父ちちに見みせたい花嫁はなよめ姿すがた 2人にんの若者わかものが踏み出ふみだす一いち歩ほ

新あらたな一いち歩ほを踏み出ふみだす2人にんの若者わかものがいます。

1人にん目めは地震じしんで父親ちちおやを亡なくした谷内たにうち未来みらいさん。

去年きょねん4月つきに結婚けっこんしました。

結婚けっこんを決きめるまで知しらなかった父ちちのひそかな願ねがい、そして愛あいとは…。

（ニュースメディア部ぶ 高野たかの茜あかね/金沢かなざわ局きょく 大村おおむら和輝かずてる/盛岡もりおか局きょく 加藤かとう早はや和子かずこ）

いつもみたいに名前なまえ呼よんで【谷内たにうち未来みらいさん】

1月つき1日にち、谷内たにうち未来みらいさんは、輪島わじま市し河井かわい町まちで輪島わじま塗ぬりのまき絵まきえ師しの父ちちの松井まつい健けんさん（当時とうじ55）、母ははのさおりさん、長男ちょうなんの拓たくさんの4人にんで過すごしていました。

今いまは輪島わじま市しを離はなれて暮くらす未来みらいさんですが、地震じしん発生はっせい当時とうじは実家じっかに帰省きせい中ちゅうでした。

激はげしい揺ゆれに襲おそわれ、健けんさんは倒たおれてきたタンスに胸むねを強つよく打うったとみられています。

未来みらいさんは弟おとうとと一緒いっしょに人工じんこう呼吸こきゅうや心臓しんぞうマッサージをしたり手てを握にぎって声こえをかけ続つづけたりしましたが亡なくなりました。

地震じしんから約やく1か月かげつ後ごに取材しゅざいした際さいの未来みらいさんの言葉ことばです。

未来みらいさん

「『未来みらいなら大丈夫だいじょうぶ』って笑わらって味方みかたでいてくれた。感謝かんしゃの気持きもちとか、恥はずかしくて大好だいすきとか言いっていなかったけれど今いま言いえることを生いきている間まにたくさん伝つたえればよかった。戻もどってきてほしいし、いつもみたいに笑わらって未来みらいって呼よんでほしい」

一いち歩ほ一いち歩ほ、自分じぶんたちの人生じんせいを

悲かなしみに暮くれる未来みらいさんを支ささえてきたのは地震じしん発生はっせいの4年ねん前まえから交際こうさいしていた谷内たにうち研介けんすけさんでした。

未来みらいさんと同おなじ輪島わじま市し出身しゅっしんで、1月つき1日にち、研介けんすけさんも輪島わじま市しにいました。

地震じしんのあと未来みらいさんの実家じっかに駆かけつけ、泣なき続つづける未来みらいさんに寄り添よりそっていました。

健けんさんに生前せいぜん、会あおうとしたことがありましたが会あうことはかないませんでした。

研介けんすけさん

「大事だいじに育そだててきた娘むすめをよう分わからん男おとこにやりたくないっていうのもあったんかなというのは思おもっていましたね」

地震じしんから2か月かげつ半はん後ご、研介けんすけさんは少すこしでも未来みらいさんや未来みらいさんの家族かぞくを明あかるくしたいという気持きもちから意いを決けっしてプロポーズ。

未来みらいさんは「お願おねがいします」と答こたえ、結婚けっこんを決きめました。

その時とき、ほおには涙なみだがつたっていました。

研介けんすけさん

「地震じしんがあってから未来みらいが泣なくことが多おおかったので自分じぶんがどう笑顔えがおにできるか考かんがえてはいるんですけど。健けんさんは未来みらいにとってすごく大事だいじな人ひとやったと思おもうので。なかなかうまくいかんかったり、まだ悩なやんでいるけど未来みらいを幸しあわせにしますという気持きもちが一番いちばん強つよいですね」

未来みらいさん

「1人にんで泣ないている時ときも『大丈夫だいじょうぶやよ』って声こえかけてくれたりしていて側がわにいてくれなかったらきっと私わたしは本当ほんとうにだめになっていただろうなと思おもう。自分じぶんだけ幸しあわせになってもいいのかなっていう気持きもちもあったけど、今後こんごも忘わすれることはないから時々ときどきつらくはなるけど、頑張がんばって強つよく生いきていこうと思おもうし、一いち歩ほ一いち歩ほ、自分じぶんたちの人生じんせいもあるから、ちょっとずつ前まえ向むいて生いきていかなきゃなって」

