オリンピック 選手せんしゅや審判しんぱんへひぼう中傷ちゅうしょう相次あいつぐ その投稿とうこうの前まえに…

審判しんぱんには「下手へたくそ」「辞やめてしまえ」

パリオリンピックではSNSでひぼう中傷ちゅうしょうが相次あいつぎ、選手せんしゅからは悲痛ひつうな訴うったえも。JOC＝日本にっぽんオリンピック委員いいん会かいが異例いれいの声明せいめいを出だす事態じたいになっています。

その投稿とうこう、本当ほんとうに応援おうえんですか？

陸上りくじょうの混合こんごう競歩きょうほリレーに出場しゅつじょうする柳井やない綾あや音おと選手せんしゅは、個人こじん種目しゅもくの女子じょし20キロ競歩きょうほの出場しゅつじょうを辞退じたいしたあと、自身じしんのSNSに「身勝手みがってだ」などの投稿とうこうが相次あいついだことを明あかしました。

こうした事態じたいを受うけて、JOC＝日本にっぽんオリンピック委員いいん会かいはメッセージを投稿とうこうする際さいのマナーを守まもることなどを求もとめる異例いれいの声明せいめいを出だし、侮辱ぶじょくや脅迫きょうはくなどの行き過いきすぎた内容ないように対にたいしては警察けいさつへの通報つうほうや法的ほうてき措置そちも検討けんとうするとしています。

声明せいめいの中なかでJOCは「激励げきれいや応援おうえんが大おおきな力ちからとなっている一方いっぽうで心こころないひぼう中傷ちゅうしょうや批判ひはんなどに心こころを痛いため、不安ふあんや恐怖きょうふを感かんじることもある」と理解りかいを呼よびかけています。

今回こんかいは審判しんぱんに対にたいする投稿とうこうも取り沙汰とりざたされています。

先月せんげつ30日にちに行おこなわれたバスケットボール男子だんしの日本にっぽん対たいフランスの試合しあいではフランスが同点どうてんに追おいつくフリースローにつながった河村かわむら勇いさむ輝てる選手せんしゅへのファウルの判定はんていを巡めぐり、審判しんぱんを務つとめた女性じょせいのSNSに「下手へたくそ」「辞やめてしまえ」などと個人こじんを攻撃こうげきするような投稿とうこうがありました。

SNSを通つうじたひぼう中傷ちゅうしょうは前回ぜんかいの東京とうきょう大会たいかいでも卓球たっきゅうの水谷みずたに隼はやぶささんや体操たいそうの橋本はしもと大輝だいき選手せんしゅなどが被害ひがいに苦くるしんだことを明あきらかにしています。

ひぼう中傷ちゅうしょうを受うけた選手せんしゅは…

SNSでひぼう中傷ちゅうしょうを受うけた選手せんしゅの一部いちぶはみずからの言葉ことばで胸むねの内うちをつづっています。

陸上りくじょう競歩きょうほの柳井やない綾あや音おと選手せんしゅは2種目しゅもくにエントリーしていましたが混合こんごう競歩きょうほリレーに専念せんねんするため個人こじん種目しゅもくの女子じょし20キロ競歩きょうほの出場しゅつじょうを辞退じたいしました。このあとひぼう中傷ちゅうしょうの投稿とうこうが相次あいつぎ、柳井やない選手せんしゅは自身じしんのSNSで心境しんきょうを明あかしました。

柳井やない選手せんしゅのＸえっくすより

「たくさんの方ほうから厳きびしい言葉ことばに傷きずつきました。試合しあい前まえは余計よけい神経質しんけいしつになり、繊細せんさいな心こころになります。批判ひはんではなく応援おうえんが私わたしたち選手せんしゅにとって力ちからになります。批判ひはんは選手せんしゅを傷きずつけます。このようなことが少すこしでも減へって欲ほしいと願ねがっています」

また、長野ながの県けん出身しゅっしんでカナダ代表だいひょうとして柔道じゅうどう女子じょし57キロ級きゅうに出場しゅつじょうした出口いでぐちクリスタ選手せんしゅは決勝けっしょうで相手あいての韓国かんこく代表だいひょうの選手せんしゅが反則はんそく負まけとなり、金メダルきんめだるを獲得かくとくしました。これに対にたいしてSNSには「立たっているだけで勝かった」などの投稿とうこうが書き込かきこまれました。

出口いでぐち選手せんしゅはSNSで自身じしんの考かんがえを述のべました。

出口いでぐち選手せんしゅのＸえっくすより

「選手せんしゅをかばいたくなる気持きもちもわかるけど、こういう所ところでの不毛ふもうな争あらそいは国くにや選手せんしゅ、いろんな人ひとを巻き込まきこんでマイナスなイメージを植え付うえつけるだけで得とくする人ひとは誰だれ1人にんとしていないです。ネガティブな意見いけんを持もつなと言いっているのではなくて他人たにんが悲かなしくなるような言葉ことばの矢やをわざわざ放はなたなくてもいいのではないでしょうか」

