Báo tiếng Nhật: 初動対応が違っていれば…國松元長官が明かす28年前の後悔

6434人にんが亡なくなった、阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさい。

その多おおくの人ひとが地震じしん当日とうじつに亡なくなっていたとされている。

しかし、発生はっせい当日とうじつの正午しょうごに兵庫ひょうご県警けんけいが発表はっぴょうした死者ししゃ数すうは200人にんだった。

「東京とうきょうに情報じょうほうが入はいらず、何なにがなんだか分わからなかった。これは尋常じんじょうではない…」

あの日ひ、何なにが起おきていたのか。当時とうじの警察庁けいさつちょう長官ちょうかんが初動しょどう対応たいおうの裏側うらがわを明あかした。

（神戸こうべ放送ほうそう局きょく記者きしゃ井出いで瑞みずほ葉は）

1995年ねん地下鉄ちかてつサリン事件じけんも銃撃じゅうげき事件じけんも…

「1995年ねんは、大変たいへんな1年ねんだった。阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさいが起おきて、オウム真理教おうむしんりきょうによる地下鉄ちかてつサリン事件じけんもあって。そして私わたしも撃うたれてしまって―」

警察庁けいさつちょう元もと長官ちょうかんの國くに松まつ孝次たかつぐ（85）は、インタビューの中なかで、阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさいが起おきた1995年ねん（平成へいせい7年ねん）をこう振り返ふりかえった。

國くに松まつは1961年ねんに警察庁けいさつちょうに入にゅう庁ちょうし、警視庁けいしちょう公安こうあん部長ぶちょうや警察庁けいさつちょう刑事けいじ局長きょくちょうなどを歴任れきにん。

1997年ねん3月つきまでのおよそ2年ねん8か月かげつにわたり　警察庁けいさつちょう長官ちょうかんを務つとめ、阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさいや、オウム真理教おうむしんりきょうの一連いちれんの事件じけんの対応たいおうなどにあたった。

その年としの3月つきには自みずからが狙撃そげきされる事件じけんが発生はっせいし、一時いちじ意識いしき不明ふめいの重体じゅうたいとなり、國くに松まつにとっては決けっして忘わすれることのできない1年ねんだ。

阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさいが発生はっせいしたのは、長官ちょうかんに就任しゅうにんしてからおよそ半年はんとしとなる頃ころ。

「兵庫ひょうご県けんでは県警けんけい本部ほんぶ長ちょうなど過去かこに3度どの勤務きんむ経験けいけんがあり、慣れ親なれしたしんだ場所ばしょだった」

こう言いって、震災しんさい当時とうじの資料しりょうをめくりながら語かたり始はじめた。

その時とき、警察庁けいさつちょう長官ちょうかんは

1月つき17日にち午前ごぜん5時じ46分ふん、阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさいが発生はっせい。

國くに松まつが震災しんさいの発生はっせいを知しったのは、出張しゅっちょうで大阪おおさかに向むかうため、ふだんより早はやく待機たいきしていた秘書ひしょからの一報いっぽうだった。

「午前ごぜん6時じごろでしたか。秘書ひしょから『どうも関西かんさいで大変たいへん大おおきな地震じしんがあったようです。どういたしましょうか』と。慌あわててテレビをつけたんですね。たしか最初さいしょに見みた映像えいぞうは大阪おおさかの高速こうそく道路どうろを映うつしたカメラでしたが、車くるまは普通ふつうに流ながれているんですよ。いったい何なにが起おきているのだろうと」

震災しんさい対応たいおうで難航なんこうしたのが発生はっせい直後ちょくごの被害ひがい実態じったいの把握はあく。各地かくちで建物たてものの倒壊とうかいや火災かさいなど通報つうほうが相次あいつぎ、現地げんちの警察けいさつは人命じんめい救助きゅうじょや捜索そうさく活動かつどうにあたった。

一方いっぽう、約やく500キロ離はなれた東京とうきょうの警察庁けいさつちょうでは当直とうちょく員いんらが現地げんちの警察けいさつと連絡れんらくをとり情報じょうほう収集しゅうしゅうにとりかかっていた。