初はじめて知しる父ちちの思おもい

数すう日にち後ご、母はは・さおりさんにプロポーズされたことを報告ほうこく。

さおりさんのほおにも自然しぜんと涙なみだがつたっていたということです。

母はは・さおりさん

「うれしい。ものすごくうれしい。2人にんはまだ今いまから未来みらいがあるから。悲かなしいことばっかりじゃないということ。うれしいこともたくさんあるし、生いきてればね。幸しあわせになってほしいと思おもって」

報告ほうこく後ご、未来みらいさんは母ははから父ちちの思おもいを初はじめて聞きかされました。

未来みらいさんに交際こうさい相手あいてがいることを知しっていた健けんさんは、研介けんすけさんと会あうためのお店みせを探さがし、電話でんわで予約よやくできないか相談そうだんしていたこと。

さらに、いつか来くるであろうその日ひに向むけて未来みらいさんにはないしょで「結婚式けっこんしきのためにやせよう」と2人にんでダイエットを始はじめ、毎日まいにち10km歩あるいて体重たいじゅうを8kg落おとしていたこと。

結婚式けっこんしきに着きる服ふくや招待客しょうたいきゃくをさおりさんに相談そうだんしていたこと。

特とくに健けんさんがこだわっていたのは未来みらいさんと一緒いっしょにバージンロードを歩あるくときに流ながす曲きょくでした。

健けんさんが選えらんだ曲きょくはMISIAの「幸しあわせをフォーエバー」。

歌詞かしには家族かぞくの大切たいせつさや、結むすばれた2人にんの幸しあわせを願ねがう気持きもちが込こめられています。

幼おさない私わたしの手てを 優やさしく引ひいてくれた

父ちちと母ははに ありがとう 伝つたえたい想おもいが溢あふれてく

幸しあわせを繋つなぐフォーエバー 喜よろこびのときも 悲かなしみのときも

幸しあわせをふたりフォーエバー 共ともに生いきてゆきます

（MISIAの「幸しあわせをフォーエバー」より）

母はは・さおりさん

「携帯けいたい持もってきて、この歌うたこの歌うたって鳴ならして。何なん回かいかこの歌うたやぞと念ねん押おししていた。音楽おんがくもこれって勝手かってに決きめていたからすごい楽たのしみにしていたと思おもう」

一緒いっしょに歩あるいているよ

曲きょくを聴きいた未来みらいさんは歌詞かしと自分じぶんの思おもいを重ね合かさねあわせていました。

未来みらいさん

「すごい共感きょうかんできる歌詞かしです。2人にんで幸しあわせになってねって思おもってくれているのかなとすごく思おもいます。楽たのしみにしてくれていたんやというのもあったし、おとうなりにやりたいこともあったなら言いってくれたらいいんにって思おもった。一緒いっしょに歩あるきたかったという思おもいもあるけどこの歌詞かしみたいに2人にんでともに生いきていくねという気持きもちです」

未来みらいさんと研介けんすけさんは5月つきに挙式きょしきをする予定よていです。

「おとうは絶対ぜったいに見みてくれている」

未来みらいさんはこの曲きょくとともに健けんさんの写真しゃしんを持もってバージンロードを歩あるくつもりです。

さらに式しきでは健けんさんの席せきも用意よういするということです。

未来みらいさん

「絶対ぜったいに花嫁はなよめ姿すがたみたかっただろうし来きてくれるんじゃないかな。

やっぱり泣ないちゃうこともあるけど、これから私わたしも頑張がんばって強つよく生いきるから天国てんごくで心配しんぱいしないで見守みまもっていてほしいなって。

おとうが選えらんだこの曲きょくで一緒いっしょに歩あるいているよって伝つたわったらいいなって思おもいます」

2つの大だい地震じしん 支ささえがあって今いまがある【及川おいかわ蓮れん志こころざし選手せんしゅ】

2人にん目めは、日本にっぽん航空こうくう高校こうこう石川いしかわでキャプテンを務つとめる及川おいかわ蓮れん志こころざし選手せんしゅ。

東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの被災ひさい地ち、岩手いわて県けん宮古みやふる市し出身しゅっしんです。

