前きげんぜん14世紀せいきごろのヒッタイト王国おうこくの時代じだいのものだと考かんがえられ、ヒッタイト語ごだけでなく当時とうじ、宗教しゅうきょう的てきな儀礼ぎれいで用もちいられたフリ語ごという言語げんごも刻きざまれていました。

フリ語ごで書かかれた粘土ねんど板ばんは、王国おうこくの首都しゅと「ハットゥーシャ」など重要じゅうような都市としの遺跡いせきでしか見みつかっておらず、今回こんかいの発見はっけんはこの都市としも王家おうけとの強つよいつながりがある重要じゅうような都市としだったことを示唆しさしているということです。

松村まつむら研究けんきゅう員いんは「これまでビュクリュカレがどういう都市としかは分わかっていなかったが重要じゅうような都市としだったとすれば今後こんごも未知みちの歴史れきしを明あきらかにする発見はっけんが期待きたいできる」と話はなしています。

粘土ねんど板ばんの内容ないようは

「ビュクリュカレ遺跡いせき」は、トルコの首都しゅとアンカラから南東なんとうに60キロほど離はなれたところにあり、「ヒッタイト王国おうこく」のほか、今いまから4200年ねん前まえの青銅せいどう器き時代じだいから、オスマン帝国ていこくに至いたるまで長ながい期間きかんにわたる出土しゅつど品ひんが確認かくにんされていますが、今回こんかい、見みつかった粘土ねんど板ばんは今いまからおよそ3300年ねん前まえ、紀元前きげんぜん14世紀せいきごろのヒッタイト王国おうこくの時代じだいのものと考かんがえられています。

粘土ねんど板ばんに刻きざまれていた70行こうにわたる文章ぶんしょうの始はじめの6行こうには、ヒッタイト語ごで、“首都しゅとハットゥーシャを含ふくむ4都市としが災わざわいにあっている”という内容ないようが記しるされていました。

そして、そこから先さきの本文ほんぶんと考かんがえられる部分ぶぶんには、「フリ語ご」という別べつの言語げんごで対立たいりつする隣国りんごくの王おうの名前なまえや最高さいこう神しん「テショブ」に祈いのりをささげる内容ないようが刻きざまれています。

フリ語ごはヒッタイトの東側ひがしがわにあった国々くにぐにで使つかわれていた言語げんごで、ヒッタイトの国王こくおうは当時とうじ、政略せいりゃく結婚けっこんでこのうちの一ひとつ「キズワトナ」から妻つまを迎むかえていたとされています。

その過程かていでこの国くにの宗教しゅうきょうが取り入とりいれられたため宗教しゅうきょう的てきな儀式ぎしきにはフリ語ごが使つかわれるようになったと考かんがえられるということです。

粘土ねんど板ばんが刻きざまれた時代じだい、ヒッタイト王国おうこくは隣国りんごくからの侵略しんりゃくを受うけていたと考かんがえられていて、調査ちょうさ隊たいは侵略しんりゃくの危機ききを脱だっするための宗教しゅうきょう儀式ぎしきとして神かみに祈いのったのではないかとしています。

日本にっぽんの調査ちょうさ隊たいを率ひきいるアナトリア考古こうこ学がく研究所けんきゅうじょの松村まつむら公こう仁じん研究けんきゅう員いんは、「その後そのごの時代じだいの人々ひとびとによって文書ぶんしょ庫このようなものもすべて破壊はかいされ、これまで出でてきた粘土ねんど板ばんは小ちいさな破片はへんだけだった。発掘はっくつを始はじめて10年ねん以上いじょうたって去年きょねん、初はじめてほぼ完璧かんぺきな形かたちで粘土ねんど板ばんが出でてきた」と、今回こんかいの発見はっけんを振り返ふりかえりました。

ビュクリュカレ遺跡いせきではヒッタイト以前いぜんの地層ちそうも確認かくにんされていて、松村まつむら研究けんきゅう員いんは、発掘はっくつ作業さぎょうはさらに長ながい期間きかんが必要ひつようになるとして「われわれの世代せだいで、これで十分じゅうぶんだというところまで行いけるとはとても思おもえない。研究けんきゅう者しゃを育そだてて、うまくバトンタッチしたい」と話はなしていました。

松村まつむら研究けんきゅう員いんは、来月らいげつ3日にち、東京とうきょう 上野うえのの東京とうきょう国立こくりつ博物館はくぶつかんで報告ほうこく会かいを行おこなうことにしています。

専門せんもん家か「遺跡いせきはヒッタイト王国おうこくの非常ひじょうに重要じゅうような都市としだった可能かのう性せい」

ヒッタイト王国おうこくに詳くわしい山口やまぐち大学だいがくの山本やまもと孟たけし講師こうしは、粘土ねんど板いた発見はっけんの意義いぎについて「ヒッタイト王国おうこくは歴史れきしの後半こうはんになってくると、フリ語ごを話はなす東ひがし隣となりの諸国しょこくの宗教しゅうきょうを積極せっきょく的てきに取り込とりこんで信仰しんこうや神話しんわを受容じゅようしていったがそれは王家おうけや王室おうしつに限かぎられたものだったようだ。フリ語ごが粘土ねんど板ばんに刻きざまれていたということはこの遺跡いせきにあった都市としと、ヒッタイト王国おうこくの王家おうけとの間まに強つよい結び付むすびつきがあったと考かんがえられる。今回こんかいの粘土ねんど板ばんが刻きざまれた時代じだいはヒッタイト王国おうこくが弱体じゃくたい化かしていた時期じきで、その時期じきに王家おうけと結び付むすびつきが強つよいということはこの遺跡いせきはヒッタイト王国おうこくの非常ひじょうに重要じゅうような都市としだった可能かのう性せいがある」と指摘してきしています。

さらに「当時とうじ、ヒッタイト王国おうこくの西にしにあって対立たいりつしていたアルザワという国くにとエジプトのファラオが政略せいりゃく結婚けっこんをしようとしていたことが同どう時代じだいのエジプトの外交がいこう文書ぶんしょから分わかっている。今回こんかいの粘土ねんど板ばんからはアルザワの王おうとみられる名前なまえも見みつかっていて、ヒッタイト王国おうこくの当時とうじの領土りょうどのいちばん西にしの端はじに位置いちしていたこの都市としは、なんとか敵てきからの攻撃こうげきに耐たえている状況じょうきょうにあったのではないか。ヒッタイト王国おうこくはこのあとの時代じだいにオリエント世界せかいの大国たいこくとなるが、どのように大国たいこくになったのかを考かんがえるうえでも、今後こんご、この遺跡いせきと、ここで見みつかる粘土ねんど板ばんは重要じゅうようだと考かんがえている」と話はなしていました。