國くに松まつが警察庁けいさつちょうに登庁とうちょうしたのは午前ごぜん7時半じはんごろ。しかし、兵庫ひょうご県警けんけいと警察庁けいさつちょうを結むすぶ通信つうしん網もうはほとんど機能きのうしなかったという。

「当初とうしょ、東京とうきょうには情報じょうほうが入はいってこず、何なにがなんだか分わからなかった。兵庫ひょうご県警けんけいの本ほん部長ぶちょうとも連絡れんらくが付つかないと言いうので、これは尋常じんじょうではないと…」

発生はっせいからおよそ3時間じかん後ごの午前ごぜん9時じ前まえ。

県警けんけい本部ほんぶに近ちかい生田いくた警察けいさつ署しょで指揮しきを執とっていた県警けんけい本部ほんぶ長ちょうとようやく連絡れんらくが取とれる。

「震度しんど7、とにかく大変たいへんな災害さいがいです。自分じぶんの公舎こうしゃも倒壊とうかいしました。ただ、どの程度ていどの被害ひがい規模きぼになるか。いま詳くわしい情報じょうほうの収集しゅうしゅうを進すすめています」

本部ほんぶ長ちょうとのやりとりは短みじかい時間じかんだった。

“高速こうそく道路どうろが横倒よこだおし”想像そうぞう超こえる事態じたい

その後そのご、目めに入はいったテレビのニュース。

上空じょうくうからの神戸こうべの街まちの映像えいぞうに、國くに松まつは言葉ことばを失うしなった。

「午前ごぜん9時半じはんごろだったと思おもいますが、テレビのニュースで阪神はんしん高速こうそく道路どうろが横倒よこだおしになっているのを見みて、これまでの災害さいがいとはスケールが全まったく違ちがうと。まさか、あんなに大おおきな地震じしんが神戸こうべで起おきるなんて当時とうじは誰だれも想像そうぞうもしていなかったと思おもいます」

戦後せんごの日本にっぽんが初はじめて経験けいけんした都市とし型がたの大だい災害さいがいだった。死者ししゃ6434人にん、負傷ふしょう者しゃは4万まん3000人にん余あまりにのぼった。あまりの被害ひがいの大おおきさに実態じったい把握はあくには時間じかんがかかり、発生はっせい後ご6時間じかんたった17日にち正午しょうごに兵庫ひょうご県警けんけいが発表はっぴょうした死者ししゃ数すうは200人にんだった。

「阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさいでは、当日とうじつに5000人にんほどが亡なくなったとされている。午前ごぜん中ちゅうだけでも、相当そうとうの数かずの人ひとがお亡なくなりになっていた。被害ひがい結果けっかから考かんがえると、当時とうじのわれわれの想像そうぞうをはるかに超こえる事態じたいだったということなんです」

語かたった“最大さいだいの後悔こうかい”

震災しんさい直後ちょくごから、被害ひがい情報じょうほうの収集しゅうしゅうや救出きゅうしゅつなどにあたる現地げんちの警察けいさつを指揮しきした國くに松まつ。

『最大さいだいの後悔こうかい』と語かたったのが、あまりの被害ひがい規模きぼにより遅おくれた情報じょうほうの収集しゅうしゅうと総理そうり大臣だいじん官邸かんていへの共有きょうゆうだった。

「最大さいだいの反省はんせいと言いいますか、非常ひじょうに悔くいの残のこるのが情報じょうほう収集しゅうしゅうについてです。担当たんとう部署ぶしょを通をつうじて被災ひさい地ちの情報じょうほうを収集しゅうしゅうし、それを官邸かんていや関係かんけい機関きかんに共有きょうゆうする。いま、どこでどういった被害ひがいが発生はっせいしているのか、こうした初動しょどうでの情報じょうほう収集しゅうしゅうは警察けいさつの役割やくわりなんです。ところが、それに思おもいが至いたらなかった。役人やくにん的てきな発想はっそうですね」

阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさいでは、総理そうり大臣だいじん官邸かんていに災害さいがい対策たいさく本部ほんぶが設置せっちされたのは発生はっせいから4時間じかん後ご。

当時とうじ、政府せいふの危機きき管理かんりに問題もんだいがあったと批判ひはんの声こえがあがった。消防庁しょうぼうちょうや警察庁けいさつちょうにある程度あるていどの情報じょうほうが集積しゅうせきされながら、国土こくど庁ちょう（当時とうじ）や官邸かんていには届とどけられていなかったという、制度せいど上じょうの問題もんだいも指摘してきされた。

「あの時ときは村山むらやま（富市とみいち）総理そうりでしてね。当初とうしょ、現地げんちの状況じょうきょうがどうなっているか詳くわしく知しらない時間じかんが続つづき、対応たいおうが遅おくれたと批判ひはんされた。被害ひがいの詳細しょうさいはよく分わからないけれども、大変たいへんな事態じたいだとは分わかっているのだから、やはり私わたしが官邸かんていに被災ひさい地ちの情報じょうほうを共有きょうゆうし、災害さいがい対策たいさく本部ほんぶの設置せっちを急いそぐよう伝つたえるべきだったと思おもいます」

震災しんさいでの教訓きょうくんを踏ふまえ、翌年よくねんの1996年ねんには総理そうり大臣だいじん官邸かんていに24時間じかん体制たいせいで情報じょうほう収集しゅうしゅうを行おこなう危機きき管理かんりの仕組しくみが整備せいびされるなど、政府せいふの緊急きんきゅう時じ対応たいおうは大おおきく見直みなおされた。

そして、1998年ねんには、大だい規模きぼ災害さいがいやテロなどの際さい、省庁しょうちょう間かんの総合そうごう調整ちょうせいを担になう強力きょうりょくな権限けんげんを付与ふよされる「内閣ないかく危機きき管理かんり監」が設置せっちされ、歴代れきだい警察庁けいさつちょうOBが務つとめている。

初動しょどう対応たいおう違ちがっていたら…

当時とうじの警察けいさつトップが明あかした情報じょうほう収集しゅうしゅうの遅おくれ。

みずからの判断はんだんが違ちがえば、政府せいふの初動しょどう対応たいおうも違ちがっていたのではないか。

震災しんさいから28年ねんがたった今たったいまも、悔くやむ気持きもちを抱かかえ続つづけている。

「阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさいでは、実態じったい把握はあくはスピーディーにできなかった。知しり得えた被害ひがい情報じょうほうを警察庁けいさつちょうから内閣ないかくまですぐに届とどけるルートが構築こうちくされ、共有きょうゆうされていれば、初動しょどうの対応たいおうは違ちがっていたと思おもうんです。発生はっせいから1時間じかん以内いないに亡なくなった人ひとも相当そうとう数すういて難むずかしい状況じょうきょうだったが、もっと迅速じんそくに応援おうえん部隊ぶたいを大量たいりょうに動員どういんしていたら、より多おおくの人ひとを救助きゅうじょできたのではないか…。誠まことに阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさいというのはわれわれ警察けいさつに大おおきな教訓きょうくんを与あたえました」

反省はんせいと教訓きょうくん社会しゃかいに共有きょうゆう

國くに松まつはことし86歳さいとなる。

みずからの反省はんせいと教訓きょうくんを次世代じせだいに伝つたえるため、ある決断けつだんをした。

災害さいがいの研究けんきゅうなどを行おこなう兵庫ひょうご県けんのシンクタンク「ひょうご震災しんさい記念きねん21世紀せいき研究けんきゅう機構きこう」。

阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさいの対応たいおうを検証けんしょうするため、本音ほんねを語かたってもらおうと30年間ねんかん非公開ひこうかいを条件じょうけんに、当時とうじの政せい財ざい官かんのトップらから聞き取ききとった証言しょうげん記録きろくが残のこされている。