2つの大だい地震じしんを経へて、野球やきゅうにかける特別とくべつな思おもいがあります。

60人にんあまりの部員ぶいんをまとめるキャプテンは宮古みやふる市し出身しゅっしん

能登のと半島はんとう地震じしんで被害ひがいを受うけた輪島わじま市しの日本にっぽん航空こうくう高校こうこう石川いしかわは、去年きょねん春はるのセンバツ高校こうこう野球やきゅうに出場しゅつじょうしました。

その後そのご、秋あきの高校こうこう野球やきゅう北信越ほくしんえつ大会たいかいでも準じゅん優勝ゆうしょうし、ことし3月つきに甲子園こうしえん球場きゅうじょうで開ひらかれるセンバツ高校こうこう野球やきゅうに出場しゅつじょうする可能かのう性せいがあります。

高校こうこうは地震じしんで学校がっこうや周辺しゅうへんの道路どうろなどに被害ひがいが出でて今いまも大半たいはんの生徒せいとは東京とうきょう 青梅おうめ市しで授業じゅぎょうなどが行おこなわれているということですが野球やきゅう部ぶは輪島わじま市しに残のこって練習れんしゅうを続つづけています。

キャプテンの及川おいかわ選手せんしゅは2011年ねんに発生はっせいした東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいで大おおきな被害ひがいが出でた岩手いわて県けん宮古みやふる市しの出身しゅっしんです。

中学生ちゅうがくせいの時ときに所属しょぞくしていた岩手いわて東ひがしボーイズで主おもにショートとして出場しゅつじょう。全国ぜんこく大会たいかいに出場しゅつじょうするなどしたため、複数ふくすうの高校こうこうから声こえがかかり充実じゅうじつした練習れんしゅう環境かんきょうなどを見みて、日本にっぽん航空こうくう石川いしかわに進すすむことを決きめました。

父ちち・及川おいかわ将司まさしさん

「県けん外がいの高校こうこうへの進学しんがくは本人ほんにんが希望きぼうしたことです。でも野球やきゅうを見みられなくなるのは寂さびしい」

母はは・及川おいかわ美由紀みゆきさん

「石川いしかわに地震じしんや雨あめが多おおいという印象いんしょうはあまりなかったです。とにかく頑張がんばってほしいと思おもっていました」

及川おいかわ選手せんしゅは年末ねんまつ年始ねんしなどはふるさとの宮古みやふる市しで過すごしていて、去年きょねんの元日がんじつの午後ごご4時じ10分ふんは携帯けいたい電話でんわの機種きしゅ変更へんこうをしようと家族かぞくと店みせにいました。

石川いしかわ県けんで最大さいだい震度しんど7の揺ゆれを観測かんそくした能登のと半島はんとう地震じしんは、岩手いわて県内けんないでも揺ゆれを観測かんそくしていました。

及川おいかわ選手せんしゅ

「強つよい地震じしんだなと思おもいましたが、あそこまで被害ひがいが大おおきいとは思おもいませんでした。2日にち後ごくらいに学校がっこうの寮りょうが使つかえなくなったと連絡れんらくがあり、輪島わじまに戻もどって野球やきゅうができるのかという不安ふあんがありました」

当時とうじも日本にっぽん航空こうくう石川いしかわはセンバツ高校こうこう野球やきゅうに出場しゅつじょうする可能かのう性せいがあったため、野球やきゅう部ぶの部員ぶいんは地震じしん後ごに山梨やまなし県けんにある系列けいれつ校こうで練習れんしゅうを続つづけ、去年きょねん1月つき26日にち、出場しゅつじょうが決きまりました。

及川おいかわ選手せんしゅはセンバツ高校こうこう野球やきゅうでベンチ入いりはしたものの、試合しあいには出場しゅつじょうせず、チームは1回戦かいせんで敗やぶれました。

夏なつを経へて新しんチームとなった時ときに及川おいかわ選手せんしゅはキャプテンに選えらばれました。

人前ひとまえに立たつのは嫌きらいではなく、もしかしたらキャプテンになるかもしれないと考かんがえていて打診だしんされた時ときは「来きたか」と思おもったそうです。

今いまは責任せきにんの重おもさも感かんじながら毎日まいにちを過すごしています。

2つの被災ひさい地ちで学まなんだこと

この年末ねんまつも宮古みやふる市しに戻もどりました。

早速さっそく、中学生ちゅうがくせいの時ときに所属しょぞくしていた岩手いわて東ひがしボーイズの練習れんしゅう施設しせつでバッティングなどの練習れんしゅうを行おこないました。

岩手いわて県けん宮古みやふる市しは東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいで大おおきな被害ひがいが出でました。