審判しんぱんへのひぼう中傷ちゅうしょう 選手せんしゅも懸念けねん

今回こんかい、取り沙汰とりざたされている判定はんていをめぐる審判しんぱんへのひぼう中傷ちゅうしょうについては、当事者とうじしゃである選手せんしゅも懸念けねんを示しめしています。

柔道じゅうどう男子だんし60キロ級きゅうの永山ながやま竜りゅう樹じゅ選手せんしゅは先月せんげつ27日にち、スペインのフランシスコ・ガルリゴス選手せんしゅと準々じゅんじゅん決勝けっしょうで対戦たいせんし、絞め技しめわざで一いち本ほん負まけを喫きっしました。

この際さい、審判しんぱんの「待まて」がかかったあともガルリゴス選手せんしゅが絞め技しめわざをかけ続つづけたとして永山ながやま選手せんしゅ側がわが抗議こうぎしましたが、判定はんていは覆くつがえりませんでした。

試合しあい後ご、ガルリゴス選手せんしゅのSNSには「危険きけんな行為こういだ」などとする批判ひはんが大量たいりょうに寄よせられました。また、審判しんぱんを務つとめた女性じょせいに対にたいしてもSNSで「誤審ごしんだ」とか、「買収ばいしゅうされている」などの書き込かきこみが相次あいつぎ、「柔道じゅうどうの審判しんぱん」が一時いちじ、旧きゅうツイッターのXでトレンドワードに入はいりました。

こうした中なか、永山ながやま選手せんしゅは自身じしんのインスタグラムに「お互おたがい必死ひっしに戦たたかった結果けっかなので、選手せんしゅへのひぼう中傷ちゅうしょうなどは控ひかえていただきたいです。審判しんぱんの方ほうも判断はんだんの難むずかしい状況じょうきょうだったと思おもいます」などと投稿とうこうしたほか、ガルリゴス選手せんしゅと2人にんで撮影さつえいした写真しゃしんもアップし、謝罪しゃざいのことばがあったことを明あかしました。

何なにがひぼう中傷ちゅうしょうになるのか？

ソーシャルメディアに詳くわしい国際こくさい大学だいがくの山口やまぐち真一しんいち准じゅん教授きょうじゅは、ひぼう中傷ちゅうしょうは内容ないようによって類型るいけいがあるとしています。

(中傷ちゅうしょうの類型るいけい)　　　　　　　　(例れい)

1. 脅迫きょうはく・恐喝きょうかつ　　　　　「殺ころす」「死しね」

2. 侮辱ぶじょく的てき・攻撃こうげき的てき　　　「バカ」「消きえろ」

3. 容姿ようし・人格じんかく否定ひてい　　　「顔かおが気持きもち悪わるい」

4. 親族しんぞく・組織そしきへの悪口わるぐち　「おまえの親おやはクズだ」

5. 差別さべつ的てきな内容ないよう　　　　「男おとこ・女おんなのくせに」

6. 不幸ふこうを望のぞむ・呪のろう　　「車くるまにひかれろ」

7. 排除はいじょ　　　　　　　　「あなたの話はなしは聞きかない」

8. 嘘うその情報じょうほう　　　　　　「反はん社会しゃかい的てき勢力せいりょくとつながっている」

9. 性的せいてき表現ひょうげん　　　　　　「裸はだかを見みせろ」

ひぼう中傷ちゅうしょう なぜおきる？

なぜSNSでひぼう中傷ちゅうしょうが相次あいつぐのか。山口やまぐち真一しんいち准じゅん教授きょうじゅは次つぎのように分析ぶんせきします。

山口やまぐち真一しんいち准じゅん教授きょうじゅ

「オリンピックは多おおくの人ひとたちが注目ちゅうもくし、国くにと国くにとがメダルの数かずを競い合きそいあう戦たたかいになっていて、より一層いっそう、熱心ねっしんに応援おうえんする人ひとたちが増ふえるイベントだ。このため、ひぼう中傷ちゅうしょうの問題もんだいが過熱かねつしやすい下地したじができている」

また、SNSなどでは、自分じぶんがひぼう中傷ちゅうしょうをしていることに気きがついていないケースも非常ひじょうに多おおいといいます。

「悪わるいことをしたんだからバッシングされて当然とうぜんだろうという、その人ひとの中なかでの価値かち観かん、正義せいぎ感かんで攻撃こうげきをしてしまっている。試合しあいについての論評ろんぴょうとしての批判ひはんならば許ゆるされるが、選手せんしゅの人格じんかくを否定ひていしたり、事実じじつではないデマによって攻撃こうげきしたりするのは明あきらかなひぼう中傷ちゅうしょうだ」

