4日、開かれた都議会の本会議では、全国で初めてとなるカスハラ防止条例案の採決が行われ、全会一致で可決・成立しました。
この条例は、カスハラを「客から就業者に対しその業務に関して行われる著しい迷惑行為で、就業環境を害するもの」と定義したうえで「何人もカスハラを行ってはならない」などと規定しています。
そのうえで、客や事業者などの責務としてカスハラを防ぐための対応をとるよう定めていますが、運用にあたっては客の権利を不当に侵害しないよう留意しなければいけないとしています。
条例に罰則はなく、来年4月1日から施行されます。
小池知事は定例会見で「快適な消費生活や事業の継続のための独自の規範として条例が機能すると考えている。現場で適切に運用されるよう具体的なガイドラインの中身を詰めていきたい」と話していました。
このほか本会議では、物価高騰対策として支払った金額の10%がポイント還元されるキャンペーンの実施や、公立学校の給食費の無償化を全自治体で実現するため支援を拡充することなどが盛り込まれた総額377億円の補正予算案も可決・成立しました。
企業ではカスハラ防止に向けた対策進む
企業の間ではカスハラ防止に向けた対策が進んでいます。
このうち時計や電卓などを製造・販売する大手電機メーカーでは去年、社内でカスハラの対応方針をとりまとめました。
きっかけとなったのは、コールセンターでスタッフへの中傷や商品とは関係のないクレームが増えたことでした。
会社によりますと経験豊富なスタッフが応対しているにもかかわらず「おまえは新人か?答えろ!」などの発言や、購入した製品に納得がいかず「私が教育します」と言って長時間、一方的に話を続けられたことがあったということです。
カシオ計算機 コンシューマお客様相談センター 第一お客様相談室の向山徳一室長は「高齢の方が多くコロナ禍もあって増えたという印象がある。カスハラを受け続けると退職や休職につながる可能性があるので危機感を持って対応した」と話していました。
こうした中、会社は去年カスハラの対応方針をとりまとめ、具体的な対策を進めています。
社員などが直面した客との理不尽なケースを専用のホームページで共有して分析し、会社がカスハラだと判断した高額賠償の要求や長時間の拘束などの行為は対応を断ってもよいとしたのです。
会社は今後、同業他社と協議会を立ち上げ業界全体で対応していく方針です。
向山室長は「カスハラには各社困っていると思うので、協議会という場で対策に向けて意見を交換してお互いの職場環境をよくしていきたい」と話していました。