「子こども、どうしよう」夫婦ふうふともに感染かんせん 東京とうきょう 40代だい女性じょせい

ことし7月つき、夫おっとが発熱はつねつし、検査けんさで陽性ようせいと判明はんめいしました。

毎日まいにち仕事しごとに出でかけてはいましたが、感染かんせんの経路けいろは思い当おもいあたらなかったといいます。

夫おっとは自宅じたく療養りょうようすることになり、女性じょせいは家庭かてい内ない感染かんせんを食い止くいとめなくてはと、思おもいつく限かぎりの対策たいさくをとりながら看病かんびょうにあたりました。

女性じょせい

「同おなじタオルは使つかわずに、ペーパータオルと夫おっと専用せんようのごみ箱ごみばこを用意よういし、はみがき粉みがきこの共用きょうようも避さけました。夫おっとの部屋へやには入はいらないようにして、食事しょくじや飲のみものはトレイに乗のせて部屋へやの入り口いりくちに置おきました。夫おっとが触さわったところをアルコール消毒しょうどくしてまわっていましたがきりがなく、あまり触さわらないでと言いって必要ひつようなものは代かわりに取とってあげていました。それぐらいしか正直しょうじき、思おもいつかなかったですね」

夫おっとの感染かんせんが確認かくにんされた4日にち後ごの朝あさ。

目めが覚さめて、熱ねつっぽさを感かんじました。

親子おやこでPCR検査けんさを受うけると、女性じょせいの陽性ようせいが判明はんめい。

子こどもは陰性いんせいでした。

保健所ほけんじょの職員しょくいんと電話でんわで話はなす際さいにも息いきが途切とぎれ途切とぎれで、職員しょくいんからは「すぐに入院にゅういんの手配てはいをしましょう」と言いわれました。

その後そのごの職員しょくいんとのやりとりは、こうだったといいます。

＜女性じょせいと職員しょくいんのやりとり＞

女性じょせい:「まだ5歳さいの子こどもがいます。一緒いっしょに病院びょういんに連つれて行いけますか？」

職員しょくいん:「お子おこさんも陽性ようせいなら一緒いっしょに連つれて行いくこともできますが、陰性いんせいだと難むずかしいです。まずはご家族かぞくやご親族しんぞくで預あずかれる人ひとはいませんか」

女性じょせいは地方ちほう出身しゅっしんで実家じっかが遠とおく、近ちかくにいる夫おっとの母親ははおやは高齢こうれいです。

もし子こどもも感染かんせんしていて義母ぎぼにうつしてしまったら…。

そう考かんがえると、とても預あづけることはできませんでした。

＜女性じょせいと職員しょくいんのやりとり＞

女性じょせい:「夫おっとも陽性ようせいで自宅じたく療養りょうよう中ちゅうですし、身近みぢかに預あづけられる人ひともいません」

職員しょくいん:「一部いちぶの病院びょういんでは託児たくじサービスもありますが、具体ぐたい的てきにどこの病院びょういんかを教おしえることはできないんです。ご自身じしんで探さがしていただくことになってしまうんです…」

女性じょせい

「そのときは本当ほんとうに、人ひとと話はなしをすること自体じたいが苦くるしく、いっぱいいっぱいでした。40度どの熱ねつで頭あたまがもうろうとして回まわらない中なか、自力じりきで預あづけ先さきを探さがすのは無理むりだなというのが正直しょうじきな思おもいでした」

結局けっきょく、子こどもは自宅じたく療養りょうよう中ちゅうの夫おっとに託たくすしかありませんでした。

まだ体からだがつらそうな夫おっとに対にたいし「食事しょくじは別々べつべつにとってね。お風呂ふろに入はいるときはなるべく距離きょりをとって」と頼たのみました。

そして、元気げんきに遊あそぶ子こどもの姿すがたを見みて「せっかくこの子こだけは陰性いんせいなのに…。どうかこのまま元気げんきでいてほしい」と神頼かみだのみする思おもいで病院びょういんに向むかったということです。

「子こどもが発熱はつねつした」という知しらせでした。

検査けんさで陽性ようせいと確認かくにんされました。

女性じょせい

「やっぱり感染かんせんしてしまったかとショックでした。1時間じかんごとに自宅じたくに電話でんわをして、子こどもの様子ようすを確認かくにんしていました。熱ねつが上あがったり下さがったりするのが激はげしくて、どうかわたしほどには症状しょうじょうが重おもくならずに乗り切のりきってほしいと願ねがうことしかできませんでした」

子こどもだけが陰性いんせいという場合ばあい、同おなじ家いえの中なかにいながら感染かんせんから守まもることは困難こんなんだと女性じょせいは感かんじています。

女性じょせい

「小ちいさい子こどもは抱だっこをせがみますし、『これ、見みて見みて』が多おおいんです。食事しょくじも入浴にゅうよくもひとりではできません。『こっちに来きちゃだめ！』を続つづけていると、『自分じぶんが原因げんいんでお父おとうさんとお母おかあさんは具合ぐあいが悪わるくなったんだ』と思おもうようになってしまい、それが一番いちばん、つらかったです。わたしの入院にゅういん中ちゅうも不安ふあんだったのか、夜よるは夫おっとのそばに来きて眠ねむったそうです。同おなじ家いえにいながら小ちいさい子こどもに感染かんせんさせないというのは、現実げんじつにはすごく難むずかしいことだなと思おもいました」

家族かぞく3人にん、少すこしずつ日常にちじょうに戻もどっていますが、女性じょせい自身じしんは退院たいいんして1か月かげつたつ今いまも、感染かんせん前まえにはなかった症状しょうじょうに苦くるしめられているといいます。

まるで頭あたまの周まわりに「輪わ」がはめられ、それがぎゅっと締め付しめつけてくるような痛いたみがあり、ひどいときには、おう吐おうとも。

立たち続つづける、座すわり続つづけるといった同おなじ姿勢しせいが長時間ちょうじかん続つづくと、息いきが苦くるしくなり、めまいもしてくるということです。

そんなつらい体調たいちょうであっても今回こんかい取材しゅざいに応おうじてくれたのは、子こどもの預あづけ先さきがない親おやを支ささえる仕組しくみを整ととのえて欲ほしい、自分じぶんと同おなじように悩なやむ人ひとを1人にんでも減へらせればという思おもいからでした。

女性じょせい

「保健所ほけんじょは非常ひじょうにひっ迫ひっぱくしているので、すべてのフォローを求もとめることはできませんし、責せめる気持きもちはありません。ただ、子こどもを預あずかってもらえる場所ばしょの情報じょうほうや、困こまったときの相談そうだん窓口まどぐちを知しれるだけでも、安心あんしん感かんは全まったく違ちがってくると思おもいます。子こどもの預あづけ先さきがなく自宅じたくに置おいていけないという理由りゆうで、症状しょうじょうが重おもいのに入院にゅういんをためらう親おやもいるかもしれず、その迷まよいのせいで命いのちを落おとすことがあったとしたらすごく怖こわいし、悲かなしいことだと思おもいます」

（取材しゅざい:社会しゃかい部ぶ 記者きしゃ 藤島ふじしま温あつし実み）