母ははが餅もちを詰つまらせて…緊迫きんぱくの通報つうほう記録きろく 2年ねんで661人にんの高齢こうれい者しゃ死亡しぼう

国くにの調査ちょうさでは餅もちをのどに詰つまらせて死亡しぼうしたお年寄としよりが2019年ねんまでの2年間ねんかんに660人にん余あまりにのぼり、特とくに正月しょうがつ三が日さんがにちだけで全体ぜんたいの2割わり近ちかくを占しめています。専門せんもん家かはふだんの食事しょくじの状況じょうきょうや噛かんだり飲み込のみこんだりする力ちからをよく確認かくにんし、むせることが多おおいなど、窒息ちっそくのリスクのある人ひとは十分じゅうぶんな注意ちゅういが必要ひつようだと呼よびかけています。

※冒頭ぼうとうの動画どうが（30秒びょう～）では高齢こうれいの女性じょせいが餅もちをのどに詰つまらせた際さいに、家族かぞくが消防しょうぼうに通報つうほうした音声おんせいが流ながれます。

餅もちによる窒息ちっそく事故じこは正月しょうがつに集中しゅうちゅう

消費しょうひ者しゃ庁ちょうは厚生こうせい労働ろうどう省しょうの人口じんこう動態どうたい調査ちょうさのデータをもとに、2018年ねんと2019年ねんの2年間ねんかんに餅もちによる窒息ちっそく事故じこで死亡しぼうした65歳さい以上いじょうの高齢こうれい者しゃの情報じょうほうを詳くわしく分析ぶんせきしました。

それによりますと

▽2018年ねんは363人にん、

▽2019年ねんは298人にん、あわせて661人にんが餅もちをのどに詰つまらせて亡なくなっていました。

2年間ねんかんの事故じこを月別つきべつに見みると、

▽1月つきが282人にんと最もっとも多おおく、次ついで、

▽12月つきが90人にん、

▽2月つきが63人にんなどと冬ふゆの時期じきが半数はんすう以上いじょうを占しめています。

特とくに、正月しょうがつに事故じこが集中しゅうちゅうしていて、▽元日がんじつからの3日間にちかんだけで127人にんと全体ぜんたいの2割わり近ちかくにのぼっています。

年齢ねんれい別べつでは

▽80歳さいから84歳さいが最もっとも多おおく168人にん、次ついで

▽85歳さいから89歳さいが160人にん、

▽75歳さいから79歳さいが108人にんなどとなっています。

一方いっぽう、のどに餅もちを詰つまらせた事故じこは、高齢こうれい者しゃに限かぎらず14歳さい以下いかの子こどもなどでも報告ほうこくされているということです。

2センチほどにちぎった好物こうぶつの「きなこ餅もち」で

楽たのしい時間じかんが一変いっぺんする餅もちの窒息ちっそく事故じこ。高齢こうれいの女性じょせいが餅もちをのどに詰つまらせた際さいに家族かぞくが消防しょうぼうに通報つうほうした音声おんせいが残のこされていました。

去年きょねん2月つき、兵庫ひょうご県内けんないの86歳さいの女性じょせいは昼食ちゅうしょくとして2センチほどにちぎった好物こうぶつの「きなこ餅もち」を食たべていました。

同居どうきょする娘むすめが台所だいどころから背中せなか越ごしに「おいしい？」と声こえをかけても返事へんじが無なく、振り向ふりむくと女性じょせいは口くちを半開はんびらきにした状態じょうたいで顔色かおいろが白しろくなり、手てのけいれんも始はじまっていました。娘むすめは、すぐさま背中せなかをたたき、もう片方かたほうの手てで携帯けいたい電話でんわを操作そうさして119番ばん通報つうほうしました。

