デジタル教科書きょうかしょで学校がっこう現場げんばはどう変かわる メリットは？課題かだいは？

14日にち、文部もんぶ科学かがく省しょうの作業さぎょう部会ぶかいは2030年度ねんどにも「正式せいしきな教科書きょうかしょ」として位置いちづけ、新あらたな運用うんようを始はじめたいとした中間ちゅうかん案あんをまとめました。

子こどもたちの学習がくしゅう方法ほうほうはどのように変かわるのでしょうか。

デジタル教科書きょうかしょは、2019年ねんから紙かみの教科書きょうかしょの「代替だいたい教材きょうざい」として小中こなか学校がっこうや高校こうこうなどで使用しようが認みとめられ、今年度こんねんどからは小学しょうがく5年生ねんせいから中学ちゅうがく3年生ねんせいを対象たいしょうに英語えいごや数学すうがくなどで本格ほんかく的てきに使つかわれ始はじめています。

中教審ちゅうきょうしん＝中央ちゅうおう教育きょういく審議しんぎ会かいの作業さぎょう部会ぶかいが14日にち、まとめた中間ちゅうかん案あんでは、紙かみと同おなじように「正式せいしきな教科書きょうかしょ」に位置いちづけることが適当てきとうだとした上うえで、「紙かみだけ」や「デジタルだけ」に加くわえて、「紙かみとデジタル」を組み合くみあわせた形式けいしきも認みとめるべきだとする方向ほうこう性せいが示しめされました。

中教審ちゅうきょうしんの作業さぎょう部会ぶかいでは、ことしの秋あきごろをめどにより具体ぐたい的てきな方針ほうしんを示しめすことにしていて、新あたらしい学習がくしゅう指導しどう要領ようりょうが実施じっしされる2030年度ねんどから新あたらしい教科書きょうかしょの運用うんようを始はじめたいとしています。

学校がっこう現場げんばでは

デジタル教科書きょうかしょは学校がっこう現場げんばでどのように使つかわれているのか、文部もんぶ科学かがく省しょうから実証じっしょうや研究けんきゅうの指定してい校こうに選えらばれている小学校しょうがっこうを取材しゅざいしました。

山梨やまなし県けん甲州こうしゅう市しの塩しお山南さんなん小学校しょうがっこうでは、算数さんすうの授業じゅぎょうで、デジタル教科書きょうかしょが活用かつようされています。

小学しょうがく6年生ねんせいの授業じゅぎょうで、この日ひ、児童じどうたちが取り組とりくんだのは、「四角形しかっけいの4つの角かくの和わは何なん度どになるのか」です。

デジタル教科書きょうかしょの機能きのうで三さん角形かくがたの形かたちを自由じゆうに変かえられ、どんな形かたちにしても3つの角かくの和わが180度どになることを確認かくにんし、それを元もとに四角形しかっけいについて考かんがえていきます。

線せんや説明せつめいを書き込かきこむことができ、児童じどうたちは2つの三さん角形かくがたを合あわせたり、四角形しかっけいに対角線たいかくせんを2本ほん引ひいて、4つの三さん角形かくがたから求もとめたり、いろんな方法ほうほうで分わかりやすい説明せつめいを考かんがえました。

スクリーンショットで撮影さつえいした画面がめんをオンラインでクラス全員ぜんいんに共有きょうゆうし、それぞれのアイデアを確認かくにんし合あいました。

デジタル教科書きょうかしょを使つかった授業じゅぎょうの感想かんそうについて児童じどうたちに聞きくと「図形づけいに書き込かきこみができるし、他たの人ひとを参考さんこうにできるからいいと思おもいます」とか、「図ずを動うごかしたり、工夫くふうして求もとめたりするのが楽たのしかったです」などと話はなしていて、前向まえむきに学習がくしゅうに取り組とりくめた様子ようすが伺うかがえました。

担任たんにんの池田いけだ理恵子りえこ教諭きょうゆは、デジタル教科書きょうかしょについて、書き込かきこみや修正しゅうせいをすぐに何なん度どでもできることや、クラスで共有きょうゆうしやすく、考かんがえを伝つたえられること、また、児童じどうそれぞれの進すすみ具合ぐあいを確認かくにんできるため、個別こべつに指導しどうしやすいことなどのメリットを感かんじているということです。

一方いっぽう、授業じゅぎょうの準備じゅんびに時間じかんがかかることや、学習がくしゅう目標もくひょうを達成たっせいするだけでなく、子こどもたちのデジタル端末たんまつを活用かつようする能力のうりょくも上あげていかなければならないことが課題かだいだと感かんじているということです。

