“夫おっとは炎天下えんてんかの作業さぎょう後ごに亡なくなった”過労かろう死し新しん基準きじゅんで労災ろうさい認定にんていは

「週しゅうに1回かいぐらいしか休やすみがなく、本当ほんとうだったら家いえでゆっくりしたいだろうに、子こどもたちと釣つりや動物どうぶつ園えんに一緒いっしょに出でかけていました。1番ばん下かの子こがまだ小ちいさかったので、子こどもたちを残のこして先立さきだったことは心残こころのこりだったと思おもいます」

妻つまが見みせてくれた遺影いえいは、生前せいぜん、証明しょうめい写真しゃしん用ように撮影さつえいしたものでした。

自分じぶんが写うつるよりも、子こどもたちの写真しゃしんを撮とっていたという秀行ひでゆきさん。

あまり本人ほんにんの写真しゃしんが残のこっていなかったといいます。

妻つまは、国くにに対にたいして労災ろうさい認定にんていを求もとめる訴うったえを大阪おおさか地方ちほう裁判所さいばんしょに起おこしました。

残業ざんぎょう時間じかんは1か月かげつあたり80時間じかんに近ちかい状態じょうたいだったうえ、連日れんじつ、気温きおんが30度どを大おおきく上回うわまわり、床ゆかなどの照てり返がえしの熱ねつで著いちじるしく高温こうおんの屋外おくがいで作業さぎょうを行おこなっていたことは、新あらたな基準きじゅんに当あてはまると主張しゅちょうしています。

枡ます之これ内ないさんの妻つま

「暑あつくても作業さぎょう服ふくを着きて、作業さぎょうをしないといけないので本当ほんとうに大変たいへんだったと思おもいます。夫おっとの死しをむだにしたくない。本人ほんにんが一番いちばん無念むねんだったと思おもうので労災ろうさいと認みとめてほしい」

これに加くわえて、改定かいていされた基準きじゅんでは、残業ざんぎょう時間じかんが「過労かろう死しライン」に達たっしない場合ばあいでも、それに近ちかい実態じったいがあったうえで、作業さぎょう環境かんきょうや不規則ふきそくな勤務きんむなどの労働ろうどう時間じかん以外いがいの「負荷ふか要因よういん」を総合そうごう的てきに評価ひょうかして、仕事しごとと病気びょうきの発症はっしょうとの関連かんれん性せいを判断はんだんすると明記めいきされました。

こうした改定かいていは、働はたらく人ひとの勤務きんむの実態じったいや負荷ふかを、労災ろうさい認定にんていの判断はんだんにより反映はんえいさせるねらいがあります。

また、愛知あいち県けんでは4年ねん前まえに死亡しぼうした保健ほけん施設しせつの男性だんせい職員しょくいんについて、「労災ろうさいにはあたらない」とした労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署しょの決定けっていを愛知あいち労働ろうどう局きょくが去年きょねん、取り消とりけしました。

男性だんせいは「過労かろう死しライン」には達たっしていませんでしたが、労働ろうどう局きょくは、休日きゅうじつのない連続れんぞく勤務きんむを繰り返くりかえしていて、「著いちじるしい疲労ひろうの蓄積ちくせきをもたらす特とくに過重かじゅうな業務ぎょうむだった」との判断はんだんを示しめしました。

各地かくちで判断はんだんを見直みなおすケースが出でていますが、妻つまの代理人だいりにんの弁護士べんごしは、こうした判断はんだんを積み上つみあげることで新あたらしい基準きじゅんの運用うんようが実態じったいのあるものになると指摘してきしています。

原告げんこく側がわの弁護士べんごし

「基準きじゅんが変かわったが、実務じつむ上じょうでいままでと同おなじように運用うんようされてしまうのか、それとも1か月かげつの平均へいきん残業ざんぎょう時間じかんが60時間じかんでも70時間じかんでも、負荷ふか要因よういんがあれば、過労かろう死しを認定にんていしていくのかが、問とわれる裁判さいばんだと考かんがえている」

「夫おっとがというのはもちろんですけど、同おなじような立場たちばの人ひとがたくさんいるんじゃないかと思おもうので、もっと変かわってほしい。救すくわれる人ひとが1人にんでも多おおく出でてきたら良よいなと思おもいます」

今回こんかいの訴うったえについて国くには、「まだ訴状そじょうが届とどいておらずコメントできません」としています。

過労かろう死しの新あらたな認定にんてい基準きじゅんがひとりひとりの働はたらき方かたの実態じったいを踏ふまえた丁寧ていねいな運用うんようとなっているのか、今後こんごの司法しほうの判断はんだんが注目ちゅうもくされます。