COP29きょう開幕かいまく 米べい大統領だいとうりょう選せんトランプ氏し勝利しょうりで今後こんごに不透明ふとうめい感かんも

「COP29」は日本にっぽん時間じかんの11日にちからアゼルバイジャンの首都しゅと、バクーで始はじまり、合あわせて190を超こえる国くにと地域ちいきが参加さんかする見通みとおしです。

今回こんかいのCOP29では、先進せんしん国こくが途上とじょう国こくの温暖おんだん化か対策たいさくを支援しえんするための資金しきんについて、来年らいねん以降いこうの、目標もくひょうとする金額きんがくや、負担ふたんのあり方ありかたなどをめぐる議論ぎろんの行方ゆくえが大おおきな焦点しょうてんとなります。

また、来年らいねん2月つきまでに各国かっこくが国連こくれんへの提出ていしゅつを求もとめられている2035年ねんに向むけた温室おんしつ効果こうかガスの新あらたな削減さくげん目標もくひょうも議論ぎろんされる見通みとおしです。

12日にちからの首脳しゅのう級きゅう会合かいごうには、およそ100の国くにや地域ちいきから首脳しゅのうが参加さんかし、ウクライナのゼレンスキー大統領だいとうりょうや、ロシアのミシュスチン首相しゅしょうの参加さんかも予定よていされています。

一方いっぽうで、今月こんげつ行おこなわれたアメリカ大統領だいとうりょう選挙せんきょで勝利しょうりしたトランプ氏しは就任しゅうにん後ご、再ふたたびパリ協定きょうていから離脱りだつする方針ほうしんとみられ、世界せかい第だい2位いの温室おんしつ効果こうかガスの排出はいしゅつ国こくであるアメリカの今後こんごの協力きょうりょくが不透明ふとうめいとなっています。

専門せんもん家かなどからは、今回こんかいの選挙せんきょ結果けっかがCOPでの交渉こうしょうをさらに難航なんこうさせる可能かのう性せいもあるという指摘してきもでるなか、各国かっこくが深刻しんこく化かする気候きこう変動へんどうに対にたいし、一致いっちした対応たいおうを示しめせるかが焦点しょうてんです。

会議かいぎは22日にちまで開ひらかれる予定よていです。

トランプ氏しと気候きこう変動へんどうめぐる外交がいこう方針ほうしん

気候きこう変動へんどう対策たいさくに消極しょうきょく的てきだと指摘してきされるトランプ氏し。

前回ぜんかいの政権せいけん時じには、気候きこう変動へんどうをめぐるアメリカの外交がいこう方針ほうしんにも大おおきな影響えいきょうを与あたえました。

2017年ねん1月つきに大統領だいとうりょうに就任しゅうにんすると、6月つきにはパリ協定きょうていからの離脱りだつを表明ひょうめいし、その後そのご正式せいしきに離脱りだつしました。

二に酸化さんか炭素たんそなど温室おんしつ効果こうかガスの世界せかい第だい2位いの排出はいしゅつ国こくであるアメリカのパリ協定きょうていからの離脱りだつは、先進せんしん国こくと途上とじょう国こくが協力きょうりょくして排出はいしゅつ削減さくげんを目指めざすという協定きょうていの実効じっこう性せいを大おおきく損そんいかねないとして、国際こくさい社会しゃかいに衝撃しょうげきを与あたえました。

さらには、途上とじょう国こくの気候きこう変動へんどう対策たいさくを進すすめるため、先進せんしん国こくが中心ちゅうしんとなって国際こくさい的てきな基金ききんへの拠出きょしゅつを行おこなっていますが、トランプ氏しは前回ぜんかいの政権せいけん時じに、この基金ききんへの拠出きょしゅつを止とめました。

こうした気候きこう変動へんどう対策たいさくに消極しょうきょく的てきな動うごきは2021年ねんに民主党みんしゅとう・バイデン政権せいけんが誕生たんじょうし、パリ協定きょうていへの復帰ふっきと、基金ききんへの拠出きょしゅつが再開さいかいされるまで継続けいぞくされました。

トランプ氏しは今回こんかいの大統領だいとうりょう選挙せんきょでも、雇用こようを生み出うみだすためなどとして、アメリカの石油せきゆ・天然てんねんガス産業さんぎょうを重視じゅうしし、「掘ほって、掘ほって、掘ほりまくれ」などと発言はつげんして、気候きこう変動へんどう対策たいさくは後回あとまわしという姿勢しせいを打ち出うちだしていました。

アメリカの有力ゆうりょく紙し、ニューヨーク・タイムズは8日にち、トランプ氏しの政権せいけん移行いこうチームがパリ協定きょうていからの再さい離脱りだつを準備じゅんびしていると報ほうじ、大統領だいとうりょうに就任しゅうにん後ご、再ふたたびパリ協定きょうていを離脱りだつすることや、資金しきんの拠出きょしゅつを停止ていしすることは避さけられないという見方みかたが強つよまっています。