池田いけだ理恵子りえこ教諭きょうゆ

児童じどうたちは少すこし書かいてみよう、操作そうさしてみようと、学習がくしゅうへの意欲いよくが高たかまってきたと思おもいます。教諭きょうゆはいままでと違ちがった授業じゅぎょうスタイルが多おおくなるので、チャレンジやスキルアップが必要ひつようになると思おもう。

紙かみの教科書きょうかしょとの違ちがいは

デジタル教科書きょうかしょは従来じゅうらいの紙かみの教科書きょうかしょとどんな違ちがいがあるのでしょうか。

各かく教科書きょうかしょ会社かいしゃはただ紙しの教科書きょうかしょを電子でんし化かするだけではなく、子こどもたちの学習がくしゅう効果こうかが高たかまるように、デジタルの特長とくちょうを生いかした教科書きょうかしょ作づくりに取り組とりくんでいます。

東京とうきょう・北きた区くに本社ほんしゃがある大手おおて教科書きょうかしょ会社かいしゃでは、小学校しょうがっこうと中学校ちゅうがっこうの10教科きょうか、あわせて75種類しゅるいのデジタル教科書きょうかしょを制作せいさくしています。

このうち、小学しょうがく6年生ねんせいの算数さんすうの教科書きょうかしょでは、円えんの面積めんせきの公式こうしきについて、図形づけいが徐々じょじょに並ならび替かえられる動画どうがによって理解りかいが深ふかまるほか、練習れんしゅう問題もんだいには自動じどうで採点さいてんしてくれる機能きのうが付ついています。

小学しょうがく5年生ねんせいの英語えいごの教科書きょうかしょでは、英文えいぶんに音声おんせいを再生さいせいできる機能きのうが付ついています。読み上よみあげの速はやさを変かえられるため、リスニングの能力のうりょくに合あった学習がくしゅうができるということです。

色覚しきかく障害しょうがいがある児童じどうや生徒せいとには、文字もじや背景はいけいの色いろを変かえられる機能きのうが付ついています。漢字かんじが読よめなくて学習がくしゅうにつまずくことがないよう、読よみがなを表示ひょうじできる機能きのうもあります。

東京とうきょう書籍しょせきICT制作せいさく部ぶ 菊地きくち智彦ともひこチームマネージャー

音声おんせいや図形づけいを動うごかすシミュレーションなど、紙かみではできない表現ひょうげんを考かんがえて制作せいさくしている。紙かみでは分わかりにくい部分ぶぶんがデジタルで表現ひょうげんすることで分わかりやすくなることがあり、紙かみかデジタルか、どちらかを選えらぶのではなく、両方りょうほうの良よいところを使つかっていただきたいと思おもう。

専門せんもん家か「子こどもたち自身じしん 自分じぶんで選択せんたくすることが理想りそう」

学校がっこうのデジタル教育きょういくなどに詳くわしい山梨やまなし大学だいがく教育きょういく学部がくぶ 三井みつい一希かずき准じゅん教授きょうじゅは、「議論ぎろんは前進ぜんしんしていると思おもう。紙かみの教科書きょうかしょとデジタルの教科書きょうかしょで、場合ばあいによって何なにを使つかうかという選択肢せんたくしが広ひろがった」と話はなしています。

デジタル教科書きょうかしょのメリットについて、「絵えが動うごくことで理解りかいが深ふかまる子こもいるだろうし、音声おんせいで理解りかいする子こなど、いろんな特性とくせいの子こがいるので、子こどもたちに応おうじた教育きょういくが可能かのうになる、そんな可能かのう性せいを秘ひめている。教科書きょうかしょを瞬時しゅんじに共有きょうゆうできることによって、自分じぶんの教科書きょうかしょと見比みくらべながら、子こどもたち同士どうしで学まなびを深ふかめていくことにつながる」と指摘してきしています。

一方いっぽう、課題かだいについては、「子こどもたちも学校がっこう側がわもまだまだ経験けいけんが少すくない。学生がくせい時代じだいにデジタル教科書きょうかしょを使つかっていない先生せんせいたちがイメージが湧わくように、研修けんしゅうなどで経験けいけんを積つむ必要ひつようがある。また、視力しりょくなどの健康けんこう面めんを心配しんぱいしている先生せんせいもいる」と指摘してきしています。

また、今後こんごについて「紙かみの教科書きょうかしょとデジタル教科書きょうかしょのどちらを選えらべばいいのか、選択肢せんたくしが広ひろがった分ぶん、どのように選択せんたくしていくか、慎重しんちょうに考かんがえていく必要ひつようがある。紙かみでもデジタル教科書きょうかしょでも読よめるように育そだてて、最終さいしゅう的てきには子こどもたち自身じしんが自分じぶんで選択せんたくすることが理想りそうだ」と話はなしています。