高裁こうさいも再審さいしん認みとめる 遺族いぞく “父ちちの無念むねん晴はらしたい”

「父ちちは、泣なきながら殴なぐられても蹴けられても、自分じぶんがやったと言いわんかったんや。だけど、警察官けいさつかんから『結婚けっこんしたばかりの娘むすめの嫁とつぎ先さきに行いって、家いえの中なかガタガタにしてきたろうか』と言いわれ、父ちちも我慢がまんできんかった」

「『父とうちゃんは、やったと言いってしまったけど、何なにもしていない。誰だれも信しんじなくても家族かぞくだけには信しんじてほしい』そのように、父ちちは泣なきながら言いいました。奈落ならくの底そこというのはこの時ときのためにあるんだなという思おもいでした。自分じぶんが何なにもやっていないのに『私わたしがやりました』と言いわなければいけない瞬間しゅんかんは本当ほんとうにつらかったと思おもいます」

「夫おっとが泣ないているのを初はじめて見みました。何なにも証拠しょうこが無ないのにひどいと思おもいます」

大津おおつ地裁ちさいの決定けってい

「自白じはくでの殺害さつがい方法ほうほうは遺体いたいの状態じょうたいという重要じゅうような客観きゃっかん的てき事実じじつと整合せいごうしておらず、信用しんよう性せいが大おおきく揺ゆらいでいる。警察官けいさつかんから暴行ぼうこうを受うけるなどして、自白じはくを強要きょうようされた疑うたがいがある」

さらに、犯人はんにんしか知しりえない金庫きんこの発見はっけん場所ばしょを阪ばん原げんさんに案内あんないさせた「引き当ひきあて」捜査そうさをめぐっては、現場げんばに向むかう際さいに撮影さつえいしたとされた写真しゃしんの多おおくが、実際じっさいには、帰り道かえりみちに撮影さつえいされていたことがネガの分析ぶんせきでわかり、決定けっていでは捜査そうさのずさんさが批判ひはんされました。

「事実じじつ認定にんていを誤あやまらせる危険きけん性せいが大おおいにあり、不適切ふてきせつだ」

また、「関係かんけい者しゃの新あらたな証言しょうげんが提出ていしゅつされ、本人ほんにんのアリバイの主張しゅちょうを確定かくてい判決はんけつがうそと判断はんだんしたことにも疑問ぎもんが生しょうじた」などと指摘してきしました。

無罪むざいを言い渡いいわたすべきことが明あきらかな新しん証拠しょうこが見みつかった場合ばあいにあたると結論けつろんづけました。

一方いっぽうで、自白じはくと遺体いたいの状態じょうたいに整合せいごうしない点てんはあると指摘してきしましたが、「自白じはく全体ぜんたいの信用しんよう性せいが揺ゆらいだとまではいえない」と判断はんだんしました。また、自白じはくが強要きょうようされた疑うたがいがあるとは、認みとめませんでした。

法政ほうせい大学だいがく法科ほうか大学院だいがくいん 水野みずの智幸ともゆき教授きょうじゅ

「確定かくてい判決はんけつなどの証拠しょうこのぜい弱ぜいじゃく性せいを指摘してきして、『疑うたがわしきは被告ひこくの利益りえきに』という原則げんそくを適用てきようした妥当だとうな決定けっていだ。判断はんだんの根拠こんきょとなったネガは、再審さいしん請求せいきゅうの中なかで初はじめて検察けんさつから証拠しょうこ開示かいじされて提出ていしゅつされたものだが、本来ほんらいは、当時とうじの刑事けいじ裁判さいばんで明あきらかになるべきだ。本人ほんにんが生いきている間まに無罪むざいを勝ち取かちとりたいという思おもいは強つよかったはずで、再審さいしんを認みとめるかどうかの審理しんりが長期ちょうき化かしないよう、法律ほうりつによって、より具体ぐたい的てきな規定きていを設もうけるべきだ」

弘次ひろじさん

「再審さいしん無罪むざいに向むけて階段かいだんをまた1つ上あがることができました。父ちちが亡なくなったときは、本当ほんとうに悔くやしくて悲かなしくて何なにもする気きが起おきなくなりました。それでもふつふつと怒いかりの感情かんじょうがわき上あがり、『まだ何なににも解決かいけつしていない。父とうちゃんは死しんでしまったけど、せめて父とうちゃんへの無念むねんを晴はらしたい』という思おもいで立ち上たちあがりました。大津おおつ地裁ちさいで再審さいしん開始かいし決定けっていが出でたのに、即時そくじ抗告こうこくされて私わたしたちはこんなにつらい思おもいをしている。1日にちも早はやく再審さいしんが開始かいしされるべきで、大阪おおさか高検こうけんは最高裁さいこうさいに特別とくべつ抗告こうこくをして、いたずらにわれわれの時間じかんを奪うばうべきではない。父ちちの無罪むざいが確定かくていするまで、家族かぞくは闘たたかい続つづける決意けついをしています」

検察けんさつは今後こんご、最高裁さいこうさいに特別とくべつ抗告こうこくするかどうか、判断はんだんすることになります。