専門せんもん家か “2025年ねん以降いこうの資金しきん支援しえんのあり方ありかたが焦点しょうてん”

気候きこう変動へんどう問題もんだいの国際こくさい交渉こうしょうに詳くわしい東京とうきょう大学だいがく未来みらいビジョン研究けんきゅうセンターの高村たかむらゆかり教授きょうじゅは「一番いちばん大おおきな交渉こうしょう議題ぎだいは気候きこう変動へんどうにあてる資金しきんの長期ちょうき目標もくひょうだ」と述のべて、途上とじょう国こくの気候きこう変動へんどう対策たいさくに必要ひつような資金しきんが不足ふそくしているとされる中なか、今回こんかいのCOPでは、2025年ねん以降いこうの資金しきん支援しえんのあり方ありかたが焦点しょうてんで、年間ねんかんの目標もくひょう金額きんがくや先進せんしん国こくのみが負担ふたんするのか、新興しんこう国こくも含ふくめるのか、といった論点ろんてんで重要じゅうような交渉こうしょうが行おこなわれると指摘してきしました。

一方いっぽうで、いまのバイデン政権せいけんのもと資金しきん面めんでも大おおきく貢献こうけんしてきたアメリカの大統領だいとうりょう選挙せんきょで、トランプ氏しが勝利しょうりしたことについて「おそらく今後こんごパリ協定きょうていからのアメリカの離脱りだつがあらためて通告つうこくされ、気候きこう変動へんどうの資金しきんについて、すでに約束やくそくした供与きょうよが果はたされないことや、撤回てっかいされることが懸念けねんされる」と述のべました。

そして「資金しきんの問題もんだいは、地球ちきゅう規模きぼの課題かだいについて、さまざまな条件じょうけんの異ことなる国くにがどうやって協力きょうりょくして立ち向たちむかうかを確認かくにんする場ばでもあるが、今回こんかいの選挙せんきょ結果けっかを受うけて、資金しきんをめぐる交渉こうしょうは厳きびしい状況じょうきょうになり得える」と述のべ、アメリカの今後こんごの協力きょうりょくが不透明ふとうめいとなる中なか、資金しきんをめぐる交渉こうしょうがさらに難むずかしいものになる可能かのう性せいがあるという認識にんしきを示しめしました。

その上うえで「会議かいぎ前半ぜんはんの首脳しゅのう級きゅう会合かいごうで、アメリカでの選挙せんきょを受うけて各国かっこくがどういう発信はっしんをするのか注目ちゅうもくしている。アメリカが消極しょうきょく的てきな立場たちばを取とる場合ばあい、ほかの先進せんしん国こくに対にたいしての期待きたいやプレッシャーは大おおきくなるだろう」と述のべ、資金しきんの交渉こうしょうをめぐっては、EUや日本にっぽんなど、他たの主要しゅよう国こくの役割やくわりが大おおきくなる可能かのう性せいがあると分析ぶんせきしています。

最後さいごに、気候きこう変動へんどうは現在げんざい、世界せかい各地かくちで気象きしょう災害さいがいだけでなく食料しょくりょう不足ふそくも引き起ひきおこし、それが紛争ふんそうの要因よういんとなるなど、平和へいわや安全あんぜん保障ほしょうにも影響えいきょうを及およぼすほど深刻しんこく化かしていると指摘してきしたうえで、「アメリカ大統領だいとうりょう選挙せんきょの結果けっかに左右さゆうされることなく、世界せかいの気候きこう変動へんどう対策たいさくを将来しょうらいに向むけてどう強化きょうかするかという議論ぎろんが各国かっこくの代表だいひょうによってしっかりなされることを期待きたいしている」と話はなしていました。

来年らいねん以降いこうの支援しえんのあり方ありかたは決きまっておらず

今回こんかいのCOP29では、先進せんしん国こくが途上とじょう国こくの温暖おんだん化か対策たいさくを支援しえんするための資金しきんについて、来年らいねん以降いこうの目標もくひょうとする金額きんがくや負担ふたんのあり方ありかたなどを巡めぐる議論ぎろんの行方ゆくえが焦点しょうてんになります。

途上とじょう国こくの温暖おんだん化か対策たいさくについて、先進せんしん国こくは、2020年ねんまでに年間ねんかん1000億おくドルを支援しえんし、来年らいねんまで継続けいぞくすることで合意ごういしていますが、それ以降いこうの新あたらしい支援しえんのあり方ありかたは決きまっていません。

また、支援しえんする金額きんがくが年間ねんかん1000億おくドルに達たっしたのは目標もくひょうよりも2年ねん遅おそい2022年ねんで、途上とじょう国こくからは不満ふまんの声こえが上あがっています。

