レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの間で攻撃の応酬を続けるイスラエル軍は28日、前日に行ったレバノンの首都ベイルート近郊にあるヒズボラの本部への空爆で最高指導者のナスララ師を殺害したと発表しました。
イスラエル軍の報道官は空爆を行ったとき、「ナスララ師は地下のヒズボラ本部にいた」としています。
一方、ヒズボラも「抵抗運動の指導者が偉大な殉教者として神のもとに召された」としてナスララ師の死亡を認める声明を発表しました。
そのうえで「ヒズボラの指導部はガザやパレスチナを支援し、レバノンを守るために敵との戦いを続ける」としてイスラエルへの攻撃を続ける姿勢を強調しました。
ヒズボラの後ろ盾であるイランの最高指導者ハメネイ師は声明を発表し、「この地域の抵抗勢力はヒズボラとともにあり、ヒズボラを支援している」として、イランが支援する各地の武装組織の連帯を強調しイスラエルを強くけん制しました。
イスラエル軍の報道官はナスララ師の殺害を発表した後、「さらなる戦闘の激化に備え、われわれは厳戒態勢にある」と述べていて中東地域での紛争の拡大が懸念されます。
ヒズボラ イスラエルへの攻撃続ける姿勢を強調
レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは28日、声明を発表し「抵抗運動の指導者が偉大な殉教者として神のもとに召された」として最高指導者ナスララ師がイスラエル軍の攻撃で死亡したことを明らかにしました。
そのうえで「ヒズボラの指導部はガザやパレスチナを支援し、レバノンを守るために敵との戦いを続ける」としてイスラエルへの攻撃を続ける姿勢を強調しました。
ヒズボラの最高指導者ナスララ師とは
ヒズボラの最高指導者ナスララ師は、1960年にレバノンの首都ベイルートで生まれ、イラクに留学後、1982年のイスラエルによるレバノン侵攻をきっかけに、ヒズボラに参加し、武装闘争を始めました。
そして、1992年に当時のヒズボラの最高指導者が暗殺されたことを受けて後継者となって以降、30年余りにわたってヒズボラを率いてきました。
2006年、およそ1か月にわたるイスラエルとの大規模な戦闘の末に停戦が実現した際には、イスラエルが停戦に応じたのはヒズボラの抵抗に屈したためだとして「レバノンにとって歴史的な勝利だ」と勝利宣言を行いました。
また、去年10月にパレスチナのイスラム組織ハマスがイスラエルと戦闘を始めた翌日には、イスラエル北部を砲撃するなどハマスと連帯してイスラエルと対決する姿勢を鮮明にしました。
さらに今月、トランシーバーなどヒズボラの関係者も使う通信機器が2日連続で爆発し、多数の死傷者が出た際には、イスラエルによる犯行だとした上で「正当な処罰を受けることは間違いない」などと報復する構えを示していました。
長く最高指導者を務めてきたナスララ師の殺害を受けて、後継者選びや今後の活動方針への影響が焦点となります。
イスラエルとヒズボラ 双方の衝突続く
去年10月、イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘が始まった日の翌日、ハマスと連帯するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラはイスラエル北部を砲撃し、以来、双方の間で散発的な戦闘が続いていました。
この影響でイスラエル北部のレバノンとの国境地帯の住民は避難生活を余儀なくされ、その数は6万人以上にのぼります。
双方の衝突が徐々に激しくなる中、ネタニヤフ政権は今月17日、避難生活を送る住民を安全に帰還させるとしてヒズボラへの対応を軍事作戦の目標に加えることを閣議で決定しました。
17日と18日にはレバノン各地でヒズボラの関係者が使っていたポケットベルやトランシーバーが一斉に爆発し、合わせて30人以上が死亡し、3000人以上がけがをしました。
イスラエル側は爆発への関与などについて沈黙を保っていますが、ヒズボラはイスラエルによる犯行だとして報復を宣言します。
イスラエル軍はレバノンとの国境地帯に部隊を増強し、20日、レバノンの首都ベイルート郊外を空爆し、ヒズボラの幹部らを殺害したのに対し、ヒズボラはイスラエル北部のハイファ近郊に射程の長いロケット弾などを発射し、イスラエルメディアによりますと5人がけがをしました。
そしてイスラエル軍は23日、レバノン南部などで民家に隠してあるヒズボラのミサイルやロケット弾を破壊するとしておよそ1600か所で空爆を行いました。
この空爆で子どもや女性を含むおよそ500人が死亡し、2006年に双方の間で起きた大規模な戦闘以降、レバノン側では1日で最も多くの死者が出ました。
イラン 最高指導者ハメネイ師「抵抗勢力が支援」
イスラエル軍がヒズボラの最高指導者、ナスララ師の殺害を発表したことを受けて、ヒズボラの後ろ盾であるイランの最高指導者ハメネイ師が声明を発表しました。
この中でハメネイ師は「イスラエルは強力なヒズボラに決定的なダメージを与えるには小さすぎる存在であることを自覚すべきだ。この地域の抵抗勢力はヒズボラとともにあり、ヒズボラを支援している」として、イランが支援する各地の武装組織の連帯を強調しイスラエルを強くけん制しました。
また「この地域の運命は抵抗勢力により決定され、その先頭に立っているのがヒズボラだ。全てのイスラム教徒はレバノン市民と誇り高きヒズボラがイスラエルに立ち向かうため、あらゆる手法で協力する義務がある」とも呼びかけていて、中東地域での紛争の拡大が懸念されます。
イスラム組織ハマス「抵抗の決意を強めるだけ」
また、ガザ地区でイスラエル軍と戦闘を続けるイスラム組織ハマスは28日、声明を出し、徹底抗戦の構えを示しました。
声明のなかでハマスは「レバノンの人々とヒズボラに心からの哀悼の意を表し、連帯を示す」としています。
そのうえで「今回の殺害はレバノンとパレスチナの抵抗の決意を強めるだけだ」などとして、イスラエルへの徹底抗戦の構えを示しました。