その上うえで、気きがつかないうちにひぼう中傷ちゅうしょうとなる投稿とうこうをしてしまわないために、3つのポイントを挙あげました。

▽投稿とうこうする前まえに必かならず読み返よみかえす

▽他者たしゃを尊重そんちょうする意識いしきを持もつ

▽批判ひはんとひぼう中傷ちゅうしょうは違ちがうということをしっかり認識にんしきしておく

山口やまぐち准じゅん教授きょうじゅ

「今いまの時代じだいは非常ひじょうに簡単かんたんに投稿とうこうができてしまうし、著名ちょめいなアスリートに対にたいしても気軽きがるに直接ちょくせつメッセージを送おくることができる。それは裏うらを返かえせばそれだけ一人ひとりひとりが情報じょうほう発信はっしん力りょくを持もっているということだ。だからこそ投稿とうこうを読み返よみかえす、そして投稿とうこうするまでにひと呼吸こきゅう置おくという癖くせをつけてほしい」

《全文ぜんぶん》JOC＝日本にっぽんオリンピック委員いいん会かいの声明せいめい

いつもTEAM JAPANを応援おうえんいただき、誠まことにありがとうございます。応援おうえんいただく皆みなさまへ改あらためてSNS等とうの投稿とうこうに関にかんしてお願おねがいがあります。

アスリートは4年ねんに一度いちど開ひらかれるオリンピックに向むけて、自分じぶん自身じしんのため、そして支ささえてくださる多おおくの方ほうのため、人知ひとしれず努力どりょくを重かさねてきました。どのアスリートも、一瞬いっしゅん一瞬いっしゅんを無駄むだにせず、緊張きんちょうの中なかで、自身じしんが最高さいこうのパフォーマンスを発揮はっきできるよう、調整ちょうせいして大会たいかいに臨のぞんでいます。

中なかには、試合しあい前まえにコンディションを見極みきわめて厳きびしい選択せんたくをせざるを得えないこともあります。どれだけ準備じゅんびを重かさねても、試合しあいでは予期よきせぬこともたくさんあります。そのすべてを受け入うけいれて、自分じぶんにできる最高さいこうのパフォーマンスを発揮はっきすべく、アスリートはその場ばに立たっています。応援おうえんいただく皆みなさまに、是非ぜひアスリートがこれまで歩あゆんできた道みちのりにも思おもいをはせ、その瞬間しゅんかんを見守みまもり、応援おうえんいただけますと幸さいわいです。

オリンピックに臨のぞむアスリートは、相手あいてをリスペクトしています。体操たいそう競技きょうぎでは、自身じしんの演技えんぎが終おわった後のち、ライバルが演技えんぎを開始かいしするにあたり、口くちに指ゆびをあてて、観客かんきゃくに静しずかにするよう求もとめる選手せんしゅがいました。柔道じゅうどうでは、試合しあいの時ときには納得なっとくがいかないことがあっても、競技きょうぎ後ごに互たがいの健闘けんとうをたたえ合あう選手せんしゅがいました。

スポーツで自身じしんの競技きょうぎ力りょくを高たかめるには、競い合きそいあう相手あいてが必要ひつようです。対戦たいせん相手あいては、戦たたかう相手あいてであるとともに、ともに高たかめ合あう仲間なかまでもあります。そのリスペクトこそが、自身じしんの競技きょうぎ力りょくを高たかめ、スポーツの価値かちをより高たかめるものと信しんじています。

SNS等とうを通つうじた皆みなさまからの激励げきれい・応援おうえんメッセージは、アスリート、監督かんとく・コーチへの大おおきな力ちからとなっています。その一方いっぽうで、心こころない誹謗ひぼう中傷ちゅうしょう、批判ひはん等とうに心こころを痛いためるとともに不安ふあんや恐怖きょうふを感かんじることもあります。

TEAM JAPANを応援おうえんいただく皆みなさまには、誹謗ひぼう中傷ちゅうしょうなどを拡散かくさんすることなく、SNS等とうでの投稿とうこうに際にさいしては、マナーを守まもっていただきますよう改あらためてお願おねがい申し上もうしあげます。なお、侮辱ぶじょく、脅迫きょうはくなどの行き過いきすぎた内容ないように対にたいしては、警察けいさつへの通報つうほうや法的ほうてき措置そちも検討けんとういたします。皆みなさまのご理解りかい・ご協力きょうりょくをよろしくお願おねがいいたします。