このときのやりとりを記録きろくした4分ふん余あまりの音声おんせいでは、娘むすめから餅もちをのどに詰つまらせて意識いしきと呼吸こきゅうが無ないことが伝つたえられると、対応たいおうにあたった消防しょうぼう職員しょくいんが心臓しんぞうマッサージを行おこなうよう指示しじしたうえで、携帯けいたい電話でんわをスピーカーホンにして声こえのリズムに合あわせて胸むねの真ん中まんなかのあたりを何なん度ども押おし続つづけてほしいと伝つたえていました。

マッサージを2分ふんほど続つづけると母親ははおやの呼吸こきゅうが少すこし戻もどったように感かんじられ、娘むすめは消防しょうぼう職員しょくいんの助言じょげんをもとに口くちの中なかに人さし指ひとさしゆびを突っ込つっこみ、指先ゆびさきについた大豆だいずの大おおきさほどの餅もちをかき出かきだしました。

すると、母親ははおやの顔色かおいろに赤あかみがさして救急きゅうきゅう隊たいが搬送はんそうするころには意識いしきも戻もどり、病院びょういんに入院にゅういんはしましたが一命いちめいを取り留とりとめたということです。

女性じょせいの娘むすめ

「消防しょうぼうへの通報つうほうや心臓しんぞうマッサージをしたことは一いち度どもありませんでしたが、長年ながねん、苦労くろうしてきた母ははを“こんな一瞬いっしゅんで逝いかせてしまってはいけない”という思おもいで覚悟かくごを決きめました。まさかこんなに小ちいさく切きった餅もちでのどを詰つまらせるとは思おもっていませんでしたが、病院びょういんで気道きどうがかなり細ほそくなっていたことを知しり、母ははの状態じょうたいをしっかりと把握はあくしなければならないと感かんじました」

通報つうほう受うけた消防しょうぼう職員しょくいん「特とくにお年寄としよりがいる家庭かていなどは情報じょうほう収集しゅうしゅうを」

兵庫ひょうご県けんの女性じょせいから母ははが餅もちをのどに詰つまらせたと通報つうほうを受うけた宝塚たからづか市し消防しょうぼう本部ほんぶの職員しょくいんが当時とうじの状況じょうきょうを振り返ふりかえりました。

職員しょくいんによりますと通常つうじょう、意識いしきがあれば、背中せなかをたたいたり、せきをさせたりするなどして詰つまらせた餅もちを取り除とりのぞくことを考かんがえますが、今回こんかいのケースでは母親ははおやは呼吸こきゅうと意識いしきがなく、体からだの力ちからが抜ぬけて重おもくなり餅もちを取り出とりだしやすい姿勢しせいを保たもつことが難むずかしいと想定そうていされました。

このため、職員しょくいんは母親ははおやをあおむけに寝ねかせて心臓しんぞうマッサージをするよう指示しじし、胸むねなどに圧を加くわえてのどに詰つまった餅もちが口くちのほうへ押し出おしだされることを期待きたいしたということです。

さらに職員しょくいんは自宅じたくの玄関げんかんの鍵かぎがかかっているかも確認かくにんし、心臓しんぞうマッサージの指示しじを出だす一方いっぽう救急きゅうきゅう隊たいが到着とうちゃくするタイミングについてもこまめに伝つたえていました。

そして、救急きゅうきゅう隊たいが到着とうちゃくすると、即座そくざに玄関げんかんの鍵かぎを開あけるよう指示しじし、再ふたたびすぐに母親ははおやの元もとへ戻もどらせ、心臓しんぞうマッサージを再開さいかいさせていました。

このとき消防しょうぼうの指令しれいセンターでは、女性じょせいとやりとりする職員しょくいんのほか複数ふくすうの職員しょくいんが総出そうでで救急きゅうきゅう車しゃの位置いちや到着とうちゃく時刻じこくなどを共有きょうゆうして対応たいおうにあたっていたことから、スムーズに指示しじを出だすことができたということです。

