ノーベル賞しょう 10月つき7日にちから発表はっぴょう始はじまる 注目ちゅうもくの研究けんきゅうは

ノーベル賞しょうは、ダイナマイトを発明はつめいしたスウェーデンのアルフレッド・ノーベルの遺言ゆいごんに基もとづいて「人類じんるいに最大さいだいの貢献こうけんをもたらした人々ひとびと」に贈おくるとされています。

ことしの受賞じゅしょう者しゃの発表はっぴょうは、7日にちが生理学せいりがく・医学いがく賞しょう、8日にちが物理ぶつり学賞がくしょう、9日にちが化学かがく賞しょう、10日にちが文学ぶんがく賞しょう、11日にちが平和へいわ賞しょう、14日にちが経済けいざい学賞がくしょうとなっています。

日本人にっぽんじんの受賞じゅしょうはこれまでアメリカ国籍こくせきを取得しゅとくした人ひとを含ふくめて28人にんですが、このうち今世紀こんせいきに入はいってから（2001年ねん以降いこう）受賞じゅしょうした19人にんは、生理学せいりがく・医学いがく賞しょう、物理ぶつり学賞がくしょう、化学かがく賞しょうの自然しぜん科学かがく系けいの3賞しょういずれかで、この期間きかんではアメリカに次つぐ2番目ばんめの多おおさとなっています。

一方いっぽう、文学ぶんがく賞しょうは1994年ねんの大江おおえ健三郎けんざぶろうさん、平和へいわ賞しょうは1974年ねんの佐藤さとう栄作えいさく元もと総理そうり大臣だいじん以来いらい受賞じゅしょうがなく、経済けいざい学賞がくしょうを受賞じゅしょうした人ひとはいません。

2021年ねんに物理ぶつり学賞がくしょうに輝かがやいた真鍋まなべ淑郎よしろうさん以来いらい、3年ねんぶりに日本人にっぽんじんの受賞じゅしょうがあるのか注目ちゅうもくされます。

ノーベル賞しょうの授賞じゅしょう式しきや晩ばんさん会かいはことし12月つきにスウェーデンのストックホルムで開ひらかれます。

選考せんこうの過程かていは

ノーベル賞しょうの選考せんこうは、発表はっぴょうの1年ねんほど前まえに世界中せかいじゅうの大学だいがく教授きょうじゅや歴代れきだいのノーベル賞しょう受賞じゅしょう者しゃなどに推薦すいせん依頼いらいを出だすことから始はじまります。

推薦すいせんは1月末げつまつに締め切しめきられ、この中なかから候補こうほ者しゃを絞り込しぼりこむ選考せんこうが各かく賞しょうごとの委員いいん会かいによって進すすめられます。

選考せんこうの過程かていは50年ねん後ごまで公表こうひょうされないことになっています。

論文ろんぶん引用いんよう数すうなどで予測よそく

ノーベル賞しょうの選考せんこうは水面すいめん下かで行おこなわれるため、毎年まいとし、発表はっぴょうの時期じきが近ちかづくと、世界中せかいじゅうでさまざまな受賞じゅしょう者しゃの予想よそうが行おこなわれます。

イギリスの学術がくじゅつ情報じょうほうサービス会社かいしゃ「クラリベイト」は、世界せかいの研究けんきゅう者しゃが発表はっぴょうした研究けんきゅう論文ろんぶんの引用いんよう回数かいすうなどを元もとに毎年まいとし、ノーベル賞しょうの受賞じゅしょうが有力ゆうりょく視しされる研究けんきゅう者しゃを発表はっぴょうしています。

去年きょねんまでにあわせて421人にんの研究けんきゅう者しゃに受賞じゅしょうの可能かのう性せいがあると予想よそうし、このうち75人にんがその後そのご、ノーベル賞しょうを受賞じゅしょうしています。

ノーベル賞しょうの“前哨ぜんしょう戦せん”