2011年ねんの東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいをきっかけに、研究けんきゅう機構きこうは本人ほんにんから許可きょかが得えられた一部いちぶの記録きろくについては30年ねんを待またずに順次じゅんじ公開こうかいしていたが、國くに松まつは引き続ひきつづき非公開ひこうかいとしていた。

しかし、NHKは、本人ほんにんへの了承りょうしょうを得えた上うえで、研究けんきゅう機構きこうに記録きろくの開示かいじを求もとめたところ、先月せんげつ、映像えいぞうが開示かいじされた。

映像えいぞうが収録しゅうろくされたのは2004年ねん。

やりとりの記録きろくは文書ぶんしょにして27ページ、およそ2時間じかんのインタビュー映像えいぞうだ。

証言しょうげんの中なかでは、NHKのインタビューで明あかした初動しょどう対応たいおうへの後悔こうかいや震災しんさい後ごの危機きき管理かんり体制たいせいの見直みなおしなども語かたっている。

28年ねんがたち、記録きろくの開示かいじに応おうじた理由りゆうは何なにか。

「震災しんさいから長ながい時間じかんがたった。最近さいきんでは、新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいなどをめぐっても、国くにの危機きき管理かんり体制たいせいについてさまざまな問題もんだいが指摘してきされている。過去かこのみずからの反省はんせいや教訓きょうくんをいま伝つたえるのもよいのではないかなと思おもって」

“情報じょうほうは命いのち” SNSの可能かのう性せい

阪神はんしん・淡路あわじ大震災だいしんさいのあと、社会しゃかい環境かんきょうは大おおきく変かわった。

全国ぜんこくの自治体じちたいでは、災害さいがい時じなどにSNSを通をつうじて救助きゅうじょ要請ようせいや被害ひがい状況じょうきょうなどの情報じょうほうを収集しゅうしゅうする取り組とりくみも進すすんでいる。

被災ひさい地ちの神戸こうべ市しでも、災害さいがい時じにSNSにあふれる情報じょうほうをAI＝人工じんこう知能ちのうを使つかって収集しゅうしゅうし、地図ちずに表示ひょうじする新あたらしいシステムを導入どうにゅうするなど、災害さいがい対策たいさくへのSNSの活用かつようが広ひろがっている。

國くに松まつは、情報じょうほうの真偽しんぎを見極みきわめ、救助きゅうじょ活動かつどうなどに役立やくだてていくことが今後こんごさらに重要じゅうようになるという。

「私わたしなんかもう古ふるい人間にんげんだからSNSはよく分わかりません。ただ災害さいがい時じには、現場げんばの映像えいぞうや写真しゃしん、それに位置いち情報じょうほうなどがリアルタイムに収集しゅうしゅうできる。マスメディアと呼よばれるあなたたちのようなメディアでは予測よそくしないような力ちからを発揮はっきすることもあるんですな。ただ、時ときには誤あやまった情報じょうほうが、あたかも真実しんじつであるかのように拡散かくさんしてとんでもない影響えいきょうを及およぼすこともある。人命じんめい救助きゅうじょは一刻いっこくを争あらそうだけに、関係かんけい機関きかんと連携れんけいし、情報じょうほうの確たしからしさを瞬時しゅんじに判断はんだんできる仕組しくみが重要じゅうようだと思おもいます。災害さいがい対応たいおうは情報じょうほうが命いのちですよ」

過去かこの教訓きょうくん次世代じせだいへ

國くに松まつが、インタビューの最後さいごに強調きょうちょうしたのは「想定そうてい外がい」をどう「想定そうてい」するか。

「災害さいがい対応たいおうに万全ばんぜんというのはないと思おもっている。だからこそ、過去かこの反省はんせいを教訓きょうくんに、危機きき管理かんりを見直みなおす作業さぎょうを繰り返くりかえしていく必要ひつようがあると思おもいます。やはり人ひとは過去かこの災害さいがいを忘わすれてしまうものです。当事者とうじしゃでもないと――」