国連こくれんのグテーレス事務じむ総長そうちょうは「途上とじょう国こくは、クリーンエネルギーへの移行いこうや　すでに直面ちょくめんしている厳きびしい気象きしょうに対処たいしょするために緊急きんきゅうの支援しえんを必要ひつようとしていて、COP29では、数すう兆ちょうドルの新あらたな資金しきん目標もくひょうに合意ごういする必要ひつようがある」として、支援しえんする金額きんがくについて新あらたな目標もくひょうを決きめることが今回こんかいのCOPの最大さいだいのテーマだとしています。

資金しきんの負担ふたんをめぐっては、途上とじょう国こくがこれまで多おおくの温室おんしつ効果こうかガスを排出はいしゅつしてきた先進せんしん国こくが負担ふたんすべきだと主張しゅちょうする一方いっぽう、先進せんしん国こくは、途上とじょう国こくの中なかには急速きゅうそくに発展はってんした国くにもあるとして、支援しえんする側がわに回まわるよう求もとめる意見いけんもあります。

これまでの会議かいぎでも支援しえんの増加ぞうかを求もとめる途上とじょう国こくと負担ふたんの増加ぞうかを避さけたい先進せんしん国こくとの間まで紛糾ふんきゅうした経緯けいいもあり、支援しえんの規模きぼやあり方ありかたをめぐって、激はげしい議論ぎろんが交かわされるものとみられます。

「COP」とは

「COP」は、1992年ねんに採択さいたくされた国際こくさい条約じょうやく「気候きこう変動へんどう枠わく組ぐみ条約じょうやく」の「締約ていやく国こく会議かいぎ」のことで、現在げんざい198の国くにと地域ちいきが参加さんかしています。

気候きこう変動へんどうに関にかんする最大さいだいの国際こくさい会議かいぎで、毎年まいとし、政府せいふや研究けんきゅう者しゃ、NGOなどが気候きこう変動へんどうに関にかんする最新さいしんの情報じょうほうや議論ぎろんを交かわし、取り組とりくみを前まえに進すすめてきました。

具体ぐたい的てきには、1997年ねんに京都きょうとで行おこなわれた「COP3」で、先進せんしん国こくに温室おんしつ効果こうかガスの削減さくげんを義務ぎむづける「京都きょうと議定ぎてい書しょ」を採択さいたくしたほか、2015年ねんにフランスのパリで開ひらかれた「COP21」では、発展はってん途上とじょう国こくを含ふくむすべての国くにが削減さくげんに取り組とりくむことを定さだめた「パリ協定きょうてい」を採択さいたくしました。

また、UAE＝アラブ首長しゅちょう国こく連邦れんぽうで開ひらかれた前回ぜんかいの「COP28」では「化石かせき燃料ねんりょうからの脱却だっきゃくを進すすめ、この重要じゅうような10年間ねんかんで行動こうどうを加速かそくさせる」ことで合意ごういし、世界せかいの平均へいきん気温きおんの上昇じょうしょうを1.5度どに抑おさえるため、石炭せきたんや石油せきゆ、天然てんねんガスなどすべての化石かせき燃料ねんりょうを対象たいしょうに脱却だっきゃくを進すすめることになりました。

「COP29」は、今月こんげつ11日にちから22日にちまでの日程にっていで行おこなわれ、12日にちと13日にちに首脳しゅのう級きゅう会合かいごうが18日にちからは閣僚かくりょう級きゅう会合かいごうが開ひらかれる予定よていです。

議長ぎちょう国こくアゼルバイジャンとは

COP29の議長ぎちょう国こくを務つとめる旧きゅうソビエトのアゼルバイジャンはカスピ海かすぴかいに面めんする産油さんゆ国こくです。

独立どくりつ後ご、原油げんゆの輸出ゆしゅつなどで得えた収入しゅうにゅうで都市とし整備せいびを進すすめ、首都しゅとバクーの新しん市街しがいには、近代きんだい的てきなデザインのビルが建ち並たちならんでいます。

ただ、ここ数すう年ねんは原油げんゆの減産げんさんが続つづき、アゼルバイジャン政府せいふは2030年ねんまでに国内こくないの総そう発電はつでん量りょうに占しめる再生さいせい可能かのうエネルギーの割合わりあいを30％にまで引き上ひきあげ、2050年ねんまでに温室おんしつ効果こうかガスの排出はいしゅつ量りょうを1990年ねんと比くらべて40％削減さくげんする方針ほうしんを掲かかげています。

アゼルバイジャンの政府せいふ高官こうかんは先月せんげつ、NHKのインタビューでアゼルバイジャンが議長ぎちょう国こくになることについて「再生さいせい可能かのうエネルギーへの移行いこうを進すすめる用意よういがあるという強つよい政治せいじ的てき意志いしを示しめしたものだ」と述のべ、その意義いぎを強調きょうちょうしました。

一方いっぽう、アゼルバイジャンは隣国りんごくアルメニアとの間まで長年ながねん争あらそってきたナゴルノカラバフをめぐる軍事ぐんじ行動こうどうで、アルメニアに勝利しょうりしたものの緊張きんちょう関係かんけいが続つづいていて、平和へいわ条約じょうやくの締結ていけつには至いたっていません。