手てがかりになる情報じょうほうはほかにもあります。

国際こくさい的てきに注目ちゅうもくされる学術がくじゅつ賞しょうの受賞じゅしょう歴れきです。

ノーベル賞しょうの“前哨ぜんしょう戦せん”と位置いちづけられているのが、カナダの「ガードナー国際こくさい賞しょう」やアメリカの「ラスカー賞しょう」などです。

実際じっさいに、2012年ねんに生理学せいりがく・医学いがく賞しょうを受賞じゅしょうした山中やまなか伸しん弥わたるさんは受賞じゅしょうの3年ねん前まえ、「ガードナー国際こくさい賞しょう」と「ラスカー賞しょう」に選えらばれていたほか、2016年ねんに受賞じゅしょうした大隅おおすみ良典よしのりさんも受賞じゅしょうの前年ぜんねんに「ガードナー国際こくさい賞しょう」に選えらばれています。

現地げんちメディアの予想よそう

こうした受賞じゅしょう歴れきに加くわえて注目ちゅうもくされているのが、ノーベル賞しょうの発表はっぴょうが行おこなわれるスウェーデンの現地げんちメディアによる受賞じゅしょう予想よそうです。

3年ねん前まえ（2021年ねん）は現地げんちのラジオ局きょくがその年としに物理ぶつり学賞がくしょうを受賞じゅしょうすることになる真鍋まなべ淑郎よしろうさんの名前なまえと、「全ぜん球たま気候きこうモデル」という研究けんきゅう分野ぶんやを事前じぜんに予想よそうし、的中てきちゅうさせました。

当時とうじ、この分野ぶんやの研究けんきゅうは物理ぶつり学賞がくしょうの対象たいしょうではないと見みられていたことから関係かんけい者しゃを驚おどろかせました。

さらに、2年ねん前まえ（2022年ねん）に物理ぶつり学賞がくしょうを受賞じゅしょうした「量子りょうしもつれ」や、去年きょねん受賞じゅしょうした「アト秒びょう物理ぶつり学がく」についても、発表はっぴょうの前まえの年としまでに現地げんちメディアが予想よそうしていた研究けんきゅう分野ぶんやでした。

注目ちゅうもくの研究けんきゅうは

こうした経緯けいいから物理ぶつり学賞がくしょうで注目ちゅうもくされているのが、去年きょねんとおととしの現地げんちメディアの予想よそうに挙あがっている国際こくさい研究けんきゅうプロジェクト「IceCube」です。

南極なんきょくの氷こおりを使つかって素粒子そりゅうしの1つ「ニュートリノ」を検出けんしゅつする世界せかい14か国かこくが参加さんかするプロジェクトで、日本にっぽんからは千葉ちば大学だいがくが参加さんかしています。

また、化学かがく賞しょうについては、3年ねん前まえ（2021年ねん）に現地げんちの新聞しんぶん社しゃの予想よそうで東京とうきょう大学だいがくの藤田ふじた誠まこと 卓越たくえつ教授きょうじゅの名前なまえが挙あがりました。

有機ゆうき化学かがくが専門せんもんの藤田ふじたさんは「自己じこ組織そしき化か」と呼よばれる現象げんしょうを研究けんきゅうしていて、国際こくさい的てきに注目ちゅうもくされる賞しょうを受賞じゅしょうしているほか、4年ねん前まえ（2020年ねん）には、イギリスの学術がくじゅつ情報じょうほうサービス会社かいしゃから受賞じゅしょうの可能かのう性せいがある研究けんきゅう者しゃに選えらばれています。

物理ぶつり学賞がくしょうで注目ちゅうもく 宇宙うちゅうの謎なぞに迫せまる「IceCube」とは

物理ぶつり学がくの分野ぶんやで重要じゅうような成果せいかをあげたとして注目ちゅうもくされているのが、南極なんきょくで素粒子そりゅうしの1つ「ニュートリノ」を観測かんそくしている国際こくさい共同きょうどうプロジェクト「IceCube」です。