及川おいかわ選手せんしゅに震災しんさいのことを尋たずねると「本当ほんとうに覚おぼえていなくて、姉あねには自分じぶんが起おきた時ときに本棚ほんだなが倒たおれてきてものすごく泣ないていたよと言いわれた」ということです。

及川おいかわ選手せんしゅは当時とうじ3歳さい。

震災しんさいの記憶きおくはないということですが幼稚園ようちえんの預あずかり保育ほいく中ちゅうでした。

父親ちちおやの勤務きんむ先さきは津波つなみで流ながされるなどの被害ひがいが出でました。

小・中学校しょうちゅうがっこうでは防災ぼうさい教育きょういくなどがあり実際じっさいに遺構いこうを見みるなどして災害さいがいの恐おそろしさなどを学習がくしゅうしていたということです。

進学しんがく先さきに選えらんだ石川いしかわ県けんで起おきた能登のと半島はんとう地震じしんについて感かんじていることは…。

及川おいかわ選手せんしゅ

「高校生こうこうせいとなり、また災害さいがいが自分じぶんと関かかわりのある地域ちいきで発生はっせいして災害さいがいはおそろしいものだと改あらためて感かんじました。実際じっさいに現場げんばを見みてみないとわからないことがいっぱいありました」

宮古みやふる市し出身しゅっしんということで大おおきな地震じしんが起おきたらまずは、すぐに机つくえの下したなどに隠かくれるということは徹底てっていしていて高校こうこう進学しんがく後ごに大おおきめの地震じしんが起おきた際さいには素早すばやく机つくえの下したに隠かくれ寮りょうの同どう部屋へやの生徒せいとにも「速はやい」と言いわれたそうです。

及川おいかわ選手せんしゅは能登のと半島はんとう地震じしんの後のち、たびたび被災ひさいした地域ちいきでのボランティア活動かつどうに参加さんかしてきました。

去年きょねん9月つきの豪雨ごううの後のちには水路すいろにたまった泥どろを取り出とりだす作業さぎょうを行おこなったということで「被害ひがいが広範囲こうはんいにおよぶ中なか、ちょっとの場所ばしょしかやっていないが2日にちかかっても終おわらなかったです。自分じぶんたちにもやれることがあるし、輪島わじま市し全体ぜんたいの被害ひがいを考かんがえると復興ふっこうにも時間じかんがかかる」と感かんじたと話はなしていました。

石川いしかわ県けん輪島わじま市しと岩手いわて県けん宮古みやふる市しのそれぞれの被災ひさい地ちで学まなんだことがあります。

及川おいかわ選手せんしゅ

「いろいろな人ひとの支ささえがあって野球やきゅうができていることを忘わすれずにプレーをしたい。自分じぶんたちが、がむしゃらに全力ぜんりょくでプレーしている姿すがたを見みてほしいです。勝利しょうりという形かたちで恩返おんがえしができたらと思おもうし、被災ひさいした人ひとたちが少すこしでも元気げんきがでてくれたらうれしいです」

春はる夏なつそれぞれ甲子園こうしえんに出場しゅつじょうしたことがある石川いしかわ県けんの強豪きょうごう校こうのキャプテンに就任しゅうにんした及川おいかわ選手せんしゅ。

去年きょねんの秋あきはチーム事情じじょうでピッチャーもしていましたが、今いまは中学ちゅうがく時代じだいからの内野ないや手しゅとして勝負しょうぶしていくことになりレギュラー争あらそいもしれつです。

及川おいかわ蓮れん志こころざし選手せんしゅ

「入学にゅうがくしてからレギュラーをとったことがないのでレギュラーをとれるように頑張がんばりたい。ショートが安定あんていしていると守備しゅびが落ち着おちつく重要じゅうようなポジションなのでつかみとりたいです。帰省きせい期間きかんも休やすんでいるヒマはないので自分じぶんができることをやっていきたい」

また、及川おいかわ選手せんしゅの祖父そふ、及川おいかわ誠まことさんは宮古みやこ水産すいさん高校こうこう出身しゅっしんで1972年ねんの夏なつの甲子園こうしえんにサードで出場しゅつじょうしているということで、祖父そふと同おなじ舞台ぶたいに立たちたい思おもいも持もっています。

「おじいちゃんが立たった甲子園こうしえんに立たちたいです。『頑張がんばれよ』と言いわれているので試合しあいに出でている姿すがたを見みてほしいです」