国の運輸安全委員会は、3日から本格的な調査を始め管制官とのやりとりなど、当時の詳しい状況を調べることにしています。
2日午後6時ごろ、新千歳空港を出発した日本航空516便が、羽田空港のC滑走路に着陸した直後に、海上保安庁の羽田航空基地に所属する固定翼機と滑走路上で衝突し炎上しました。
海上保安庁の航空機には6人が乗っていましたが、
▽副機長の田原信幸さん(41)
▽通信士の石田貴紀さん(27)
▽探索レーダー士の帯刀航さん(39)
▽整備士の宇野誠人さん(47)
▽整備員の加藤重亮さん(56)の5人が死亡しました。
▽機長の宮本元気さん(39)も重傷だということです。
一方、日本航空によりますと、516便には乗客乗員合わせて379人が乗っていて、3か所の非常脱出口から全員が機体の外に避難しましたが14人が打撲や体調不良で医療機関を受診したことが確認されたということです。
この事故で、国土交通省が確認したところ、事故の前、管制官からは、
▽日本航空機に対して滑走路への進入許可が出ていた一方、
▽海上保安庁の航空機に対しては滑走路手前まで走行するよう指示が出ていたことが国土交通省関係者への取材でわかりました。
また、日本航空は、乗員から聞き取った内容だとしたうえで、「管制からの着陸許可を認識し、復唱したあと、進入、着陸操作を実施した」と発表しています。
国の運輸安全委員会は、航空事故調査官6人を派遣して、3日から本格的な調査を始め、管制官とのやりとりなど当時の詳しい状況を調べることにしています。
エアバス 専門家を日本に派遣 “調査を技術的な観点から支援”
ヨーロッパの大手航空機メーカー、エアバスは、羽田空港で、日本航空の旅客機が着陸した直後に海上保安庁の航空機と衝突した事故を受けて2日、声明を発表しました。
声明によりますと、旅客機の機体は、A350型機で、2021年11月に日本航空に引き渡されたということです。
また、「ICAO=国際民間航空機関の勧告に基づき、専門家によるチームを派遣している」としていて、エアバスは、NHKの取材に対し、日本側が行う事故の調査を技術的な観点から支援することが派遣の目的だと明らかにしました。
また、フランスの航空事故調査局も2日、NHKの取材に対し、近く調査団を日本に派遣するとしています。
海外メディア 潜在的な危険性指摘も“全員避難は奇跡的だ”
今回の事故について海外メディアは、航空機事故が地上で起きる潜在的な危険性を浮き彫りにしたと伝える一方で、旅客機の乗客と乗員が全員、避難できたことを「奇跡的だ」などと大きく取り上げています。
このうちアメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルは2日付けの記事で「事故は、日本の多くの人が年末年始の休暇で移動する1年で最も忙しい時期に起きた」としたうえで「今回の衝突は、航空機事故が地上で起きる潜在的な危険性があることを浮き彫りにした」と指摘しています。
また、イギリスの公共放送BBCは2日の番組で「機体の大きさと乗客と乗員の数を考えれば、これほど多くの人が避難できたことは本当に奇跡的だ」としています。
そのうえで「日本は輸送の安全性が非常に高いことで知られている。衝突の原因は明らかになっていないが、当局は慎重に調査を進め、手順の改善に取り組むだろう」と伝えています。
イギリスの有力紙ガーディアンも専門家のコメントを引用し「客室乗務員が乗客に荷物を置いて避難するよう促したのだと考えられる。すばらしい仕事をした」などと伝え乗客と乗員が全員、避難できた背景にも関心を寄せ、大きく取り上げています。
《羽田や各地の空港では》
羽田空港 欠航便の振り替え窓口に早朝から長い列
2日に日本航空の旅客機と海上保安庁の航空機が衝突した事故のため、年末年始を東京近郊で過ごした人たちのUターンなどにも影響が出ています。
羽田空港では欠航になった便を別の便に振り替える専用の窓口に、早朝から長い列が出来ていました。
このうち、年末年始を首都圏で過ごし、福岡に帰る予定だという40代の女性は、「きのう帰る予定でしたが事故の影響で飛行機が欠航になり帰れなくなってしまいました。きょう中に飛行機が飛ぶかどうかわからないですし、まだ少し怖いです」と話していました。
この女性の10歳の息子は「事故があって帰ることができなくなって、きのうは都内のホテルに泊まりました。学校の冬休み中に帰れるか不安です」と話していました。
また、島根県の25歳の会社員の男性は「旅行で東京に来ていてきのう帰る予定でしたが、事故で欠航になってしまってしかたないかなと思いつつどうしようという感じです。不安はありますが、無事に帰れたらいいなと思います」と話していました。
なかには海外旅行を断念した人もいて、徳島県の70歳の女性は「きのう羽田からハワイに行く予定でしたが、事故が起きてしまいました。3時間待ちましたが、結局欠航になってしまったので予定を変更してこのまま徳島に帰ります」と話していました。
新千歳空港 およそ200人が空港で一夜を明かす
新千歳空港を運営する北海道エアポートによりますと、2日は事故のあと、羽田空港とを結ぶすべての便が欠航しました。
この影響で、泊まる場所を確保できなかった人が相次いでおよそ200人が空港で一夜を明かしました。
航空各社によりますと、3日も、新千歳空港と羽田空港を結ぶ便は午前6時の時点であわせて11便の欠航が決まったということです。
3日はUターンラッシュのピークと予想されていて、さらなる混雑も見込まれます。
航空各社は今後、欠航する便が増える可能性もあるとしていて、最新の運航状況についてホームページなどで確認してほしいと呼びかけています。
宮崎空港でも欠航便の振り替えなどで長い列
2日夜、宮崎空港では最終便が出発したあとの午後9時をすぎても、航空会社のカウンターの前に50人以上が長い列を作り、窓口で今後の運航の見通しを聞いたり、欠航になった便の振り替えの手続きを行ったりしていました。
東京から友人と2人で旅行に訪れていた20代の女性は「便の振り替えに時間がかかり、もう5時間近く空港にいます。まさかこういった事故が起こるとは思っていなかったのでとても驚いています」と話していました。
神奈川県から宮崎県日向市の実家に帰省していた50代の男性は「このあと近くのホテルに泊まりもう1度、朝から来て、便の振り替えをお願いしようと思います。地震や飛行機の事故で、大変な年明けになってしまったと感じています」と話していました。