ニュートリノは物質ぶっしつをすり抜すりぬけてしまうため観測かんそくが難むずかしいとされていますが、プロジェクトでは、氷こおりと反応はんのうした時ときに出でるわずかな光ひかりを検出けんしゅつしようと、南極なんきょくの氷こおりの中なかに5000個こ余あまりの検出けんしゅつ器きを設置せっちしました。

そして、宇宙うちゅうから届とどくエネルギーの高たかいタイプのニュートリノをとらえ、このニュートリノがおよそ40億おく光年こうねん離はなれた天体てんたいから届とどいたことを6年ねん前まえ（2018年ねん）に論文ろんぶんで発表はっぴょうしました。

検出けんしゅつされた高たかいエネルギーのニュートリノは巨大きょだいなブラックホールから「ジェット」と呼よばれる高温こうおんのガスが噴出ふんしゅつした際さいに発生はっせいしたとみられ、謎なぞの多おおいブラックホールの活動かつどうや宇宙うちゅうの成り立なりたちの解明かいめいにつながる成果せいかとして注目ちゅうもくされています。

世界せかい14か国かこくが参加さんかするこのプロジェクトには日本にっぽんの研究けんきゅう機関きかんとして唯一ゆいいつ、千葉ちば大学だいがくの研究けんきゅうチームが参加さんかしています。

千葉ちば大学だいがくの石原いしはら安野やすの 教授きょうじゅは「ニュートリノは非常ひじょうに透過とうか性せいの高たかい素粒子そりゅうしのため遠とおくの宇宙うちゅうや天体てんたいの内部ないぶからの情報じょうほうを運はこんでくれます。従来じゅうらいの観測かんそく手法しゅほうに加くわえて高たかいエネルギーのニュートリノを観測かんそくすることで宇宙うちゅうをより広ひろい視野しやで見みることができる」と話はなしていました。

化学かがく賞しょうで注目ちゅうもく 産業さんぎょうへの応用おうようが進すすむ「自己じこ組織そしき化か」とは

産業さんぎょうへの応用おうようが進すすむ成果せいかとして注目ちゅうもくされているのが、東京とうきょう大学だいがくの藤田ふじた誠まこと 卓越たくえつ教授きょうじゅが取り組とりくむ「自己じこ組織そしき化か」と呼よばれる現象げんしょうの研究けんきゅうです。

「自己じこ組織そしき化か」は分子ぶんしどうしがひとりでに結むすびついて立体りったい構造こうぞうを作り出つくりだす現象げんしょうです。

藤田ふじた卓越たくえつ教授きょうじゅは金属きんぞくイオンと有機ゆうき分子ぶんしを混まぜることで、100万まん分ぶんの1ミリサイズの正方形せいほうけいをした分子ぶんしの集合しゅうごう体たいがつくられることを発見はっけんしました。

さらに、こうした分子ぶんしの立体りったい構造こうぞうを使つかい「結晶けっしょうスポンジ法ほう」と呼よばれる物質ぶっしつの解析かいせき手法しゅほうを開発かいはつしました。

分子ぶんしの立体りったい構造こうぞうをいわば「かご」のように使つかうことで、その中なかに入いれた物質ぶっしつを詳くわしく解析かいせきすることができるようになりました。

この手法しゅほうは産業さんぎょうへの応用おうようが進すすんでいて、神奈川かながわ県内けんないにある大手おおて飲料いんりょうメーカーの研究所けんきゅうじょでは新しん商品しょうひんの開発かいはつに生いかしています。

メーカーは、ビールの原料げんりょうのホップを熟成じゅくせいさせた時ときに生しょうじる成分せいぶんを解析かいせきし、効率こうりつのよい製造せいぞう方法ほうほうや品質ひんしつの均一きんいつ化かにつなげたということです。

大手おおて飲料いんりょうメーカーの谷口たにぐち慈将しょう 主任しゅにん研究けんきゅう員いんは「より品質ひんしつ的てきに優すぐれた製品せいひんなどを開発かいはつできる可能かのう性せいが高たかまるので、この技術ぎじゅつへの期待きたい感かんは高たかい」と話はなしていました。