対応たいおうにあたった職員しょくいんは「病気びょうきやけがに見舞みまわれる機会きかいも少すくなくなった今いまの時代じだいでは、『背中せなかをたたいてほしい』などと言いっても、『怖こわくてたたけない』と話はなす人ひとが多おおいです。特とくに、お年寄としよりがいる家庭かていや施設しせつなどでは、窒息ちっそく事故じこを防ふせぐための情報じょうほう収集しゅうしゅうをしたり、万が一まんがいちに備そなえて救命きゅうめいの講習こうしゅうを受うけたりするなどして備そなえてほしいです」と話はなしていました。

専門せんもん家か “餅もちを取り上とりあげるのではなく特徴とくちょうを理解りかいし対策たいさくを”

食べ物たべものの窒息ちっそく事故じこに詳くわしい専門せんもん家かは、高齢こうれい者しゃから一様いちように餅もちを取り上とりあげるのではなく、のどに物ものを詰つめやすい人ひとの特徴とくちょうを理解りかいして正ただしい対策たいさくをとることが重要じゅうようだと指摘してきしています。

日本にっぽん歯科しか大学だいがく 口腔こうこうリハビリテーション多摩たまクリニックの菊谷きくや武たけし 院長いんちょうによりますと、高齢こうれい者しゃや子こどもはかむ力ちからと飲み込のみこむ力ちからが弱よわく、餅もちなどを詰つまらせて窒息ちっそくする事故じこが多おおいといいます。

かむ力ちからが弱よわいと、食べ物たべものがそしゃくできていない状態じょうたいでのどへ送おくられることになり、飲み込のみこむ力ちからも弱よわいと途中とちゅうで詰つまり気道きどうをふさいで窒息ちっそく事故じこにつながります。

こうした事故じこは高齢こうれい者しゃに多おおくみられる一方いっぽう、個人こじん差さが大おおきく年齢ねんれいだけで区別くべつするのは難むずかしいということです。

菊谷きくや院長いんちょうは

▽食事しょくじ中ちゅうにむせることが多おおかったり、

▽ふだんから柔やわらかい食事しょくじを取とったりしているほか、

▽過去かこに肺炎はいえんになったことがある人ひとなどはのどに物ものを詰つめやすい傾向けいこうがあると指摘してきしています。

また、▽認知にんち症しょうの人ひともひとくちの量りょうを調整ちょうせいできず、大量たいりょうの食べ物たべものを口くちに入いれてしまうことなどがあるため、十分じゅうぶんな注意ちゅういが必要ひつようだということです。

対策たいさくとしては

▽餅もちをなるべく小ちいさく切きり、

▽お茶おちゃなどを飲のんでのどを潤うるおしたうえで、

▽少すこしずつ、ゆっくりとよくかんで食たべるようにしてほしいと呼よびかけています。

よくかまずにお茶おちゃなどで餅もちを流し込ながしこむことは危険きけんなので絶対ぜったいにせず、餅もちを食たべる際さいには家族かぞくなど周まわりにいる人ひとが食事しょくじの様子ようすを近ちかくで見守みまもることが大切たいせつだとしています。

食品しょくひんメーカーなどからは、粘ねばりけを少すくなくした介護かいご用ようの餅もちが販売はんばいされていて、こうした商品しょうひんを活用かつようする方法ほうほうも検討けんとうしてほしいとしています。

菊谷きくや院長いんちょう

「毎年まいとし、年末ねんまつになると各地かくちのお年寄としよりの家庭かていや介護かいご施設しせつなどから正月しょうがつに餅もちを食たべさせたいがどうすれば安全あんぜんに食たべさせられるかといった問い合といあわせが多おおく寄よせられる。窒息ちっそく事故じこを起おこさないためには、食たべさせないことが一番いちばん簡単かんたんな解決かいけつ方法ほうほうだが、食たべることにおいて、それはとても残念ざんねんな話はなしなので、調理ちょうりや食たべ方かたなどで工夫くふうして、安全あんぜんに食たべるよう心こころがけてほしい」